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これからの時代は、自分の人生の舵を、自ら取っていく重要性が増しています。
今回は、「自分が生きていく方向」を見つけるためのヒントをご紹介します。
なぜ人生のコンパス(志)を持つことが重要なのか?
経済発展が著しかった時代は、会社や上司が次々とテーマを与えてくれ、それにただひたすらに取り組めば、目標を達成していくことができました。
そして、そのプロセスの中で、精神的な充足感も比較的得やすかったのです。
しかし、今は「VUCA時代」と呼ばれ、テクノロジーの劇的な進化により、あらゆる分野が全く予想できないほど、大きく変化しています。
一方で、人間の平均寿命は長くなり、長期のキャリアを考えなければならなくなりました。
このような時代だからこそ、会社に自分の人生をゆだねることなく、自らの足で立ち、自らの生き方を決めていく重要性が高まっています。
自ら何かをつかみに行かなければ、誰も何も与えてくれません。
これからは、自分起点の「人生のコンパス(志)」を見つけることが大事です。
志とは高尚なもの?
皆さんは「志」と聞いて、どのようなイメージを持たれますか?
「志を持とう!」と言われても、ハードルが高く感じられたり、「ピンとこない」と思われる方が多いかもしれません。
それは、多くの人が志を「非常に高尚なもの」「壮大なもの」と思っているからでしょう。
志と聞くと、坂本龍馬や松下幸之助(現パナソニック株式会社・創業者)といった著名人を思い浮かべる方もいるかもしれません。
そのようなイメージが相まって、志に対してハードルが高く、自分ごと化しにくいと感じる方が多いのでしょう。
しかし、志とは本当に高尚で壮大なものなのでしょうか?
坂本龍馬も最初は大志は持っていなかった
たとえば、坂本龍馬は最初から大きな志を持っていたわけではありません。
もともとは土佐の浪人であって、江戸へ行くことを夢見ていました。
最終的には大政奉還を目指していることから分かるように、志はどんどん変わっていったのです。
志はサイクルによって成り立っている
このように、志は固定的なものではなく、「志が生まれ、育っていくプロセス」があるのです。
そもそも志とは、サイクルによって成り立っており、いつかは終わるものです。
自分の気持ちとは関係なく、時期が来れば終わる志もあります。
たとえば、高校3年生の夏休みの甲子園の大会は、優勝してもしなくても、時期が来れば終わりです。
終わった後に、また次の新たな目標を設定して、それに取り組み始める。
こうして志のサイクルがぐるぐる回ることで、自分の人生が形成されて行くのです。
どんどん小志を積み上げよう
何かに取り組んでいて、それが終わりを迎えた際には、次は何をしようかと自問自答してみてください。
新しい目標を設定できれば、それに「小志」と名付けましょう。
「小志」の積み重ねによって「大志」、すなわち人生でやりたいことのイメージが形作られていきます。
これまでの人生で一定期間、一生懸命取り組んだことがあれば、それはすでに「志」と呼べるものです。
たとえそれが、お母さんにいやいや連れて行かれたプールやピアノといった習い事であったとしてもです。
こうして今までの人生を振り返れば、それまでの人生でも積み上げてきた小志が確実に存在することに気付かれるでしょう。
その延長線上にある何かや、直近で一生懸命になることができた目標を思い出すことで、自分のこれからの方向性が見えやすくなるのではないでしょうか。
まとめ
「自分は何を軸に生きているんだろう」と思い悩むよりも、現状、何かにものすごく没頭できることがあれば、それをぜひ自分の志と呼んでください。
それが終わりのフェーズを迎えたら、また次の志を作って、あまり重たく考えることなく取り組んでいきましょう。
そうすることで、自分の人生でやりたいことのイメージが形成されていきます。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。