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私たちは日々、上司や同僚、取引先の担当者など、様々な関係者とコミュニケーションをとりながら、仕事を進めていかなければなりません。
そのような中、
「この話し方できちんと伝わっているのかな?」
「印象良く話すには、どうしたらいいんだろう?」
などと、話し方について悩んだ経験がある人は多いのではないでしょうか。
本記事では、仕事を円滑に進めるための話し方のコツについて紹介します。
仕事における話し方のポイントは「正確かつ分かりやすく伝える」こと
家族や友人などとのプライベートでの会話とは異なり、仕事上での話し方の最大のポイントは、「自分の意見や考えを、正確かつ分かりやすく相手に伝えること」です。
「話すことが苦手なんだよね...」という人でも、コツさえつかめば、誰でも習得が可能です。
相手に伝わる話し方のコツ
ぜひ日常業務で取り入れていただきたい、6つの話し方のコツを紹介します。
相手にとって分かりやすい言葉を使う
まず、必ず押さえておきたいのは「相手には、相手の世界がある」ということです。
自分と相手の前提は、必ずしも一致していない可能性があることを意識しましょう。
私たちは、知らず知らずのうちに、自分の前提を相手とのコミュニケーションに持ち込んでいます。
普段から何気なく使っている言葉(例えば、専門用語など)でも、相手にとっては知らない言葉である場合もありますので、できるだけ相手の立場を想像して、伝わりやすい言葉に言い換えるなどして話すようにしましょう。
そして、実際に話をしていく中で、相手の理解度を表情や相づちなどで確認しながら、使う言葉を調整していくのが理想の形です。
話を始める前に、思考を整理する
話の内容が分かりにくい人の共通点は、頭の中が整理されていないまま、思ったことをすぐに喋り始めてしまうことです。
仕事をスムーズに進めていくためには、「頭の中をクイックに整理する」というトレーニングが不可欠となります。
例えば会議中に、すぐにレスポンスしなければいけない時に「いちいち頭の中を整理している時間がありません」といったこともあると思います。
しかし現実では、どんどんと話が進む中で、クイックに頭の中を整理してそれをコンパクトに喋ることができる人の話が通ってしまうということも往々にしてあります。
「話がよくわからないなあ」といったことを言われた経験がある方は、まずは頭の中を整理する時間を短縮するトレーニングをしてみることから始めましょう。
そして、最も有効なトレーニング方法は、「論理的思考力」を鍛えることです。
こちらの記事で、論理的思考力の詳しい鍛え方を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
相手が聞き取りやすい声量やスピードで話す
話の内容に加え、「声」も大事です。
せっかく良い話をしていても、それが相手にきちんと届いていなければ意味がありません。
大声で話す必要はありませんが、最低限しっかりと相手が理解できるくらいの声量やスピードで話すようにしましょう。
また、「滑舌に自信がない」という方は、相手に絶対に伝えたい箇所は少しゆっくりめに、大きな口で顔の筋肉を意識しつつ話してみるなどの工夫をしてみてください。
適度に強調や抑揚をつける
話の理解のしやすさは、内容だけではありません。
相手にしっかりと伝えたい所は、声のトーンを変えてみたり、抑揚をつけて話すことで、ぐっと伝わりやすくなりますし、相手の心や頭に残りやすくなります。
さらに、淡々と話すよりも相手に良い印象を与えることができます。
非言語部分(目線や表情)も意識する
会話をしている時に、相手がまったく目を合わせてくれず、無表情のままだと、なんとなく居心地が悪くなりますよね。
「嫌われているのかな?」なんて思ってしまうこともあるでしょう。
じ~っと相手の目を見つめる必要はありませんが(逆に威圧感を与えてしまうこともあるので注意)、相手の顔から首あたりで少しずつ視線を動かしながら、できるだけ柔和な表情で話すようにしてみましょう。
話し方が上手な人を観察し、真似する
もしあなたの周囲で、「この人の話し方素敵だな」「分かりやすいな」と感じる人がいたら、その人が使っている言葉や言い回しなどをよく観察して、積極的に会話で取り入れるようにしてみてください。
徐々に、「上手に話すとはどういうことか」が、感覚的に分かるようになってきますよ。
わかりやすい話し方を身につけるトレーニング方法とコツ
わかりやすい話し方は、生まれ持った才能ではなく、論理的構成と非言語要素のトレーニングで習得できます。
自分の課題を把握し、実践的な練習を積み重ねることで、相手を惹きつけるスキルは確実に向上します。
「結論先行・理由後述」のロジックトレーニング
相手に話の全体像を一瞬で理解させるために、
「PREP法」(結論→理由→具体例→結論)などの論理的なフレームワークを活用する訓練が有効です。
まず結論(Point)を明確に述べ、その後に根拠(Reason)と具体例(Example)を続けることで、話のブレを防ぎます。
日頃から、ニュースや本の内容を要約する際にも、このフレームを意識して話す練習を習慣化しましょう。
熱意を伝える「非言語」表現の磨き方
説得力は言葉だけでなく、表情、声のトーン、ジェスチャーなどの非言語コミュニケーションで大きく左右されます。
特に重要なのは、アイコンタクトで相手の反応を捉え、熱意を込めて語りかけることです。
話すスピードに緩急をつけたり、重要な箇所で意図的に「間」を取ったりすることで、メッセージが深く記憶に残ります。
自分のスピーチを録画し、客観的にチェックするトレーニングも有効です。
質疑応答で論理的思考力を鍛える
質の高い質疑応答は、話し手の論理的思考力が試される場です。
想定される質問を事前にリストアップし、それに対して即座に結論と根拠を返す訓練を行いましょう。
予想外の質問に対しては、すぐに答えず「おっしゃる点は〇〇という理解でよろしいでしょうか?」と
質問の意図を確認するワンクッションを入れることで、冷静に回答の糸口を見つけ出すことができます。
この訓練が、議論の主導権を握ることに繋がります。
相手に伝わる基本の話し方
相手に伝わる話し方の基本は、常に相手の立場に立って「なぜこの情報を知る必要があるのか」という問いに答えることです。
共感性と論理性を兼ね備えたメッセージが、行動変容を促します。
主張の裏付けとなる「データ・ファクト」の提示
どんなに素晴らしい主張でも、裏付けとなる客観的なデータや事実(ファクト)がなければ、単なる意見に過ぎず説得力を持ちません。
話をする際は、「なぜなら」の後に、必ず具体的な統計、調査結果、成功事例などの根拠をセットで提示しましょう。
また、難しい数字は「〇〇社の売上の約1.5倍に相当します」のように、
聴き手がイメージしやすい具体的な例に置き換えることで、情報の信頼性と理解度を同時に高めることができます。
相手の関心事に合わせた「メリット」の伝え方
人は、自分が関心のある情報、すなわち「自分にとってのメリット」が明確な話に耳を傾けます。
話す内容が、相手の課題解決や目標達成にどう貢献するのかを、導入部分で明確に示しましょう。
「この話を聞くことで、あなたのチームは〇〇の課題を解決できます」といった形で、相手のメリットを主語にすると効果的です。
この共感の姿勢が、信頼関係構築の第一歩となり、メッセージの受け入れられやすさを高めます。
専門用語を避けた「平易な言葉」での表現
知識をひけらかすことと、相手に伝えることは全く異なります。
特に専門分野の知識を伝える際は、業界特有の略語の使用を極力避け、老若男女、誰にでも理解できる平易な言葉に変換する努力が必要です。
やむを得ず専門用語を使う場合は、必ず直後に簡単な定義や具体例を補足説明として加えましょう。
話し手が意識的に「簡単な言葉」を選ぶことで、聴き手は内容に集中でき、伝えたいメッセージが迷子になることを防げます。
「結論を先に」聞く姿勢を構築する話し方
ビジネスの場面では、特に多忙な上司や意思決定者に対しては、「結論を先に」伝えるスタイルが基本です。
話が長くなる懸念がある場合、最初に「この件について、結論から申し上げますと...」と明確に宣言することで、
聴き手は話のゴールを理解し、その後の理由や経緯の説明をスムーズに受け止められます。
また、説明が複雑になる場合は、あらかじめ「この件のポイントは3点です」のように、
話の構成を予告することで、聴き手の集中力を維持できます。
熱意と誠実さが伝わる「声のトーン」を意識する
声のトーン、大きさ、話す速さは、言葉そのものと同じくらいメッセージ性を持ちます。
重要なポイントを伝える際は、意識的に声のトーンを下げ、ゆっくりと話すことで、聴き手に緊張感と重要性を伝えることができます。
また、日常的な会話では、わずかに声のトーンを上げることで、親近感やポジティブな印象を与えられます。
内容の「何を」ではなく、それを「どう」伝えるかという感情的な部分にも配慮することが、人を動かす力に繋がります。
フィードバックを受け入れ「改善サイクル」を回す
話す力を向上させるためには、自分の話し方に対する客観的なフィードバックを受け入れ、改善を繰り返すサイクルが不可欠です。
「話が分かりにくかった」「結論が曖昧だった」といった指摘は、貴重な成長の機会です。
フィードバックを受けたら、それを感情的に捉えるのではなく、「どの部分を、どのように改善すれば良いか」を具体的に分析しましょう。
同僚や上司に積極的に意見を求め、継続的に話し方を調整していく姿勢が、真の話し上手を育てます。
話し方が上手い人の共通点
上手な話し手は、単に流暢なだけでなく、「聴き手視点」と「論理的思考」を高い次元で両立させています。彼らは話す前に準備し、話す最中は相手の反応を読み、柔軟に対応しています。
常に「聴き手」のニーズを意識している
話し上手な人は、自分が話したいことではなく、聴き手が何を知りたいかを常に念頭に置いています。
彼らは、相手の知識レベル、関心、そしてその話が相手の仕事に与える影響を事前に分析します。
そのため、話の構成や言葉選びが、常に相手のニーズに最適化されています。
話す前に「聴き手は何を期待しているか?」と自問する習慣が、独りよがりなスピーチを防ぎ、真の共感を呼びます。
思考の曖昧さを許さない「ロジカルさ」
話し上手な人は、自分の頭の中で思考が整理されており、主張と根拠が一貫しています。
話の途中で論理が飛躍したり、あいまいな表現を使ったりすることがありません。
彼らは、複雑な情報をシンプルな構造に分解し、順序立てて説明するスキルに長けています。
このロジカルさは、日頃からのクリティカル・シンキングの習慣によって培われており、
聴き手に「この人の言うことは信頼できる」という安心感を与えます。
「即興」にも対応できる高い構成力
準備されたスピーチだけでなく、急な発言やディスカッションなど即興の場でも、話し上手な人は強い構成力を発揮します。
彼らは、話題が振られた瞬間、頭の中で瞬時に結論と主要な論点を整理し、話し始めています。
この構成力は、日頃からさまざまなテーマに対して、結論・理由・具体例を瞬時に考えるトレーニングを積んでいる証拠です。
彼らにとって話すことは、頭の整理の過程そのものでもあります。
会話力向上に役立つクリティカル・シンキングとは
クリティカル・シンキング(批判的思考)とは、
「本当にそうなのか?」という問いを常に持ち、物事を鵜呑みにせず、本質を見抜くための思考法です。
会話の場でこのスキルを発揮することで、
議論の前提や根拠が曖昧な発言に対して鋭い質問や指摘ができるようになり、議論の質を高め、結果として主導権を握りやすくなります。
感情論や表面的な意見に流されず、真の課題解決に繋がる建設的な議論を推進するために不可欠な能力です。
クリティカルシンキングのメリットや具体的な鍛え方についてはこちら
グロービス経営大学院でビジネススキルを身につけよう
グロービス経営大学院では、「話す力」の土台となるクリティカル・シンキングや問題解決などの思考系スキルを実践的に鍛えます。
単なる知識のインプットではなく、受講生同士の活発なディスカッションを通じて、
自分の意見を論理的に伝え、相手を納得させるスキルを徹底的に磨き上げます。
体系化されたカリキュラムと実践的なケースメソッドにより、卒業後すぐにビジネスの現場で通用する、
本質的な「話す力」とリーダーシップを身につけることができます。
まとめ
頭の中を整理して話す力や論理的思考力は、けっして特殊な能力ではなく、誰もがトレーニングさえすれば、必ず身につく能力です。
ぜひ普段の会話も訓練だと思って、意識して行ってみてくださいね。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。


