目次
※前回の記事(キャリアインタビュー#1)は、こちら
4.できる自分でありたい。完璧主義モードに入ってしまった1年目
ー入社1年目はどういった仕事をされていたんですか?
リクルートジョブズは、タウンワークをはじめとする様々な求人メディアや業務支援サービスを提供している会社です。
営業企画部へ配属され、営業部門が目標達成をするためのバックアップをしていました。
ー幸福度が20%と、かなり低いですが...?
1年目は、本当にしんどくて。
今振り返ると、中学・高校時代の「完璧主義」の側面が、強く出てしまっていたんです。
冷静に考えると、新人がいきなり全てを理解してバリバリと仕事をこなすことなんて不可能ですよね。
でも完璧主義のせいで、「できる自分でありたい」「できないことを怒られたくない」というモードに入ってしまっていました。
例えば、営業部長に企画を提案して滅多打ちにされても、先輩に「助けてください」と頼ることもできず。
心の中で「営業経験がないのに、営業企画なんてできるわけないだろ」と他責にしてしまうこともありました。
そんな姿勢で仕事をしていると、思うように成果も出ず、グループから孤立しているような感覚を持つようになり...。
辞めることも真剣に考えるくらい、半年間ほど苦しみました。
5.人に弱みを見せ、頼ってみる。ただそれだけで、物事が前進することがある。
ーどのように抜け出されたんですか?
12月に新卒1年目研修があり、そこで素直に同期に自己開示したんです。
「めちゃくちゃ辛いです。苦しいです」って。
みんなとても優しく受け止めてくれました。
思わず涙も出ました。
「ようやく言えた」という、安堵や開放からの涙でした。
相当いろいろなことを我慢していたんでしょうね。
同期からは、「そんな風には見えなかった」「うまくやっているように見えてたよ」と言われました。
そこから状況が大きく好転していきました。
人に弱みを見せ、頼ってみる。
ただそれだけで、物事が前進することもあるのだと学びました。
―どのように好転していったんですか?
研修後に、2年目のネクストアクションを同僚たちに宣言する面談があったのですが、そこでも今まで辛かったことを正直に話すことができました。
ネクストアクションでは「分からなかったら聞く」という行動宣言をしました。
先輩の中には、「ようやく言ってくれたね」と声をかけてくださった人もいて。
また涙がポロっと出てしまいました。
以降は、社内では僕のことを応援してくれたり、気にかけてくれたりする人が増え、気持ちが前向きになりました。
「ようやく社会人として歩み出せた」と思えた瞬間でした。
6.「会社の目標」と「現場スタッフの想い」。両方を叶える施策を考案
―2年目からは、幸福度が70%に上昇していますね。
初めて「自分の意思でやった」と確信が持てる仕事ができたからです。
周りに助けを借りることができるようになったと同時に、1年経って、だいたいの仕事の流れがつかめてきました。
そのようなタイミングで、「営業企画の仕事を、自分の中でどう位置づけようか」と考え、「営業現場の人を応援する仕事だな」という思いに至りました。
ありきたりな表現ですが、自分の言葉で翻訳してみると、とてもしっくりきました。
「誰かの何かの役に立っている」と思えると、途端に力が湧いてきました。
―仕事のスタンスでも変化があったんですか?
1年目までは、上司を見て仕事をしていました。
「営業部長に怒られないように、そつない資料を持っていこう」といった感じで。
2年目に、自分の仕事を「営業現場の人を応援する仕事」と定義してからは、営業現場のスタッフを見て仕事をするようになりました。
営業スタッフは、エリア入社の方が多いのですが、実際にお話を聞いていると、「タウンワークを使って地域を元気にしたい」という想いで仕事をされている方が多かったんですね。
でも、がちがちの営業オペレーションサイクルを回していると、どうしても日々の目標数字にせわしなく追われます。
そうすると、本来の想いからズレが生じ、葛藤が生まれていることが分かりました。
―「目標達成」と「働く意義の追求」。どちらも必要ですよね。
そうですね。
「2つを両立させるには、どうすればいいんだろう」と考えるようになりました。
営業スタッフは、採用ニーズのあるクライアントに営業をするのですが、クライアントの採用ニーズが満たされると、取引はストップしてしまいます。
そこで、そのジレンマから抜け出し「顧客のニーズを満たしながら、売上をより拡大していく方法はないか」と考え始めました。
そして、いろいろな書籍を読むうえで「他者推奨意向(※)」という概念を見つけたんです。
(※)他者推奨意向とは
顧客が特定の商品やサービスを、他者に勧めようと思う気持ち。
現場スタッフが熱量を持って目の前のクライアントに接し、伴走すれば、そのクライアントの他者推奨意向が高まる。そして、次なる潜在顧客に勧めてくれる。
顧客の「紹介者数」を1つの目標指数において、それが実際に売上に貢献することが証明できれば、現場の人が幸せに働くことができる構造になるのでは、と思いつきました。
―なるほど。結果はどうでしたか?
その解決策の筋は悪くなったみたいで、顧客獲得効率は上がりました。
そして、正式に組織としても「紹介者数」を1つの指標として採用し、新規顧客獲得の有効な手法として全国展開をしました。
その取り組みが評価され、結果的には、部署最優秀賞をいただくこともできました。
著者情報
中村直太(グロービス経営大学院 教員)
慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。