目次
今回は、若手リーダーやリーダー候補に最も大切な力の1つである、「自社が置かれた環境を理解する力」についてご紹介します。
なぜ外部環境を把握することが重要なのか
例えば、外部環境を把握し、以下のことを押さえておけば、より適切な指示を部下へ出すことができます。
- 自社が商売しているフィールドの顧客はどのような特徴があるか。
- 同じフィールドで戦っている競合はどういう状況にいるのか。
- 自社の強みをきちんと活かせているのか。
- 弱みが致命的な状況を作り出してはいないか。
基本のフレームワーク「3C分析」
取り巻く環境を押さえるために、まずは「3C分析」を実践で使いこなせるようになりましょう。
3Cとは、以下の3つのワードの頭文字をとったものです。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
自社を取り巻く主要項目をシンプルに押さえられるという点で、3C分析の右に出るものはありません。
3C分析でありがちな失敗例
3C分析を使いこなせるようになるために、注意点を3つご紹介します。
3Cを「穴埋め問題」にしない
市場や競合、自社に関する「事実」だけを上げ連ねて、単なる穴埋めで終わっていることがあります。
整理をするだけでは、分析とは言えません。
その事実から「何が言えるのか」という解釈もセットで考える必要があります。
例えば、市場の状況が自社にとってどういう意味を持つのか、自社の強みや弱みに市場の状況がどのように影響しているのか、ということをきちんと押さえましょう。
自社の強みや弱みを適切に理解する
以前、あるメーカーさんが、「うちには博士号を持っている人がたくさんいます。それが強みです。」と話していました。
博士号を持っている人が、お客様にとって価値のある商品をたくさん作っているのであれば、それは確かに強みとなるでしょう。
しかし、マニアックな研究ばかりして、顧客の価値に繋がることを提供できていなかった場合、人件費がものすごく高い集団にすぎません。
「うちには博士号を持っている人がたくさんいます」という事実だけでは、自社の強みを説明することはできないのです。
その人たちがどういう価値を生み出していて、その結果どのようなお客さんをつかめているか、こうしたことを繋げて考えて初めて、自社の強みや弱みを理解できるようになります。
「マクロ」「ミクロ」両面の視点が必要
3Cのうち、Customer分析は、2つの視点で正しく押さえましょう。
Customerは日本語で「市場・顧客」と訳されます。
ここで言う「市場」は、高い視点(マクロな視点)から全体の規模や成長率を押さえることになります。
例えば、「自動車市場が〇%伸びています」といったデータです。
一方「顧客」は、低い視点(ミクロな視点)によって個々の一人ひとり、一社一社を理解することです。
たとえば、「そこの販売代理店では、最近、赤色の車が売れています」といったものです。
マクロとミクロの両面の視点から、市場や顧客の状況を議論できてはじめて、本当の意味での分析がなされたこととなります。
まとめ
今回は、リーダーとして必要な能力のひとつである、自分が置かれた環境を理解する能力についてご紹介しました。
データを持ってきて整理するだけではなく、分析と解釈を加えて自社にとっての意味をひねり出す作業を徹底的に行うことが重要です。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。