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20代を悩ませる市場価値というビッグワード

20代を悩ませる市場価値というビッグワード

目次

キャリアの文脈でよく耳にする「市場価値」という言葉。
キャリアチェンジが必然となるこれからの時代、感度の高い20代の若手社員を中心に自分の市場価値に対する意識が高まっています。

その一方で、「目の前の仕事を頑張ってこなしているが、市場価値は上がっているのだろうか」「そもそも自分の市場価値が、低いのか、高いのか分からない」など、「市場価値」というつかみどころがない、抽象度の高い概念(私が教員を務めるグロービス経営大学院では「ビッグワード」と呼びます)に困惑する様子も見られます。

そこでこの記事では、市場価値について深掘って考えていきます。

「このままでいいのか」というモヤモヤ

ここで、とある若手社員が抱えている「モヤモヤ」をご紹介します。

いまの会社に勤めて早5年。
与えられた仕事にがむしゃらに取り組み続け、安定した成果を出してきた。
自信もついてきた。
先輩に褒められる回数が増え、後輩から頼られる機会も少なくない。
今のやりがいは、チャレンジ要素を含む新しいプロジェクトを成功させることだ。
社内の評価は悪くない。
給与も毎年着実に上がっている。

それでも日増しに大きくなるこのモヤモヤは、いったいなんだろうか。
大学時代の友人は最近、ベンチャー企業に転身したようだ。
同期の1人は、会社に申請し副業を始めたらしい。
SNSでも、知人の新たな挑戦を伝える投稿がやけに目につく。

果たして自分は、このままでいいのだろうか。
今のキャリアの延長に、なにがあるのだろうか。

自分の市場価値で悩む20代は増えている

おそらくこの記事を読んでくださっている皆さんも、仕事に一生懸命取り組み、ご自身のキャリアと真剣に向き合っている方が多いのではないでしょうか。
先ほどの「このままでいいのか」と漠然としたモヤモヤを抱えている若手社員と、全部とは言わずとも「部分的に自分にも当てはまるな」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

市場価値で悩むのは当然

今、「自分のキャリアに市場価値はあるのだろうか?」と悩む20代が増えていると感じます(年代問わずかもしれませんが)。
「そんなことを意識する前に目の前の仕事に集中しろ!」と一蹴されるような話では決してなく、極めて健全で有益な問いかけと言えるでしょう。

人的流動性の高まりと、働き方の多様化

一昔前は、「いかに社内価値を高めるか」がキャリアの重要なテーマでした。
所属する組織に勤め続けることが前提となっており、組織内で使えるスキルを磨き、社内の評価を得ることが、そのまま自らのキャリアの価値を高めることに繋がっていました。

ただ、この先はどうでしょうか。
例えば、経済はグローバルで縮小傾向にあり、組織や事業の寿命は短くなり、良くも悪くもテクノロジーの社会実装は加速していきます。
当人の意向とは関係なく、人生で大きな想定外のキャリアチェンジが複数回訪れる時代になるでしょう

また、たとえ一社に勤め上げることができたとしても、その選択が全てではなくなりました。
「様々な種類の仕事を経験する」「多様な環境で自分を試す」「節目節目の価値観で働き方を選ぶ」など、柔軟でしなやかなキャリアを実現できる可能性は格段に高まっています

「キャリアチェンジを余儀なくされる消極的理由」と、「自らの生き方を主体的にデザインする積極的理由」の両側面から、20代が市場価値に意識が向かうのは必然なのでしょう。

「市場価値」という青い鳥

さて、ここまで当たり前のように「市場価値」という言葉を使ってきましたが、そもそも「市場価値が高い人」とは、どのような人を指すのでしょうか?

市場価値が高い人とは、企業が求める成果を出す人

市場価値が高い人とは、一言でいうと「企業が高い報酬を払ってでも欲しい人材」のことです。
企業が高い報酬を払いたいと思う理由は、その人材が企業が目的を達成するために必要な成果を出してくれるからです。
報酬は投資なので、成果という見返りが見込めるのであれば投資をするのは当然です。

ただし、そのような人材が溢れるほど存在していた場合、わざわざ企業は高い報酬を払いたいと思うでしょうか。
おそらく、時間経過と共に値崩れしていくでしょう。
それであれば、企業が求める成果を希少性高く出し続けることが条件となりそうです。

唯一絶対の固定的な「市場価値」はない

ここで重要なことは、

  • ①:企業の目的は企業ごとに存在する
  • ②:希少性は需要と供給のバランスで定義される

という2点です。

つまり、唯一絶対の固定的な「市場価値」などは存在しないということです。
この2点をきちんと押さえておかないと、市場価値という"青い鳥"を漠然と追い続けてしまうことになりかねません。

まずは、自分にとって意味のあるキャリアドメインを定めよう

事業ドメイン」という考え方があります。
簡単にいうと、「事業を展開する領域」のことです。
ビジネスで自社がどのような価値を提供するかを定めるには、まずドメインを定める必要があります

この考え方は、キャリアでも使えます。
ここでは仮に、自分がキャリアを展開する領域のことを「キャリアドメイン」と呼んでみます。
キャリアドメインが定まると、市場価値という概念が、ようやく輪郭を持ち始めるのではないでしょうか。

「モヤモヤする」のは、キャリアドメインが定まっていないから

例えば、一流のAIエンジニアとして生きていく場合には、PythonなどのAI言語や機械学習やディープラーニングの知識、数学的・統計的な分析力、データベース運用、脳科学の知見などが市場価値を高めてくれるでしょう。
一方で、そのドメインでキャリアを展開しない場合には、時代に流され中途半端にそれらをかじったとしても、キャリアの市場価値は上がりません(当然、学んだ内容それ自体は無駄になりません)。

一般的な唯一絶対の固定的な市場価値が存在しないとするならば、自分にとって意味のある個人的な市場価値を見極めることが重要です。
それは、キャリアドメイン、つまり自分がキャリアを展開する領域を定めることで見えてくるものではないでしょうか。

「市場価値が気になってモヤモヤする」という方の多くは、自分のキャリアドメインが定まっていない可能性が高いとも考えられます。
ドメインが定まると、自分の価値を自分で判断できるようにもなるので、モヤモヤを突破し、価値向上あるいは価値提供のアクションを起こすための第一歩を踏み出すことができるようになります。

20代の市場価値とポータブルスキル

一方で、これだけ環境変化が激しくキャリアの流動性が高い社会で、キャリアドメインを定めることは簡単ではないでしょう。
相対的に経験値や視野の狭い20代のうちに安易に定めてしまうことで、キャリアの広がる可能性を狭めてしまうリスクもあります。

ポータブルスキルを鍛えておいて損はない

そこで注目されているのが「ポータブルスキル」です。
ポータブルスキルとは、時代や働く環境(業種や組織など)が変化をしても持ち運び可能な汎用性の高いスキルのことです。
A社のB業務にしか使えないといった「組織固有スキル」の対になる概念です。

では皆さんは、どのようなスキルが「ポータブルスキル」に該当すると考えますか?
仮に皆さんが、今とは全く別の業種・職種にキャリアチェンジしたとき、どのようなスキル・資質が活かせると思いますか?
少し考えてみてください。

さあ、どのようなスキル・資質が頭に浮かんだでしょうか。
私が登壇するキャリアセミナーでも参加者にディスカッションしていただきますが、毎回ある点で共通した資質が語られます。
それは、極めて「基礎的な資質」だということです。

具体的にどのようなスキル?

ポータブルスキルが基礎的であることは、よくよく考えれば当たり前です。
基礎は、あらゆる仕事の土台となる汎用性が高いものだからです。
例えば、課題解決力、コミュニケーション力、リーダーシップ、育成力、企画力などが挙がります。
最近では、ITリテラシーやオンラインコミュニケーション力、文章(言語化)力などを挙げる方も増えてきました。
繰り返しますが、概念の意味合いは時代と共に変わります
ポータブルスキルという概念においても、これからの時代のポータブルスキルは何かを自ら考えることが重要です。

高いレベルまで鍛えることで価値が高まる

ポータブルスキルは、基礎的なスキルであることがわかりました。
それであれば、「全員が持っているスキルなので、本当に価値があるのか?」と思うでしょう。
その通りです。
一般的なスキルを一般的なレベルで保有しても価値になりません。
一般的なスキルを「高いレベル」で保有するからこそ、価値になるのです。

これからの時代は、基礎から逃げず、基礎を侮らず、基礎を高いレベルに磨き上げることが差を生みます。
変化の時代が、変化に揺るがない本質的な力を求めています。
キャリアドメインが定まっていない方は、未来に備え、高いレベルのポータブルスキルを磨き上げることをおすすめします。

☑『ポータブルスキル』の詳しい鍛え方は、こちら

MBAは究極のポータブルスキル

私は、グロービス経営大学院という社会人向けビジネススクールで教員を務めています。
MBAと聞くと、経営者あるいは起業したい人が学ぶ専門的なプログラムと思われがちですが、私は真逆で、究極のポータブルスキルだと考えます。
実際に、体験クラス&説明会で参加者の方から、ちらほらと「MBAは専門的なスキルではなく、ポータブルスキルだということが分かった」という感想を最後にいただきます。

MBAで学ぶビジネスのルールは、ビジネスという枠の中でキャリアを築いていく方にとっては極めて汎用性が高いものです。
ルールを理解することは、皆さんが働く前提を支え、「ビジネスの原理原則=本質」を捉えることに他なりません。
正解のない変化の時代こそ、「ルール=本質」にさかのぼりゼロベースで考える力が求められます
その重要性は、業界・組織・職種に依存するものではないことは、言うまでもありません。

この記事を読まれている皆さんも、現在もこの先も、何らかの形でビジネスに関わりながらキャリアを歩まれる方がほとんどでしょう。
それであれば、早いうちにルールを知っておいたほうが、上手く立ち回れますし、楽しく働けます。
チャンスも巡ってきますし、成果を出すことができます。

まとめ

キャリアのドメインが定まっておらず、モヤモヤしている。
明確にキャリアの方向性も決まっていない。
それでも、自分を成長させて社会の役に立ちたい。

そのような気持ちをお持ちの方は、ぜひ一度グロービス経営大学院の『無料体験クラス』に参加してみてください。
随時オンラインにて開催しており、「変化の時代、正解が分からないので、王道を学びに来た」と、参加される20代の方も多くいらっしゃいます。
貴重な時間をモヤモヤと共に過ごし足踏みするよりも、皆さんを前に推し進めてくれるはずです。

(▼日程一覧はこちら)

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大切なことは、キャリアドメインを定めること。
定まらない/定めないのであれば、ポータブルスキルを高いレベルで磨き上げること。
市場価値という幻想と謎のモヤモヤに目隠しをされ、足踏みすることだけは避けてください。
皆さんは20代の貴重な時間を、どのように使いますか?

著者情報

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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