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読解力は、仕事やコミュニケーションを円滑的に進めていくうえで、非常に重要な力です。
本記事では、社会人が読解力を鍛えるべき理由と高めていく方法を紹介します。
読解力とは
読解力とは、「文章を読んでその内容を理解し、解釈する力」のことです。
さらに言えば、文章だけでなく、他者とのコミュニケーションの中で、相手の置かれている状況や感情、伝えたいことを把握し、理解する力でもあり、日常の様々なシーンにおいて必要とされる能力でもあります。
PISAによる読解力の定義
PISA(Programme for International Student Assessment)とは、高校一年生を対象とした国際学習到達度調査のことです。
21世紀に必要となる主要な資質・能力として、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野において、義務教育を終了した時点で学んだ知識をどの程度実生活で応用できているかを測定します。
この調査において読解力は、下記のように定義されています。
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと。
PISA調査における読解力の定義,特徴等
さらには、読解力を3つの力に分解し、それぞれを軸に学習到達度を測定しています。
- 情報を探し出す力:テキスト中の情報にアクセスし、必要な情報を取り出したり選び出したりする力。
- 理解する力:字句の意味を理解・統合し、推論する力。
- 評価し、熟考する力:情報の質と信ぴょう性を評価したり、矛盾を見つけて対処する力。内容について熟考する力。
日本人の読解力が低下している?
ただ、この国際学習到達度調査において心配な点もあり、2019年に公表された結果では、日本人の読解力は15位と、前回の8位から大幅に下がっています。
(ちなみに、数学的リテラシーは6位、科学的リテラシーは5位という結果です。)
とくに、読解力を構成する3つの能力のうち、「情報を探し出す力」「評価し、熟考する力」の正答率が低いという結果でした。
また、自由記述式問題においては、「自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに引き続き課題がある」と指摘されています。
読解力が低下している原因
なぜ読解力が低下しているのか、大きく3つほど原因があります。
情報の捉え方に関する教育がされていない
この十数年で、インターネットの普及により、世の中にあふれる情報が莫大に増えました。
一方で、出回る情報の質や信ぴょう性にはばらつきがあり、フェイクニュースといったものも多くあふれています。
そのような中で、情報の捉え方について教育がされてきていないことが、読解力低下に大きく影響していると考えられます。
読書量の減少
すぐに欲しい情報にアクセスできるスマートフォンを手にしたことによって、昔よりも読書量が減ったという人も少なくないのではないでしょうか。
スマートフォンは利便性が高い一方で、ネット上の文章は比較的文量が少なく、するすると頭に入ってきて「理解したような気持ち」になりやすい文体が多い傾向にあります。
一方で、書籍の場合は、文量が多く読むのに時間がかかりますが、その分テーマについて熟考され、著者の思考プロセスまで分かるものが多いです。
そうした読解力を高める日常的な「トレーニング」の機会が減ったことも、読解力低下の原因と考えられます。
一方的な情報発信が増えている
SNSの普及により、情報のアウトプットの仕方や捉え方に変化が生じたことも関係しているように思います。
自らの考えを積極的に発信すること自体はとても良いことですが、自分の言いたいことだけを言う人がだんだんと増えてきていることが気になっています。
また、他者が発信している内容についても、相手の言い分や文脈を無視して、一部分だけを切り取って、自分が反応したいように反応している人も多く見受けられます。
そういったことも、読解力低下の一因になっていると個人的には思っています。
社会人が読解力を鍛えるべき理由
読解力を高めることは、仕事を円滑に進めていくうえで大きなメリットがあります。
情報収集能力が高まる
日常業務で「まったく情報収集をする機会がない」という人は少ないのではないでしょうか。
情報があふれる中で、スピーディに質の高い情報にたどり着き、そこから何が言えるのかを解釈し、さらには自分はどうするべきかを考える。
一方で、質の低い情報を見抜き、どんどん捨てていく。
そうしたスキルは、業務を効率的かつ生産性高く進めていくうえで非常に重要です。
相手の伝えたいことやニーズを的確に理解できる
仕事を進めていくうえで、他者との円滑なコミュニケーションは欠かせません。
読解力があると、資料や報告書を読む際に素早く要点を把握できるようになりますし、打ち合わせや会議において相手が伝えたいことを的確に理解できるようになります。
また、どのように伝えれば相手が理解しやすいかも分かるので、説得力を持って話すことができます。
読解力を鍛える方法
おすすめの方法を3つほど紹介します。
論理的思考力を鍛える
読解力のある人とは、論理的に文章を読み取ったり、物事をみることができる人のことでもあります。
論理的思考とは、「物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる」思考法のことであり、情報を構造的に理解したり、情報の信ぴょう性を読み取るうえで(「話の内容に矛盾がないか?」など)役立ちます。
論理的思考力の具体的な鍛え方は、こちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
思考の癖や思い込みに気づく
SNS上で「情報の一部分だけを切り取る人が増えている」と先述しました。
このような情報の捉え方では、自身の思い込みや主観が入る余地が大きくなり、本来相手が伝えたかった内容と大きくずれてしまう可能性が高まります。
無意識の場合に行っていることが多いので、日常を振り返ってみて少しでも心当たりのある人は、まずは自身の思考の癖や思い込みに気づくことからスタートしてみましょう。
そして、こうした思考の癖を改善していくためには、「クリティカルシンキング(批判的思考)」という、意識的に自分の考えを批判的にみる思考法の習得が有効です。
クリティカルシンキングを身につけることで、主観や先入観に捕らわれずに客観的に情報を捉える力が養われていきます。
一方で、クリティカルシンキングは、書籍を読んだり、動画を観ただけでは、なかなか習得が難しい思考法でもあります。
グロービス経営大学院など、講座として提供しているビジネススクールもあるので、こうした外部の機関を活用してみてください。
(▼講座の詳細はこちら)
『クリティカルシンキング』講座
またグロービス経営大学院では、随時オンラインにてクリティカルシンキング講座の『無料体験クラス』を実施しています。
授業の雰囲気や進め方を知りたい方は、まずはこちらからのご参加をおすすめします。
(▼日程一覧はこちら)
本を読み、アウトプットする習慣をつける
「日常的に本を読む機会がほぼない」という人は、まずは本を読むことに意識して取り組んでみてください。
読解力を鍛えていくには、考えながら読めるような種類の本がおすすめです。
そして、本を読むことが習慣化されてきたら、その内容を要約しアウトプットするようにしてみましょう。
読解力は、文章を読むだけではなく「理解し、解釈する力」でもあり、きちんと内容を理解しなければ要約できないからです。
アウトプットの仕方は、ブログやSNSで発信する、他者に話すなど、様々な方法があります。
ぜひ取り組みやすいもので行ってみてください。
まとめ
読解力は、情報があふれている今の時代において、非常に重要な力です。
まずは、自身の読解力を振り返ってみて、どこが弱いか、どこを鍛えていくべきか考えてみてください。
オンライン体験クラス&説明会日程
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。