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「健全な根回し」で効果的に仕事を進める方法

「健全な根回し」で効果的に仕事を進める方法

目次

会社の中で成果を上げるためには、次の3つのポイントを認識することが大切です。

  • ①「1人で完結する仕事は限られている」
  • ②「それゆえ、他者に協力を仰ぎ動いてもらわなければならない
  • ③「他者に動いてもらうためには、相応の準備をしなければならない

業務を進めていくうえで、3つめのポイント「事前準備=根回し」は非常に重要で、仕事ができる人は根回し上手です。
今回は、根回しを成功させるための方法とコツをご紹介します。

"健全な"根回しとは?

「根回し」という言葉に、ネガティブな印象を持たれる方も多いかもしれません。
自分の利益のために人を操る、というイメージがあるからでしょう。
しかし、「健全な根回し」であれば、どんどんやるべきです
ここでの健全とは、「私利私欲に走らない、社会・会社にためになること」を指します。
「根回し=自分だけの立場を有利に持っていく」という概念を払拭し、まずは周囲とWin-Winの関係を作ることを目的に据えてみましょう。

そもそもなぜ根回しが必要なのか?

会議などのビジネスシーンで、参加者から「話の通し方がおかしい」「事前に聞いていない」といった理由から、内容の良し悪しに関わらず反対の姿勢をとられてしまい、暗礁に乗り上げるという状況をよく見かけます。
人間には、プライドや立場、感情があります
その場でいきなり意見を聞かれても、責任のある立場としてなんとも発言しにくいといったこともあるでしょう。
そのようなことを回避するために根回しは必要であり、それが上手い人はビジネスを前に進めていくことができます。

健全な根回しを成功させる方法

健全な根回しをするために、どのようなステップを踏むべきかをご紹介していきます。

ポイント①:ステークホルダー(交渉相手)の分析をする

特に大きな企業になれば、部署間で利害が相反することもあるでしょう。
取締役以上の意思決定者の意見が合わないこともしばしばです。
なぜなら、関係者が多様な場合には、「目標」「価値観」「見解」の違いが、意見の違いをもたらすからです。
このような場合、当然「微妙な」調整は必要不可欠です。
対象となる事柄に対し、関係者がどのような興味関心を持っているか、または影響力を持っているかを、冷静に分析することが重要です。
つまり、しっかりとステークホルダーを分析するということです。
この分析や見極めなしには、根回しのしようがありません。
例えば、ある改革を実施する際、反対する人が出ることは必然です。
なぜなら、失うものがあるからです。
であれば、正確に「何を失うのか」「失うものの大きさはどのくらいか」「何かで補完できないか」などを事前にしっかり把握しておくことが重要となるのです。
一見面倒な仕事のようにも感じますが、自分自身がどうしても通したい案件であるならば、こうした「ひとてま」をかけることがとても重要です。

ポイント②:人脈を駆使してキーパーソンにたどりつく

実際に根回しをするにあたっては、社内の人脈が非常に重要な意味を持ちます。
たとえば、いきなりトップに根回ししたいと考えても、現実的に無理な場合が多いでしょう。
であれば、「トップに話を入れることができる役員は誰なのか?」「その役員に話を入れられる部長や課長は誰なのか?」と、人脈の連鎖で、梃子(てこ)の力を効かせた根回しをしましょう。
もちろん話の大きさやレベルに応じて、最終的な意思決定者が課長の場合、あるいは部長の場合もあるでしょう。
大切なのは、「意思決定者やキーパーソン」にたどり着く道筋を押さえられているかどうかです。

ポイント③:相手の感情や面子に配慮する

しっかりと会議の参加者を分析して事前に説明しておく、というだけでは根回しとして不十分です。
人間には感情があるので、正論を理路整然と説明すれば、相手は納得するというわけではありません。 相手の気持ちや立場を配慮した伝え方を心がけましょう。

  • ①相手にも感情があることを忘れない
  • ②相手の面子をつぶさない

ポイント④:「下・横・斜め」の根回しもする

キーパーソンに対しては根回しが成功したとしても、現場で反対する人がいて動かないという話は、世の中にいくらでもあります。
つまり、最終的に実行することまでを考えるのであれば、上だけではなく「下、横、斜め」と複数の方向性で根回しをすることも重要です。

事例として、知人の話をご紹介します。
彼は、あるメーカーの工場の生産性改革プロジェクトに、社長の命を受けて派遣されました。
社長肝入りのプロジェクトで行ったにも関わらず、現場では全くの総スカン状態だったそうです。
しばらく彼は、工場の人から口をきいてももらえませんでした。
そこで、いきなりやってもダメだと思い、改革プロジェクトに実際に着手する前に、3週間かけて工場内のキーパーソンを見つけ出しました。
そして、一人ひとり丁寧に説明して回り、かなりの回数飲みにも行ったそうです。
その努力の甲斐があり、組合とも握った上で、プロジェクトを無事に始動することができました。

健全な根回しが上手な人の特徴

根回しが上手な人が実践している3つの特徴をご紹介します。
これらは、付け焼刃でどうにかなるスキルではないので、日ごろから意識して取り組み、身に着けておきましょう。

特徴①:相手の立場になって考えられる

相手の気持ちを動かすためには、「相手に対して思いやりを持つこと」、そして「相手の立場をどのくらい想像できるか」が大事です。
交渉相手の多くは、自分よりも上の立場の人です。
そのような人の立場が想像できるよう、日ごろから経営視点を養うための勉強をしておきましょう。

特徴②:先を見通す力がある

根回しが上手な人は、「相手にこのような説明をしたら、こう反論されるのではないか?」「このような反応をするのではないか?」など、予測しシミュレーションする能力にも長けています。

特徴③:社内に味方を作っておく

相手からすでに良い感情を抱いてもらえていたら、交渉もぐっとスムーズに進みます。
また、キーパーソンを探す際にも、情報提供や紹介をしてもらえるかもしれません。
社内の良好な人間関係構築にも日ごろから気を配っておきましょう。

まとめ

世の中の複雑性はどんどん増しています。
ある仕事に影響力を持つ人の多様性は高まり、関係性も複雑化しています。
グローバル化ということも、この複雑性に拍車をかけることでしょう。
中には、根回し的なことを嫌う(あるいは好む)国民性の人もいるかもしれません。
そのような状況の中で、自らの信頼の残高を上げ、人脈を作り、そして、健全なる根回しをできる準備をしておくことが求められるのです。

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著者情報

田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)

田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)

慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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