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「相手を傷つけるつもりはなかったのに、つい感情をぶつけてしまった」
「勉強すると決めたのに、気づいたらスマートフォンを触っている」
程度の差はあれ、誰しも自身の感情や行動をコントロールしきれずに失敗してしまったという経験はありますよね。
自制心が強いと、プライベートはもちろん、仕事でも大きなメリットがあります。
今回は、自制心が強い人の特徴と、高めるコツを解説します。
自制心とは
自制心とは、一言で言うと「自分を制御する力」、つまり、自身の感情や行動をコントロールする力のことです。
外からの刺激に対して反射的に反応しない力や、流されない力、誘惑に負けない力とも言い換えられます。
自制心がない人の特徴
いくつか特徴的な行動パターンが見られますが、代表的なものをご紹介します。
特徴①:感情のコントロールができない
ポジティブな感情なら良いのですが、怒りや悲しみといったネガティブな感情などをすぐに表情や態度に出してしまったり、衝動的に相手にぶつけてしまいます。
特徴②:物事が継続できない
「今度こそ頑張ろう」と勉強やダイエットの目標を立てても、「面倒だな」「楽しくないな」いう気持ちが勝って、途中で挫折してしまいます。
特徴③:誘惑に負ける
特徴②にも関連しますが、つい楽な方へ流されたり、誘惑に負けてしまうという特徴があります。
例えば、「真夜中にアイスを食べてはいけないよな」と思いつつも、食べてしまうといったものです。
自制心がある人の特徴
反対に、自制心がある人に見られる特徴をご紹介します。
特徴①:表に出す感情の波が少ない
感情の波が少ない人は2種類あります。
- A:感情の起伏はあるが、そのまま表に出さないように自身をコントロールしている
- B:そもそもの感情の波がおだやか
怒りや悲しみといった感情は時に大きな原動力につながるので、そういった感情の起伏があることは、けっして悪いことではありません。
いわゆる「自制心が強い人」は、このAパターンに当てはまります。
特徴②:意思の力が強く、目標を達成できる
目標に向かっている途中で、「面倒だな」「楽な方に流されたい」という気持ちが芽生えても、それらを押さえる力があるので、途中で挫折せず成し遂げることができます。
特徴③:集中力がある
雑念に振り回されることが少ないので、目の前のことに集中し取り組むことができます。
ビジネスにおいて自制心を高めるメリット
自制心が高いと、ビジネスにおいて大きなメリットがあります。
メリット①:成果を出しやすい
目標に向かってまっすぐと進むことができるので、成果を出しやすくなります。
メリット②:周囲から信頼される
表に出る感情の起伏の波が少ないと、「いつでも穏やかな人だ」と周囲も安心して話しかけることができ、信頼をよせてもらいやすくなります。
また、有言実行できちんと任された仕事をこなすので、仕事の能力面でも信頼されます。
メリット③:心の健康につながる
感情に振り回されすぎると、やはり心も疲れてきます。
また、感情のままに相手にぶつかり傷つけてしまうと、相手のリアクションによって、また自分自身も傷ついてしまいますよね。
感情を制御し、そういったことを事前に防いでいくと、最終的に自身の心の健康にも良い影響を与えます。
自制心を鍛える方法
自制心はすぐに身に着けられるものではありません。
紹介する3つの方法を、意識的に日常に取り入れてみてください。
方法①:自分との約束を守るための仕組みを作る
自制心を鍛えるうえで最も難しく、そして大事なものは「意志力」です。
意志力は、一朝一夕で高めることができるものではありません。
さらに、強い意志を持って目標を立てたとしても、やはり日々忙しくしていると、忘れていってしまいます。
なので初めは、物理的に自分の意識に浮上させる仕組みを作ることをおすすめします。
例えば、よく使用するパソコンに意識すべきことを書いたメモを貼っておいたり、朝起きる時の携帯のアラームにメッセージを入れておいたり。
私自身も、そういった努力を積み重ねながら意志力を鍛えていきました。
方法②:失うものに目を向ける
「自制心を持たないとどうなるか」という、ホラーストーリーを意識する方法です。
その感情を表に出すことは、中長期的に損なのか、得なのかを考えてみましょう。
例えば、私は若い頃、感情のまま、要は怒りのコントロールが上手くできず、人事考課で損をするということが多々ありました。
そうすると、周囲からは「感情のコントロールができない残念な人」という評価をされてしまうんですよね。
若いうちはまだいいかもしれませんが、そう見られ続けた後、「自分は一体どうなるんだろうか。本当に本当に残念な人になってしまうのではないか」とすごく怖くなりました。
なので、今この瞬間だけでなく、そういった先のことを考えて、今の行動を選ぶという意識が大事です。
方法③:考えや価値観の違いを受け入れる
人間関係での怒りや悲しみは、「相手に期待していること」と現実とのギャップにより生じます。
相手の気持ちや行動を完全にコントロールすることはできません。
しかし、自分自身をコントロールすることはできます。
「相手には相手の世界がある」ことを強く自覚し、相手に期待していたことと異なる結果でも、「相手にはこういった事情があるのではないか」と冷静に考えてみる方向へシフトしてみましょう。
まとめ
ビジネスパーソンとしての自制心は、ある一定の年齢以上になってくると、最も培っておくべき能力です。
日々の努力によって鍛えることができるので、ぜひ取り組んでみてください。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。