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デザイン思考とは?ビジネスにもたらすメリットや思考プロセス

デザイン思考とは?ビジネスにもたらすメリットや思考プロセス

目次

近年、ビジネスで用いられるようになったデザイン思考。
私たちビジネスパーソンにとって、どのような場面でどう役立つのでしょうか。

本記事では、デザイン思考が注目を集める背景、ビジネスで取り入れる際の手法、メリットやデメリットについてご紹介します。

デザイン思考(デザインシンキング)とは

商品やサービスを使うユーザーの視点からビジネス上の課題を見つけ、解決策を考える手法をデザイン思考(デザインシンキング)といいます。
デザイン思考は、色や形といった「デザイン」を考えることではありません。
ビジネスパーソンにとっては、前例のない課題に直面したり、商品やサービスの改善策に行き詰まったりした際に役立つ思考法なのです。
会社の強みや保有技術ではなく、ユーザーの視点で課題を見つけていく点が大きな特徴です。

アート思考との違い

似たような言葉でアート思考という思考法もあります。
デザイン思考とアート思考は、人間の視点で課題を捉える点では共通していますが、「誰」の視点かが異なります。

デザイン思考はユーザーの視点で課題を捉えるのに対し、アート思考は自分の発想を元にビジネスのアイデアを生み出します。
それぞれに特徴があるので、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

デザイン思考がビジネスで注目されている理由

近年のヒット商品には、デザイン思考を用いて開発されたものがあります。
アップルの「iPod」や任天堂の「Wii」、アキレスの運動靴「瞬足」はその代表的な存在です。
デザイン思考がビジネスで活用される背景には、世の中の変化が影響しています。

ほしいと思うものは何でも手に入る世の中になった

「モノ余りの時代」といわれて久しくなりました。
今はインターネットで検索すれば、ほしいものは簡単に買うことができる時代です。

ユーザーは商品やサービスそのものの質だけでは満足できず、買う行為を通して心の充足を得たいと思うようになりました。
一連の買い物体験がスムーズか、ユーザーサポートは丁寧か、商品やサービスを使っていることへの満足感が高いか、といったことまで求めるようになったのです。

本当に求めているものは、ユーザー自身も気付けていない

消費者の変化を踏まえ、近年は各社が商品開発のみならずユーザーサポートにも力を入れ始めました。
優れた商品、丁寧なユーザーサポートが提供される商品が数多くある中で、ユーザーが選ぶ商品やサービスとはどのようなものでしょうか。

それは「ユーザー自身も気付いていなかったニーズに応えられている商品」です。
私たちビジネスパーソンにとっては、商品開発の難しさが格段に上がっているといえます。
ユーザーにニーズを聞いて商品を開発する手法だけでは潜在的なニーズを満たせず、商品が売れない時代となりました。

デザイン思考がもたらすメリット

商品開発に悩む企業が増える中で注目され始めたデザイン思考は、個人のスキル向上や組織運営面でもメリットがあります。
ここでは3つのメリットをご紹介します。

多くのユーザーに支持される商品の開発につながる

星の数ほどの商品やサービスが存在する今、ヒットしているものはいずれも潜在ニーズを見つけ、それに応えているものです。
デザイン思考でユーザーの深層心理に迫り、満たされていないニーズを見つけることで、ユーザーが本当に求めていた商品の開発につなげられます。

参考記事:UIとは?UXとの違い、UIデザインのコツを解説

多様な意見を受け入れて仕事を進めることが習慣になる

デザイン思考は、複数のメンバーで意見交換しながら進めると効果的だといわれています。
チームで考える過程では、他者の意見が自分と異なっていても受け入れる姿勢が大切です。
チームでデザイン思考に取り組んでいると、多様な意見を受け入れると発想が広がることが実感でき、それを繰り返していくうちに習慣化されるでしょう。

多くの社員が商品開発のプロセスに参加できる

多くの会社では、限られた役職者で決めた戦略が全社に伝えられ、現場の社員はオペレーションを担うことが主な仕事になります。
商品開発でも同じことがいえるでしょう。
デザイン思考を商品開発で取り入れると、チームを組むことでより多くの社員が開発プロセスに参加でき、仕事へのモチベーションが上がるきっかけになります。

デザイン思考のプロセス

デザイン思考では、5つのプロセスを経てビジネスの問題解決を目指します。

最初に行うのはペルソナの設定です。
ペルソナとは、商品の典型的なユーザー像をいいます。
年齢や性別、職業、住んでいる地域、家族構成など、あたかも存在している人のように具体的に設定するのが一般的です。

その後で、デザイン思考のプロセスに入ります。

ステップ①:観察・共感

ペルソナが抱えている課題やニーズを探るために、ユーザーが商品を使っているところを観察したり、同じ体験をしたりします。
商品がどう使われるのか、使うとどう感じるのかを理解した上で、不満な点を見つけていきます。
ここで重要なのは「この世代の人なら、こう思うはずだ」といった思い込みを捨てることです。
ユーザーに共感できるほど深く理解することを目指します。

ステップ②:定義

ユーザーを観察して共感し、不満を見つけ出したところで、これから取り組むべき課題を定義します。
ユーザーが本当に求めていることは何かを考えましょう。
ユーザー自身も気づいていなかった課題を設定できるのが理想です。

ステップ③:概念化

次に、ステップ②で定義した課題を解決するためのアイデアをどんどん出していきます。
ここでは質より量を重視し、多くのメンバーでブレインストーミングを行うとよいでしょう。

ステップ④:試作

③で出た多くのアイデアをもとに、商品やサービスの試作品を作ります。
まだ試作段階ですので、時間やコストを多くかける必要はありません。

ステップ⑤:テスト

試作品をユーザーに使ってもらい、得られた意見を分析して、ステップ②で定義した課題が解決できているのかを確認します。
改善点が見つかったら再び試作品を作り、テストを繰り返します。

ここまで進んだ時点で、定義した課題が適切でなかったと分かることもあるでしょう。
その場合は、ステップ①や②のプロセスに戻って検討し直します。
ステップ①〜⑤のプロセスを繰り返し、ユーザーが満足する商品やサービスに近づけていくことが大切です。

デザイン思考では、課題設定、試作品の改良、結果の分析などを判断する起点はすべてユーザーです。
自社の技術的な強みや組織の都合を判断軸に入れないように留意しましょう。

デザイン思考の注意点

デザイン思考は、あらゆる場面に万能ではありません。
注意点もおさえておきましょう。

ゼロベースで物事を作るには不向き

世の中に全くない新しいサービスを考えるときにデザイン思考は向いていません。
なぜなら、ユーザーの体験や感情を元に課題を設定して解決する手法だからです。

チームメンバーの選定が難しい

チームメンバーの選定が適切でないと、デザイン思考に取り組んでもよいアウトプットが出ません。
デザイン思考において望ましいチームは、メンバーの多様性があり、率直に意見を言い合える人間関係であることです。
似たような経験をしているメンバーばかりだと、斬新な発想が生まれにくくなります。
また、上下関係が厳しい組織の上司と部下だけでデザイン思考に取り組むと、どうしても上司の意見が優先されがちになるので要注意です。

まとめ

デザイン思考は、新規事業を生み出す時や、既存ビジネスが行き詰まった際の改善活動において役に立つでしょう。
事業を創ろうとしている人や成長させることに悩んでいる人は、ぜひデザイン思考を取り入れてみてください。

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著者情報

御代 貴子

御代 貴子

慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。グロービス経営大学院(MBA)卒業。システムエンジニアを経て、株式会社グロービスに入社。グロービスでは法人向け人材育成・組織開発のコンサルティング、グロービス経営大学院オンラインMBAの新規学生募集、アセスメント事業の企画等に従事。人事組織系領域のコンテンツ開発、論理思考領域の講師も担当した。株式会社ゆとりの空間で新規事業企画やコンテンツ開発を担当した後、現在はフリーランスの編集者・ライターとして活動中。
一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略――テクノロジーを武器にするために必要な変革』共訳(ダイヤモンド社)。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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