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転職にベストなタイミングはあるの?求められる能力

転職にベストなタイミングはあるの?求められる能力

目次

転職は、キャリア形成の一手段として身近なものになってきました。
転職を視野に入れた際に、気になることの1つは「いつ転職すべきか?」という「タイミング」ではないでしょうか。
本記事では、年代や状況ごとに転職のタイミングの見極め方を紹介します。

転職するならいつがベスト?

転職は人生の大事な転換点。
せっかくなら「有利に働くタイミングで転職をしたい」と思うのは、自然なことかと思います。
転職に最適なタイミングについては、さまざまな「説」があります。
ここでは、キャリア相談の際によく拠り所とされる4つの代表的な説をご紹介します。

「石の上にも三年」説

3年は同じ組織で経験を積んだ方がいいという説です。
実際に、親や先輩から言われたことがある人も多いのではないでしょうか。
理由としては、「3年でようやく仕事の全体観がつかめる」「3年で好転しなければ向いてないと判断できる」などがあります。

一方で、「なぜ3年?」にはじまり、「やりたくない仕事」「将来につながらない仕事」を3年も続けるのであれば、早めに見切りをつけ時間を有効活用した方がいいという見方もあります。

「やり切ったらOK」説

今の仕事を「やり切った!」と思えるならOKという説です。
理由は、「途中で辞めると逃げ癖がつく」「会社や顧客に迷惑をかける」といった、ひとまず節目まで頑張ろうというものと、「経歴書に書けるまとまった経験をしたい」といった、計画的なものがあります。

一方で、本当の意味で仕事を「やり切れる」ことや、「後を濁さない=迷惑をかけない退職」はあるのでしょうか。
過度に現職を意識することで、機を逸することもありえます。

「早ければ早いほどいい」説

年齢が若い方が転職活動は有利であるという説です。
理由は、「企業は少しでも若い人材を欲している」「ストレスは長く抱えないほうがいい」「思い立ったが吉日!」などです。

一方で、そんな軽率な考え方で判断することに懸念は残ります。
一定の経験を積み、次に活かせるスキルを身につけたうえで転職をしないと、評価をされず、活躍できない(結果的に不幸せになる)恐れがあります。

「新規求人が増える時期」説

新規求人が増える時期(4月に向けた2~3月、10月に向けた8~9月など)がよいという説です。
理由は、「求人が豊富で選択肢が多い」「企業の採用熱が高まっている」「計画的な採用で入社後もスムーズ」などです。

一方で、すでに広く知られている情報なので、ライバルも増える時期である可能性があります。
また、企業の採用サイクルが多様化する中、今もどれくらい正しいと言えるかは分かりません。

転職タイミングを見極めるには?

「そうかも!」と思える説もあれば、「本当に?」と疑いを持つ説もあります。
それもそのはずで、転職は極めて個別性が高くパターン化しにくいものです。
だからこそ、個別カウンセリングの転職サービスが成立しているとも考えられます。
これらの説は、参考程度に捉えるスタンスでいるのが望ましいのではないでしょうか。

絶対に逃してはいけないタイミングもある

そのような中でも、万人に共通して「逃してはならないタイミング」があります。
それは、「自分の希望にマッチする求人があった時」です。
求人は、"ミズモノ"です。
採用枠が充足したらクローズします。
選考の土俵にも乗れず、挑戦できずに終わるため、「縁がなかった」では片付けられない"やらなかった後悔"が残るでしょう。

縁をつかめる人は、備えてきた人

縁の観点では、転職(就業)とは「出会い」だといえます。
良い出会いに巡り合うためには、常にマーケット(=企業や求人)にアンテナを張っておく努力が求められます。
また、魅力的な求人があったとしても、先方から「求められている要件(=スキル、経験など)」に達していないこともあります。
自分のタイミングで縁をつかめるように、能力を高め、実績を積んでおくことも重要な備えです。

年代別に転職で求められるスキル

ここまでの話を踏まえると、転職はタイミングに加え、「縁をつかむ力」が重要だと言えます。
縁をつかむためには、自分の価値(能力や実績)を高めておく必要があります。
では、どのような能力や実績を高めておけばいいのでしょうか。
これもタイミングと同様、会社やポジションごとの個別性が高く、一般論は通用しません。
ただそれではヒントにならないので、『カッツ理論』という概念を拠り所に考えてみます。

『カッツ理論』とは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱した理論です。
マネジメントに求められる能力を3つに分類し、マネジメントのレイヤーごとに、求められるスキルの重みづけが変化することを示します。
1950年代に提唱された古典的な指針ではありますが、現在も人材開発系の書籍・メディアや企業の能力開発の現場で引用されることも多く、普遍性の高い整理だといえるでしょう。

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年功序列の縛りは弱まってきたものの、引き続き、年齢(≒経験)とポジションには一定の関係があるように思います。

そこでシンプルに、

  • 20代⇒ロワーマネジメント
  • 30代⇒ミドルマネジメント
  • 40代以降⇒トップマネジメント

と置き換え、年代ごとに必要とされるであろう能力を考えてきます。

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20代は「テクニカルスキル+ポテンシャル」

20代で最も比重が高いのが「テクニカルスキル」です。
テクニカルスキルは、業務遂行能力や業務知識と言われ、現場で直接的な価値提供をするために役立つ能力全般を指します。
例えば、情報収集力や文章作成力、ITリテラシーやタイムマネジメントなどが該当します。
自分の役割をきっちりと遂行し、成果(価値提供)につなげることが求められます。

また20代の転職においては、過去よりも未来に焦点をあてられる割合が高く、ポテンシャルが重視されます。
何をポテンシャルとするかはそれぞれですが、実績には表れていない潜在的な能力(学習含め)や働く意欲、姿勢、将来の展望などが一般的でしょうか。

30代は「ヒューマンスキル+実績」

30代は「ヒューマンスキル」です。
実務を想像すれば、年代/ポジション問わずヒューマン・スキルが求められることがわかります。
ただミドルマネジメントは、人を動かし間接的に価値提供する役割を担うため、特にヒューマン・スキルが重視されます。
ヒューマン・スキルとは、例えば、コミュニケーション力や関係構築力、交渉力や育成力などが該当します。
自分だけではなく、人を介して成果を生み出すことが求められます。

また、社会人経験が10年を超えてくるため、相応のひとまとまりの成果が期待され、即戦力としての具体的な貢献イメージを求める傾向にあります。
さらに、組織のフラット化に伴いプレイング・マネージャーという立ち位置が増えている背景から、テクニカルスキルも重要視されていることを補足しておきます。

40代は「コンセプチュアルスキル+人間性」

40代は「コンセプチュアルスキル」で、概念化能力といわれます。
より経営に近い役割を担うため、物事の本質を見極め、未来を見据えた上での問題設定力や構想力、戦略的な思考が求められます。
実績をベースとした業績貢献はもちろん、文化醸成など組織に与える影響が大きなポジションでもあるため、「人間性=どのような人間なのか」という在り方が問われます。
40代・50代の転職者を対象としたリクナビNEXTのアンケートで、転職の際に評価されたと思う要素に、約半数が「人柄・性格の良さ」を挙げています。

能力に応じてチャンスが巡ってくる

以上が、年代別に転職で求められる能力の拠り所です。
これらを一つの基準に置きながらも、縛られる必要はありません。
能力に応じて、チャンスが巡ってくる時代です。
20代で既に高い実績を出し優れた人間性を備え活躍されている方もいるし、希少性の高い専門性の一点突破で勝負をされている方もいます。

また、私が教員を務めるグロービス経営大学院のMBAプログラムに通われている方は、コンセプチュアルスキルを核とした経営の体系的能力を先回りして身につけ、経営者の視座を持ちながら自分らしく高い実績を積み、マーケットの基準を越えて評価されている方が多いようにお見受けします。

転職が当たり前の時代に意識したい3つのこと

常にキャリアチェンジに備える

当たり前ということは、「いつでも起こり得る」ということです。
自主的な転職に限らず、この先は事業縮小や解雇、倒産など望まないケースも増えていくかもしれません。
転職の備えというと、履歴書や職務経歴書を用意することを想像する方もいるかもしれません。
転職活動はタイミングとの勝負なので、それもテクニカルには重要です。
さらに、それらの定期アップデートは、キャリアの棚卸しや成長の確認にもなるのでおすすめです。
加えて、個人的には、自己理解が最も重要な備えだと考えます。
自分のことをわからずして、職選びのよい意思決定はできません。
ただ、いざ転職が必要となる切羽詰まった状況から始めて深められるほど、自己理解は簡単ではありません。
自己理解は、緊急度は低いが優先度が高い人生のタスクの筆頭です。
転職に限らず、キャリアの意思決定に自己理解は欠かせません。

ポータブルスキルを高いレベルに磨く

変化に強いのは「普遍性」です。
文脈への依存が小さく、環境が変わっても発揮できるスキルを「ポータブルスキル」と言います。
例えば、ビジネスという枠組みの中でキャリアを形成する私たちにとって、ビジネスの原理原則(ルール)は、極めてポータビリティの高いスキルです。
また、課題発見力問題解決能力論理的思考力コミュニケーション能力などのベーシックな能力は、あらゆるシーンで求められる能力です。
それらを徹底的に鍛えられた戦略コンサルの若手ビジネスパーソンが、業界を越えてキャリアチェンジできる要因の一つは、これらのポータブルスキルを高いレベルで有しているからでしょう。
基礎を侮ることなく、ポータブルスキルを高いレベルで身につけていることが、変化の時代に身を助けるセーフティネットになります。

学習する力や習慣を養う

常に自分をアップデートすることが求められています。
それでなければ、変化に取り残されてしまうからです。
先日、知人のヘッドハンターから興味深い話を教えてもらいました。
採用の場面で、学習経験や学習習慣が重視され始めているとのことです。
もちろん経験や実績は評価の大前提にあり続けますが、それらはあくまで過去のこと。
組織が未来に向けて進化するプロセスにある中で、これから入社する社員にも未来に向けて進化できる能力が求められています。
そのエンジンとなる学習能力や学習習慣を確認しているという話です。
過去を証明するだけではなく、新たなものを吸収し、未来に向けて進化できる自分を示す。
そんなことがこの先より一層、求められていくのではないでしょうか。

転職だけが手段じゃない

転職は、あくまでキャリア形成の一手段です。
そこで最後に、キャリア形成において、どのようなオプションが考えられるか、全体像を俯瞰してみたいと思います。

ここでは、「アンゾフの事業拡大マトリクス」というビジネス・フレームワークを、キャリアに応用して考えます。
このフレームワークは本来、事業活動を市場と製品の軸で、既存と新規の4つのマトリクスに分類し、「成長戦略のオプション」を検討するために用います。

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「企業の成長」を「自己成長」に置き換えると、

  • 製品⇒「能力」
  • 市場⇒「環境」

になります。

そうすると、キャリア形成には「4種類のオプション」があることが分かります。

  • ①業務改善
  • ②新能力開発
  • ③新機会獲得
  • ④キャリア多角化

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オプション①:業務改善

今の職場、今の自分で「役割を拡大できないか」あるいは「より効率的かつ効果的に業務を改善できないか」などを考えます。
最もリスクが小さく、多くの方が当たり前に実践していますが、得られるリターンや変化も小さいのが特徴です。

オプション②:新しい能力の獲得

今の職場で新しい価値提供をするために、新たな能力を獲得し、自らを成長させることを考えます。
新しい能力を獲得すると、新しい機会が巡ってきます。
結果的に能力獲得が起点となり、図の下方向、つまり機会拡大やキャリア多角化へと一気に展開していくケースは少なくありません。

オプション③:新しい機会の獲得

今の自分をより一層活かせる別の環境があるのではないかと考え、新たな環境を獲得します。
転職、そして狭義には社内異動も該当します。
また完全に新しい環境に移行しなくても、副業(複業)やプロボノなど片足だけを移す選択も広がっています。

オプション④:キャリア多角化

現状に捉われない非連続的な発想で、何かを始めてみることを考えます。
趣味的に小さく始めたことで、能力開発が進んでいき、気づいたらその価値が社内・社会から認められていくこともあります。
本当にやりたかったことをいざ始めてみたら、その道で独立・起業することになるようなケースもあるでしょう。

まとめ

転職のタイミング、転職で求められる能力の拠り所となる考え方を提示しました。
能力に応じてチャンスが巡ってくるこれからの時代においては、「常にキャリアチェンジに備えること」「ポータブルスキルを高いレベルに磨くこと」「学習する力や習慣を養うこと」などの備えをしながら、「自分にとっての正解」を探すことです。

そして、転職は、キャリア形成における1つの手段に過ぎません。
手段に縛られることなく、能力開発を含め、取り得るオプションを幅広く俯瞰し、最善の意思決定をすることで可能性が広がります。
複数のオプションを同時に進め、その先に起こる予想できない偶然の変化を楽しむことにもつながります。
このような取り組みから、一般論にとらわれない、自分らしいキャリアが開かれていくのではないでしょうか。

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著者情報

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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