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将来を予測することが難しいVUCAの時代においては、私たち一人一人が変化を捉えて何が課題なのかを考える力が求められています。
そんな考える力を向上させる上で、身につけておきたいのが「具体化」と「抽象化」という思考法です。
例えば、上司から「具体的には何が言いたいの?」といったフィードバックを受けたり、友人から「つまり、今の話ってどういうこと?」と聞き返されたりした経験はありませんか?
本記事ではビジネスに限らず、上記のようなあらゆるシーンで活用できる「具体化」「抽象化」という思考法について解説します。
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思考の質を向上させる「具体化と抽象化」
状況に応じて「具体化」と「抽象化」をバランスよく使い分けることで、コミュニケーションを円滑にしたり、課題解決の精度を上げたりすることができます。
具体化とは
具体化とは、「漠然とした物事をはっきりとした形にすること」を意味します。
抽象的な法則や傾向などをもとに、アウトプットを生み出すための思考法です。
例えば、「フォトジェニックな和菓子の売れ行きが好調」という傾向から、「さくら餡やレアチーズケーキなど多彩なフレーバーが楽しめるお団子」「クマやネコなど動物の形をしたモナカ」といった新たな商品企画のアイデアを考えることができます。
抽象化とは
抽象化とは、「複数の情報に共通する要素を抜き出すこと」を意味します。
重要ではない細部の情報を取り除き、物事の本質を捉えるための思考法です。
例えば、「最近バズった広告を参考にしよう」と成功事例のやり方をそのまま踏襲するのではなく、「話題に上がる広告は、ストーリー性の強さが共通点なのではないか?」と抽象化することで、自分の状況に置き換えて考えることができます。
具体化スキルを鍛える方法
上司や周りから「具体的にはどういうこと?」と言われることが多い方は、まずは物事を具体化することから意識してみましょう。
「5W3H」
「何から具体化したらよいか分からない」という場合は、「5W3H」というフレームワークに当てはめて物事を整理しましょう。
- When(いつ:時間)
- Where(どこで:場所)
- Who(誰が:人物)
- What(何を:課題)
- Why(なぜ:理由)
- How(どのように:方法)
- How Many(どれくらい:規模)
- How Much(いくら:価格)
説明や報告を行う前に、抜けている要素はないか照らし合わせて考えてみてください。
また、「5W3H」に沿って問題や課題を整理することで、トラブルの原因特定や改善策の検討などを抜け漏れなく行うことができます。
実務で使うには?
具体化スキルがとくに役立つのは、第三者に情報を正確に伝えたり、アイデアを実行したりする場面です。
抜け漏れなく情報を伝えることで、相手との解釈のズレをなくすことができます。
また、アイデアが漠然としていると、「どこから手をつけてよいか分からず、なかなか行動に移せない」という状況に陥ってしまうことも...。
例えば、営業部の業務効率改善プロジェクトを発足するというアイデアを「5W3H」を使うことで、「12月までに、◎◎支店営業部の、営業リーダーで、......」と実行性を高めることができます。
抽象化スキルを鍛える方法
上司や周りから「要するに、どういうこと?」と言われることが多い方は、まずは物事を抽象化して伝えることを意識してみましょう。
抽象化ゲーム
SHOWROOMの前田祐二さんが実践している思考トレーニング方法として有名なのが、「抽象化ゲーム」です。
ゲームのやり方は簡単で、まったく関係のない2つの言葉を挙げて、その共通点を見つけるというもの。
1つ目の言葉は「電話」「ペンケース」「自転車」など、思いついたもので構いません。
2つ目の言葉は「友だち」「歴史」「人生」など、汎用性の高い言葉を選びましょう。
そして、この2つの言葉の共通点を考えていきます。
例えば、「自転車」と「人生」の共通点を考えてみると、
- 長い道のりを走り続ける
- たまにはメンテナンスが必要
- 走らなければ倒れてしまう
などが挙げられます。
「つまり、ここから何が言えるか?」を繰り返し考えることで、その精度が向上します。
1人でも2人以上でも楽しめるゲームなので、ぜひ試してみてください。
実務で使うには?
抽象化スキルがとくに役立つのは、物事の全体感を掴んだり、第三者にイメージを伝えたりする場面です。
何かを説明する際に各論から話し始めてしまうと、話の全体像が捉えられず、結果的に相手の理解が追いつかなくなってしまう可能性があります。
「今から話すのは、要はこういうことです」と最初に話の方向性や大枠を示した上で具体的な説明を行うと、より伝わりやすくなるでしょう。
まとめ
具体化スキルと抽象化スキルは、いずれも一朝一夕で身につくスキルではありません。
上司や取引先とのコミュニケーション、ミーティング、資料作成など、さまざまな場面で「もっと具体的にしたほうが伝わるのではないか?」「まずはテーマを抽象化して、方向性の認識統一をしよう」といった考え方を取り入れてみてください。
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著者情報
池田 桃香(グロービス経営大学院 大阪校 スタッフ)
愛知県立大学外国語学部卒業。大手人材会社に入社し、コピーライターとして求人広告の制作を担当。多くの企業の採用支援に関わる中で、社会人教育に興味を持つようになり、株式会社グロービスに入社。現在はグロービス経営大学院のコンテンツメディア企画チームに所属し、コンテンツや広告の制作などに従事している。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。