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社会人の学びや、キャリアを自己責任で考えていく重要性が増している中で、「能力開発の重要性は分かっているけど、何から始めたらいいか分からない」といった声もよく聞きます。
そこで本記事では、能力開発における手順についてお伝えします。
能力開発には2階層ある
私は現在、グロービス経営大学院という社会人向けビジネススクールで教鞭をとっていますが、グロービスでは、能力は大きく2階層に分かれるとしています。
イメージしやすいのでよくパソコンを用いて例えているのですが、1階層目は土台となる「OS」の部分で、2階層目はWordやExcelなど「アプリケーション」の部分です。
能力開発において、OSは学びの根幹となるもので、アプリケーションは特定の分野の知識やスキルに当たります。
まずは学びの根幹となるOSを地固めする
目の前の課題をこなしていくためには、それぞれに対応したアプリケーションが役立つので、これらを習得することに意識が向きがちですが、その土台となるOSをきちんと身に着けることも非常に重要です。
OSを構成する2つの要素
OSを構成する要素の1つは、自分の頭でしっかりと物事を考えられる「思考力」です。
変化が激しく、不確実性が増す時代、ますます思考力の重要性は高まっています。
その他のOSの要素としては、自らの人生をどう生きたいか、自分のキャリアをどのように描いていきたいのかといった自分の人生に対する「ビジョン」も、OSとして捉えることができます。
土台を整えると効率よく成長できる
こういった学びの根幹となるOSを地固めしたうえで、特定のスキルや知識といったアプリケーションをインストールしていく方が、効率よく、そして大きな成長へとつながります。
そのため、能力開発を意識したら、まずは自分のOS の部分は十分に整えられているのかということの確認から始めてみてください。
次に取得すべきアプリケーションを考える
学びの土台が整ったら、次にどのようなアプリケーションをインストールしていくべきかについて考えていきます。
その際には、安易に「流行だから」「みんなが勉強しているから」といった理由で飛びついてはいけません。
歩みたいキャリアや人生と整合していないスキルや知識の獲得は、なかなか勉強が継続しないからです。
例えば近年、プログラミングというキーワードが流通し、「プログラミングか、自分もやらなきゃ」とプログラミング学習を始める方がいらっしゃいます。
このこと自体は全然否定するような話ではないですが、理系出身でプログラミングを少し触ったことのある立場から言うと、相当好きではないとプログラミングでご飯が食べられるようになるまで続けるのは厳しいということです。
1ヶ月やそこらプログラミング教室に通ったからといって、それで副業できるテクニックが身につくかというと、そうではありません。
どんなスキルや知識を獲得するかは、自身の当面のキャリアの方向性を見据えたうえで考えていってみてください。
まとめ
能力開発の順番としては、まずは学びの根幹となるOSの地固めから始めましょう。
自分の人生のビジョンについて考え、ちゃんと物事を自分の頭で考える思考力を身に着け、そして考えや意見を自分の言葉で伝えれるようになる。
そういった土台作りを行ってみてください。
そのうえで、具体的な課題をこなすための知識やスキルのインストールを行いましょう。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。