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上司との面談時や、転職の相談をする時、採用面接を受ける時など、キャリアプランはさまざまな節目で問われます。
内心では「キャリアプランなんか聞かれても...」「それって本当に必要なんだろうか?」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、先行きの見えない時代だからこそ、キャリアプランはより良い人生を歩むうえでとても重要です。
今回は、キャリアプランを立てるメリットと考え方についてご紹介します。
キャリアプランとは
まず、プラン(=計画)とは「未来に実現したい目標と、その目標を達成するための手段」のことです。
キャリアは、ラテン語のCarrariaという言葉を語源とし、Carrariaは「馬車の車輪の跡(わだち)」を意味します。
キャリアに対して職歴など仕事に関するものをイメージする方が多いですが、キャリアは仕事に限らず趣味や家庭も含めた「人生そのもの」を指します。
なので、キャリアプランは「"人生において"実現したい目標と、その目標を達成するための手段」と言えます。
キャリアプランが不要だと言われる理由
一方で、「キャリアプランは不要だ」という意見もあります。
その背景には、VUCAと表現される「想定外の変化」が頻発する時代になり、あらゆる物事が計画通りに進まなくなったことがあります。
せっかく立てた計画も無駄になる可能性があるため「計画を立てても意味がない」という考え方です。
確かに、近年社会に大きく影響を与えた出来事を振り返れば、東日本大震災やリーマンショック、新型コロナウイルスの世界的流行など、"100年に1度"と言われるような大きな危機が、10年を待たない頻度で起こっています。
しかし、「計画通りにいかないから、計画は不要だ」とは、必ずしも言えないのではないかと思います。
キャリアプラン(計画)を立てることで、想定外を味方につけられる
私はむしろ「計画を立てることで、想定外を味方につけられる」と考えます。
たとえば、毎日の仕事にイレギュラーが多いからといってスケジュールを立てることを諦めるでしょうか。
海外旅行にはトラブルがつきものだからといって、無計画で飛行機に飛び乗るでしょうか。
そうではありませんよね。
むしろ、想定外が多いからこそ計画や戦略が必要であり、計画を立てる過程で将来についてあれこれと思いを巡らせるからこそ、想定外が起こっても臨機応変に対応することができるのだと思います。
キャリアプランを立てる3つのメリット
キャリアプランを立てることによるメリットをご紹介します。
メリット①:アクションが定まる
人生は、アクションの積み重ねで形づくられていきます。
そして、人生には様々なアクションの選択肢があり、どのアクションを選択するかは人それぞれです。
個々人がアクションを選択する際に拠りどころにするのは、キャリアプランで定めた目標であり、そのアクションが目標に到達するために有益かどうかで決まります。
「やってみないとわからないから、とにかくアクションしてみよう」という人もいます。
積極的な姿勢は大賛成ですが、アクションの選択肢はあまりにも多く存在するため、時間も体力も有限であることを考えれば、手あたり次第にアクションするのはあまり得策とは言えません。
多忙ではあるけど、目的を伴う意識的なアクションがとれていない状態を指す『アクティブ・ノンアクション』という概念があります。
"不毛な多忙"とも言い換えられます。
なかなかドキッとする言葉ですよね。
『アクティブ・ノンアクション』を回避し、時間を有効に使うためには、キャリアプランを立てることはとても重要です。
メリット②:チャンスに気づける
『カラーバス効果』をご存知でしょうか。
ある特定のものを意識すると、それに関連する情報が目に留まりやすくなるというものです。
たとえば、朝の占いでラッキーカラーが「緑」とわかると、その日は緑のものが妙に目に付くようなことがありませんか。
同様に、キャリアプランを明確にし意識することで、関連する情報や出来事が目に留まりやすくなるのです。
組織の戦略転換、新しい部署のジョブポスティング、上司からの突然のタスクアサインなど、チャンスのシグナルに気づくことができるようになります。
想定外の時代には、さまざまな出来事が起こります。
しかし、その出来事をチャンスに変えるか、それとも見過ごすかは自分次第だと思います。
メリット③:周囲から良いパスを受けられる
キャリアセミナーの参加者にキャリアの転機を伺うと、「上司にアサインされた仕事での成功をきっかけに異動した」「友人の紹介で転職を決めた」など、周囲からの想定外のパスがきっかけとなるケースは少なくありません。
周囲から良いパスをもらうためには、自分のキャリアプランを周囲に共有し、周囲が良いパスを出せる状態にしておくことが大事です。
たとえば、あなたが日ごろから興味関心ごとや取り組みたいことを周囲に伝えていれば、新しいプロジェクトが立ち上がった時や人員募集があった時に、「そういえば、あの人興味ありそうだな」と想起してもらいやすくなるからです。
キャリアプランを立てたら、ぜひ周囲に「○○のような目標があります」「3年後に○○をしたいです」「私は○○に関心があります」と積極的に伝えるようにしてみてください。
キャリアプランは軌道修正していってもいい
これまでキャリアプランのメリットについてお伝えしてきましたが、一度決めた目標を必ず達成しなくてはいけないということでは、けしてありません。
先々のことを完璧に想像することは難しい
キャリアプランを考えることは、簡単ではありません。
「人生の目標と達成手段」を考えることなので時間もかかります。
そして、今この瞬間の自分が考えたキャリアプランがこの先の長い生き方を決める、という考えに現実感がないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に、5年前の時点で、今の自分の生き方や働き方を鮮明に想像できており、完璧に実現したという方は少数派だと思います。
おそらく多くの方が、程度の違いはあれど当時からは想像できなかった自分になっているはずです。
キャリアの8割は予期しない偶然によって導かれる
変化の時代に、納得感の高いキャリア理論としてたびたび取り上げられる『Planned Happenstance Theory(計画された偶発性理論)』をご存じでしょうか。
20世紀末に、米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア論で、「キャリアの8割は計画的なものではなく、思いがけない縁など、予想しない偶発的な出来事によって決定される」というものです。
しかし、この理論で注意したいのは、無計画のまま偶然をただぼーっと待っているのが良いというわけではないことです。
クランボルツ教授は、偶然を意識的に取り込みチャンスをつかんだ人には共通点があると述べています。
チャンスをつかんだ人は、オープンマインドで何事にも好奇心を持ち、様々なことにアンテナをはり、自分がワクワクする方向や興味のある方向に向かってしっかりと行動し続けていたそうです。
キャリアプランは、アップデートすべき現時点での「仮説」
「計画された偶発性理論」は、計画に固執することなく、偶然を取り込み進化させていく「しなやかなキャリア」をイメージさせるため、変化の時代に非常に取り入れやすい考え方です。
そして、この「計画された偶発性」の概念も念頭に置きながら、私はキャリアプランはあくまで現時点で考え得る仮の答え、つまり「仮説」に過ぎないと考えています。
「仮説」は検証作業により、アップデートしていくことで価値を高めます。
キャリアプランという仮説は、アクションという検証作業を経て、軌道修正しながらアップデートされていくべきものです。
より良いキャリアとは、アップデートされ続けるキャリアプランを目指す過程で手にするものなのではないでしょうか。
まとめ
キャリアプランを立てることは、予測できない出来事が頻発する現代においても、より良い人生を歩むために重要です。
現時点で叶えたいと考える目標から計画を立て、実際にアクションに移しつつ、臨機応変に軌道修正とアップデートをしていきましょう。
こちらの記事では、実際の書き方とポイントについて紹介しているので、ぜひ合わせてお読みください。
著者情報
中村直太(グロービス経営大学院 教員)
慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。