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共感力を高めることは、プライベートはもちろん、ビジネスにおいても様々なメリットがあります。
例えば、近年注目されているリーダーシップのあり方『サーバント・リーダーシップ』では、共感と傾聴が重視されています。
本記事では、共感力がある人の特徴と高めていく方法を紹介します。
共感力とは
共感力とは、「他者の考えや意見にその通りだと感じたり、喜怒哀楽といった感情に寄り添うことができる力」のことであり、他者と信頼関係を築いたり、良好なコミュニケーションをとるうえで非常に重要な力です。
共感力がある人の特徴
共通してみられる特徴を3つほど紹介します。
周囲の人への関心が強い
共感力が高い人は、日ごろから周囲の人への関心が強く、よく観察をしています。
そして会話をする際にも、相手の言葉の意味をそのまま捉えるだけでなく、「なぜこのような考えに至ったんだろう?」「どのような状況や心理状態だったんだろう?」と考えながら聞いています。
相手の話にじっくりと耳を傾ける
聞き上手であり、相手の伝えたいことを最後まで集中してしっかりと聴く、という特徴もあります。
頭の回転が早い人の中には、相手の話の展開が見えたら先回りをして話し始めたり、途中でさえぎって質問をする人がいますが、共感力を高めるうえでは阻害要因になるので、できるだけ避けるようにしましょう。
楽しいことも辛いことも含め、様々な経験をしている
「共感」というのは、自分自身の過去の様々な経験に照らして、相手の心情を推察することです。
共感力がある人は、楽しい経験だけでなく、辛い経験やそれを乗り越えてきた経験をたくさんしてきた人も少なくありません。
経験の「引き出し」が多い分、相手の状況と似ている自分の経験を重ね合わせやすくなるため、相手の心情をリアルに想像しやすくなります。
共感力がない人の特徴
反対に、共感力が低い人にはどのような特徴がみられるのでしょうか。
他者への関心が弱い
共感力が低い人は、周囲の人への関心が低く、他者が今どのような気持ちにあるかなどを知ろうとはあまり思いません。
相手が話していても、「ふ~ん、そうなんだ」といった形で会話が途切れたり、「私はこうだよ」といったように気づけば自分の話をしています。
常に自分を中心に物事を考えてしまっているとも言えるでしょう。
自分の意見を挟みながら聞いている
相手の話を聞きながらも、「いや、自分はそうは思わない」とか、自身の主張や価値観にそぐわない場合に「なんでこんな風に考えるのかな」とか、自分の意見を挟みながら聞いてしまう。
そんな状況に心当たりがある人は、本当の意味での共感はできていないと思った方が良いかもしれません。
共感力を高めるうえでは、変に自分の意見を挟まずに、目の前の相手の言葉に集中してじっくりと聞くことが大事です。
共感力が活かされるビジネスシーン例
共感力は、ビジネスを効果的かつ円滑に進めるうえでも役立ちます。
同僚やクライアントとの信頼関係の構築
同僚や後輩、とくに部下との信頼関係を築くうえで役立ちます。
共感力が高いと、相手の気持ちに本当の意味で寄り添って接せることができますし、相手の中で生じる「寄り添ってくれている」という感覚や「この人は分かってくれているな」という安心感が、信頼につながっていきます。
同様に、クライアントや取引先とのコミュニケーションにおいても、共感力が高いと「相手が何に困っているか?」などを把握しやすくなり、提案等の精度が上がります。
また、「この人は分かってくれている」という安心感を相手が抱くことによって、「この人なら話してもいいかも」と信頼をベースに新たな提案につながるような貴重な話をしてもらえる可能性が高まります。
リーダーシップ能力の向上
変化が激しく先行きが不透明な時代において、求められるリーダーシップのあり方も変わってきています。
とくに近年では、『サーバント・リーダーシップ』と呼ばれる「共感」と「傾聴」を重視するというリーダーシップスタイルが注目されており、共感力を高めることはリーダーシップスキルを上げることにつながります。
サーバント・リーダーシップについては、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ合わせて読んでみてください。
顧客・ユーザー理解の促進
マーケティング担当や営業担当にとって、顧客の心情に寄り添い、ニーズやインサイトを的確に理解することができるのは、大きな強みになります。
顧客に刺さる施策や企画の立案ができようになるため、仕事の精度や生産性を高めることができます。
共感力を高める方法
日常的に取り入れやすい共感力を高める方法を5つほどお伝えします。
他者へ興味を持つ
やはり、「人間に興味を持つ」ということが、何よりも重要です。
これは別に、人間を好きにならなければダメという話ではなく、「人間ってどういう生き物なのかな?」という科学的な観点からでも良いので、まずは自分以外の周囲の人に興味を持つことから始めてみましょう。
気持ちを読み取る練習をする
映画や小説を観たり読んだりしながら、登場人物の気持ちを読み取るトレーニングを行うことも、共感力を高めていくうえでおすすめです。
登場人物の心情は、単に発せられるセリフだけでなく、状況描写や行動にも現れています。
そうした様々なことをヒントにしながら、「なぜあの人物はあのようなリアクションや行動をとったのか?」「どのような気持ちや心理状態だったのか?」「なぜあのような言葉を発したのか?」などを推察していきましょう。
また、先ほど「共感力が高い人は経験の引き出しが多く、その分相手との会話で共感できるポイントも多い」と述べました。
一人の人が経験できる幅や量にはどうしても限界があるため、それを補うためにも、映画や小説を通じて登場人物に感情移入し「疑似体験」することも、共感力を高めるうえで役立ちます。
苦手な人とあえて深い話をしてみる
「ちょっとこの人苦手だな」「嫌いだな」と思っている人と一度しっかりと向き合ってみることもおすすめです。
そうすることで、「この人はこういうことを感じていたのか」「このような経験をしたために、このような価値観を持っているのか」など、みえていなかった側面に気づくことができ、今までは「苦手」という理由で避けていた人のことも理解しようという意識が芽生えてきます。
「分析モード」のスイッチをオフにする
相手の話を聞きながらも、つい頭の中で自分の意見を挟みながら聞いてしまう傾向にある人は、「今は分析モードに入らない」と意識的にスイッチを切り替えて、目の前の相手の感情に寄り添いながら聞くようにしてみましょう。
共感できない場合は、理解に努める
人間なので「すべてに共感できる」という人はいません。
当然、すべてに共感する必要はありませんし、共感ばかりでは自分の意見や軸というものを見失ってしまう可能性もあります。
「共感できないな」と感じる時は、ある種の割り切りも大事で、理解する方へ切り替えるようにしてみてください。
さらに、「なぜ自分はこの人やこの考えに共感できないのか」と考えることで、自身の大事にしている価値観などに気づくきっかけにもなります。
まとめ
共感力というのは、コミュニケーションの原点です。
「他者と自分は違うことを強く意識しながら、「相手がどのような人なのか」を知ることに喜びや楽しみをもって接してみる。
そのようなことからぜひ始めてみてください。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。