
目次
「部下に合わせて仕事を任せたいのに、なかなかうまくいかない」。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。期待して仕事を託したのに思うように進まなかったり、「この仕事ばかりでつまらない」と不満を言われたり。任せ方ひとつで、チームのモチベーションも成果も大きく変わるからこそ、その難しさに頭を抱えてしまうのです。
本記事では、部下の個性を見極めて仕事をアサインする具体的な方法を、実践的な4つのタイプ分類とともにご紹介します。
カギは「4つのタイプ」の見極め
優秀なマネージャーを観察すると、メンバーの性格やスキルを巧みに見極め、その人が最も力を発揮できる形で仕事を任せていることがわかります。そのアプローチを分析すると、2つの軸による4タイプの分類が鍵になっていました。
軸1:仕事の好み - マニュアル的なルーチンワーク vs 自由度の高いプロジェクト型
軸2:思考力 - 課題を自ら整理・構造化できるかどうか
この2軸を掛け合わせることで、次のような4つのタイプに分けられます。
タイプ①:コツコツルーチン派(マニュアル好き × 思考力やや低め)
このタイプは、決められた手順を忠実に守ることが得意です。定型業務やルーチンワークに強く、抜け漏れが少ないのが特徴です。ただし、手順が曖昧だったり全体像が不明瞭だと、途端に手が止まってしまいます。
こうした部下には、業務工程をしっかり見える化し、一つひとつ丁寧に依頼することがポイントです。「まずこれをやって、次にこれを」と段階を踏んで任せることで、安心して力を発揮してくれるでしょう。
タイプ②:ノリで突撃隊(プロジェクト好き × 思考力やや低め)
新しいことに飛びつくフットワークの軽さが武器のタイプです。テストマーケティングや「まずやってみる」系の業務で成果を出しやすい一方、考えなしに突っ走るリスクもあります。
上司としては、彼らの行動力を評価しつつ、計画の立て方や進め方にはしっかり寄り添う必要があります。伴走役となる先輩をつけるなどの工夫が、有効なサポートになります。
タイプ③:堅実アナリスト(マニュアル好き × 思考力高め)
このタイプは、既存の業務プロセスを分析し、改善していくことが得意です。マニュアルやルールの整備、新しい手順の提案といった仕事に適しています。
成果物のゴールイメージを示し、その達成に向けてある程度の自由度をもたせて任せることで、高いパフォーマンスが期待できます。分析・改善業務の旗振り役としても活躍が見込めるでしょう。
タイプ④:革新プランナー(プロジェクト好き × 思考力高め)
最も自律的に動けるタイプで、複雑な課題を自ら構造化し、新たなプロジェクトを生み出す力を持っています。自由な裁量を求める傾向が強く、上司の関与が過ぎるとやる気を失ってしまうこともあります。
このタイプには「コンセプトだけを共有して、あとは任せる」という任せ方が適しています。ただし、完全に放任するのではなく、定期的な報告とフィードバックの場を設け、成長と納得感を与えることが欠かせません。
「ひとりの人間に、ひとつの型」ではない
ここで重要なのは、ひとりの人が常に同じタイプとは限らないという点です。ある業務では「コツコツルーチン派」でも、別の業務では「革新プランナー」になることもあります。
大切なのは、その人がどんな業務で強みを発揮しやすいかを見極めることです。そして、本人が将来どんなキャリアを描きたいのかと照らし合わせながら、成長と成果が両立するような"仕事のポートフォリオ"を設計していくことが求められます。
任せ方で、チームはもっと強くなる
仕事の任せ方ひとつで、部下のやる気も、成果も変わります。「あの人にはどんな任せ方が合うだろうか」「この仕事を通して、どんな成長につながるだろうか」と問いかけながら向き合ってみてください。
まずは今回紹介した4タイプを、自分のチームのメンバーに当てはめて考えてみる。新しい視点で部下の強みが見えてくるかもしれません。そして、仕事の任せ方を少しずつ変えてみる。その小さな変化が、チーム全体の風通しや成果を大きく変えていく第一歩になるはずです。
著者情報

加藤 想(グロービス経営大学院 大阪校企画営業責任者)
神戸大学工学部卒業、同大学院工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。大手通信会社にて設備設計業務、採用活動に従事した後、サービス戦略部門にて新サービスの立案、AI、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院の学生募集企画にて学生のキャリア相談、新規施策立案などを行っている。また、グロービス経営大学院のVoicy「ちょっと差がつくビジネスサプリ」のパーソナリティを務める。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。