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テクノロジーの進化やコロナウイルスによる劇的な環境変化は、私たちのビジネスや働き方にも大きな影響を与えています。
例えば、多くの企業で「リスキリング」を積極的に導入するようになり、ビジネスパーソンの間でも、継続的にスキルや知識をアップデートする取り組み、いわゆる「大人の学び直し(リカレント教育)」が広がっています。
こうした変化に伴って、オンラインセミナーや動画視聴による学習など、利便性の高いサービスを目にすることが増えてきました。ビジネスパーソンにとって今は、これまでにないほど学ぶ機会に恵まれている状況だと言えるでしょう。
一方で、学ぶことの重要性に気付いていても「何を学べばよいのか分からない」といった悩みや、学び始めてみたものの「継続できない」「なかなか成果につながらない」といった問題を抱えている人は多いのではないでしょうか。働きながら長期間にわたって学び続けることは、本当に難しいことだと思います。
このコラムでは、「働きながら学び続けるために、押さえておきたいポイント」について解説します。その上で「何を学べばよいのか」「どのように学べばよいのか」についても触れていきたいと思います。
1:学ぶ目的を明確にする
「何のために学ぶのか」を具体的にイメージする
社会人が何かを学ぼうとする際に、最初に取り組んでおきたいことは「学ぶ目的を明確にする」ことです。
学び始めるきっかけは、置かれている状況や立場によってさまざまです。「仕事の幅を広げたい」「自分の市場価値を高めたい」といった前向きな動機だけではなく、「今の仕事がなくなるのではないか」「この先は、これまでの経験だけでは通用しないかもしれない」といった危機感から学び始める方も多いかもしれません。また、「同僚や学生時代の同期が学び始めたから」といった周囲の影響を受けて、なんとなく学び始めた場合もあるかもしれません。
どのようなきっかけであれ新たな学びは、知的好奇心が満たされるだけでなく、これまでできなかったことができるようになるという成長の喜びも得ることができ、人生に豊かさをもたらしてくれるでしょう。
ただ、忙しいビジネスパーソンにとって、限られた時間の中で学び続けることは容易ではありません。「何のために学ぶのか」「学んだことを何に活かしたいのか」といった目的が明確になっていなければモチベーションを維持できず、学びの優先順位は下がる可能性が高いでしょう。
例えば、「自分の市場価値を高めたい」という動機で学び始めたとします。しかし、「何のために市場価値を高めたいのか」「市場価値を高めるには、どんなスキルや知識が必要なのか」「それらをいつまでに身に付ける必要があるのか」など、目的やスケジュールについて具体的なイメージがなければ、どんなアクションをどのような順番で取ればよいのかを想像することは難しいでしょう。また、「学んだことが、本当に成果につながっているのか」「自分が成長しているのか」も評価できず、成長実感を得ることは難しいでしょう。
何かを学び始めるとき、目的を具体的にイメージすることは、必須の営みなのです。
「短期的」な成長実感を積み重ね、「中長期的」な学びのモチベーションにつなげる
ここでは、学びへのモチベーションを維持するための目的の設定方法をご紹介します。
最初にお伝えしたいことは、「短期」と「中長期」に分けて学ぶ目的を設定することです。短期的な学びの目的となるのは、「できなかったことが、できるようになる」ことです。
例えば、営業職のAさんが営業スキルを磨くために、コミュニケーションスキルやプレゼンスキルの勉強をしたとします。その結果、以前よりも多くのアポイントが取得できるようになり、受注確率も飛躍的に向上しました。できなかったことができるようになったわけですから、達成感が生まれます。この達成感が向上心を生み出し、新たな学びを得たいという動機付けになるのです。
次は中長期的な学びの目的についてです。先ほどのAさんの事例をもとに考えていきましょう。Aさんは営業スキル向上のために学んだことを、周囲のメンバーに丁寧に伝えていくことを意識するようになりました。その後マネジャーとなり、マネジメントスキルを習得します。さらに、これまで培ってきた営業スキルやマネジメントスキルなどを活かして、営業コンサルタントに転職しました。
長期にわたって新しいスキルを学び続けたことで、キャリアアップや転職といった選択肢を増やし、働く環境を変えることができました。
このように学ぶ目的を「短期的には、できることを増やす」「中長期的には、人生の選択肢を増やす」ことに設定すれば、学びを継続するために欠かせないモチベーションをキープできる可能性が高まります。
何かを学び始めたいと考えている方は、まず「短期」と「中長期」に分けて学ぶ目的を明確にすることにチャンレジしてみてください。
2:「何を学ぶか」だけではなく、「どう学ぶか」も考える
これからの時代は「学ぶ力」が重要になる
学ぶ目的を明確にすることができたら、次に考えたいことは「何を学ぶか」です。
リクルートキャリア社が実施した『「人生100年時代に働きながら学ぶこと」実態調査』(*1) によると、働きながら学ぶ人の中には「学ぶものが定まらない」と悩む人が一定数いるようです。
劇的な環境変化に伴い、知識やスキルの賞味期限は短くなっています。このような状況の中では「何を学べば正解なのか分からない」といった悩みを抱えるのは当然かもしれません。
「何を学ぶか」を決める上で重要なのは、学ぶ目的を具体的にイメージし、それらを達成するために足りない知識やスキルは何か?を考えることです。さらに、自分の強みや適性、社会から求められている能力などと照らし合わせて、「何を学ぶか見極める力」が大切になります。
加えて、環境変化の激しいこれからの時代に、ますます必要となる能力は、「環境変化に合わせて新しい能力をすぐに身に付けることができる力」です。ここでは、「何を学ぶか見極める力」と「すぐに身に付けることができる力」の2つのを「学ぶ力」とよんでいます。
「学ぶ力」の重要性は、オックスフォード大学が発表した「The future of skills employment in 2030」(*2)の中でも語られています。このレポートでは「2030年の雇用に求められるスキル・知識」が1位から120位までランキングされています。その中で、「戦略的学習力」が1位に選ばれました。戦略的学習力とは「自分にとって最適な学びを見極め、効率的に知識やスキルを身に付ける力」、つまり先ほどご紹介した「学ぶ力」のことを言っているのです。
どうすれば「学ぶ力」は、身に付くのか?
では、どうすれば「学ぶ力」、とくに今後重要となる「環境変化に合わせて新しい能力をすぐに身に付けることができる力」は身に付くのでしょうか。
グロービス経営大学院では、短期間に新しい能力を身に付けるためには「正しい学びのサイクル」を回し続けることが最も重要だと伝え続けてきました。
そのサイクルは、以下の4つのステップに分けることができます。
①知識をインプットする
②知識をつかいアウトプットする
③アウトプットに対し他者からフィードバックを受ける
④フィードバックを踏まえて、自分の思考を改善する
まず、新しい能力を身に付けるためには、該当分野に関連する知識のインプットを行う必要があります。そしてインプットしたことを活かして自分の考えを他者に伝える(アウトプット)過程で理解を深め、学びを定着させることが大切です。さらに重要なのが、インプットとアウトプットをひとりで繰り返すだけでなく、自分の考えに対して他者からフィードバックを受けることです。自分では気付かなかったポイントを指摘してもらうことで、それらを踏まえて自分の考え方を改善していくことができるからです。
この4つのステップを繰り返し回し続けることで「学ぶ力」が鍛えられ、短時間で新しい知識やスキルを身に付けることができるようになります。実際、グロービス経営大学院の授業は、どの科目においてもこの「正しい学びのサイクル」が効率よく回るように設計されています。
この先、これまで培ってきたスキルが陳腐化したり、異動や転職によって新たな知識の習得が求められたりするかもしれません。しかし日々「学ぶ力」を鍛えていれば、そうした環境変化にもすぐに適応できるようになるでしょう。
3:学んだことを仕事の成果につなげる
「効果的な学びを得る」ための3要素
最後に「正しい学びのサイクル」を実践し、仕事の成果につなげるためのポイントについて触れておきます。限られた時間で最大限の成果を得るためには、「正しい学びのサイクル」を効果的に回す必要があります 。そのために意識しておきたいポイントをご紹介します。
「効果的に回す」について、正しい学びによる正しい成果を回すことを前セクションで伝えた。このセクションでは、「正しい学びサイクル」を回し、より仕事の成果につなげるためのポイントを明示しているため、「効果的に回す」という表記を採用した。そのために意識しておきたいポイントをご紹介します。
マッキンゼー社が提唱している「3×3×3アプローチ」(*3) によると、効果的な学びを得る上でポイントとなるのは、以下3つの要素とされています。
①3つのゴール:ゴールを3つ以下にすることで、集中力の分散を防ぐ。また、成長機会を見落とすリスクも減少する。
②3ヶ月の期間:3ヶ月と期間を限定することで、状況や課題に適した具体的な目標を描ける。また、四半期ごとに動いている社会人のリズムとも合っている。
③3人以上の仲間:仲間がよき監視役となることで、目標達成に向けて健全なプレッシャーが掛かりやすい。また、仲間からフィードバックを受けられる。
グロービス経営大学院の授業にも、この「3×3×3アプローチ」の要素が含まれています。例えば、授業は1科目につき3ヶ月間、30人前後の仲間とともに学んでいきます。グロービス経営大学院の授業に興味を持たれた方は、ぜひ「体験クラス&説明会」にご参加ください。グロービスでの学び方や授業の特徴、提供科目の内容、キャンパスライフなどについて詳しくご案内しています。
個人によるキャリア形成が求められる時代を迎え、学び続けることの重要性はますます高まっています。思い描くキャリアを築くためには、このコラムで解説したポイントを押さえ、学び方をアップデートしていくことが重要です。まずは「今の学びが自分に合っているのか」「この先どんなキャリアを歩みたいのか」を考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
*1. 「人生100年時代に働きながら学ぶこと」実態調査(株式会社リクルートキャリア,2019.05)
*2. 「The future of skills employment in 2030」(H Bakhshi, JM Downing, MA Osborne, P Schneider 2017)
*3. 「Intentional learning in practice: A 3×3x3 approach」(Lisa Christensen, Jake Gittleson, and Matthew Smith 2021)
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著者情報
本山 裕輔(グロービス経営大学院 東京校 スタッフ)
慶應義塾大学商学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。外資系コンサルティングファームにて業務改革及びシステム導入のプロジェクトマネジメント等を行う。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のCRMチームにてDX(デジタルトランスフォーメーション)を主導。また、グロービス経営大学院のVoicy「ちょっと差がつくビジネスサプリ」のパーソナリティを務める。"ビジネス書コンシェルジュ"として、選りすぐりの良書情報をお届けするブログ「BIZPERA」を運営している。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。