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ビジネスパーソンにとって、ロジカルであることは重要です。
ただし時にはロジカルさがハラスメントになる恐れがあり、一般的に「ロジハラ」と呼ばれています。
本記事では、ロジハラの問題点や私たちが気を付けたいポイントをお伝えします。
ロジハラとは
ロジハラとはロジカルハラスメントの略で、正論を突きつけて相手を追い詰めることをいいます。
セクハラやパワハラと同じように相手が心理的に圧迫されて仕事に支障が生じやすいため、ハラスメントの一種と捉えられています。
ハラスメントは受け手が精神的に傷を負うだけではく、能力を発揮できず組織として成果を上げにくくなるという大きなデメリットがあります。
当事者が我慢すればいいという問題ではありません。
ロジカルであること自体は悪いことではない
仕事において、物事を体系的に捉え筋道立てて考えるロジカルさは重要です。
日々の業務から問題点を見つけ妥当な解決策を導き出せるだけでなく、社内のメンバーや顧客とのコミュニケーションでも大いに役立ちます。
ロジカルに物事を説明すると、相手は内容を理解しやすくなります。
自分と相手の認識がズレていたという問題も起きにくくなり、仕事がスムーズに進みます。
ロジカルであることは悪いわけではなく、むしろビジネスパーソンにとって必要不可欠な要素です。
ロジハラの問題点と具体例
では、ロジカルであることが、時にハラスメントになってしまうのはなぜでしょうか。
ロジハラと捉えられてしまうのは、ロジカルに話をした結果、相手を心理的に追い詰めてしまった場面です。
この時の問題点はロジカルだったことではなく、「相手の状況を踏まえていない」話の進め方にあります。
相手の状況とは、仕事の忙しさや難易度、周囲との人間関係、時にはプライベートの問題など様々なことが含まれます。
人間は、今の状況に応じた感情を持つものです。
仕事が忙しい時は焦る気持ちになりますし、同僚との人間関係がうまくいってなければ何日も悩むでしょう。
あるいは家族が入院したといった出来事があれば、常に不安を抱えている状態になります。
コミュニケーションをするときは、このような相手の感情面への配慮も忘れないことが大切です。
ただロジカルに話をしただけでは、相手は納得していない場合も多いものです。
気分を害してしまう時さえあるでしょう。
例えば、部下や後輩から仕事の悩みを相談されたとき、
「あなたの問題点はここにあります。理由はAとBでしょう。つまり、こう行動すれば解決できます。」
と一刀両断に言ってしまってはロジハラになりかねません。
部下の感情を置き去りにしてしまっているからです。
特に、相手から悩みごとを相談された時は、早く解決してあげようと解決策だけを手短に話しがちです。
その一方で、相手はじっくり話を聞いてもらいたかった可能性もあります。
最適な問題解決をしてあげているつもりが、相手の心を追い詰めている場合があるのです。
人間は、誰もが論理と感情の両面を持っています。
論理だけを振りかざすと相手が納得しないどころか、ハラスメントにもなりうることを覚えておきましょう。
ロジハラをしている人にみられる特徴
ロジハラをしがちな人には、いくつかの特徴があります。
まず、仕事を通じて他者より優位に立ちたい、あるいは、自分が正しいと証明したいと思っているという特徴です。
このような人は、コミュニケーションの目的が相手を論破することになりがちです。
実は自分に自信がなく、手っ取り早く自信を持ちたいがために身近な人に正論を振りかざしてしまう傾向があるのです。
また、相手を追い詰めるくらいロジカルに話すことが相手のためだと信じ込んでいる人もいます。
このような人は若手の頃に同じようにされた経験があり、結果として自分が成長できたと思っている場合が多くあります。
良かれと思って正論を突きつけているだけに、その危うさに気づきにくいのです。
自分にこれらの思い当たる傾向がないか、ぜひ一度振り返ってみてください。
「ロジハラをしているかもしれない...」と感じた時に気を付けるポイント
相手に「あなたが言っていることは分かりますが...」と言われたら、ロジハラをしていないか要注意です。
「もしかして自分はロジハラをしている!?」と少しでも感じたら、以下のポイントを実践してみてください。
自分が正しいと思っても、その気持ちはいったん封印しましょう。
相手の感情を想像する
自分の論理が正しいかを考えるのは保留して、まず相手の感情を考えてみましょう。
相手はどのような状況にいて、どのような感情で話をしているのかを想像してみてください。
相手の感情を否定しない
人間はどのような時にも感情があります。
相手の今の感情を否定せず、会話をする前提条件になると理解してください。
「自分の意見を受け入れない相手が悪い」と決めつけてはいけません。
ひどく悩んでいるなどの理由から、頭では理解していても共感できない時もあるでしょう。
相手が納得し、共感する話し方を心がける
コミュニケーションの目的は、相手が話の内容を理解し、納得し、共感することです。
この目的を踏まえると、相手の感情によって話し方を変える必要があります。
例えば相手が悩んでいるようなら、自分が話す前に相手の話をじっくり聞くのが良いかもしれません。
あるいは相手が結論を早く知りたそうであれば、要点のみ話すのが最適な場合もあるでしょう。
同じ内容を伝えるにもしても、相手と場面によってコミュニケーションの仕方を変える必要もあります。
口頭、メール、資料など、伝える手段を変えても良いでしょう。
なぜ自分の会話がロジハラになってしまうのかを考える
ロジハラをしてしまった根本的な原因を考えてみましょう。
相手を論破したい気持ちが心のどこかにあるのではないか、自分が過去に上司から受けた接し方を部下にもしているのではないか、などと自分自身を深く見つめてみてください。
自分と対峙するのは簡単ではありませんが、ロジハラを繰り返さず、組織で仕事の成果を上げるためには大切なポイントです。
ロジハラをされて困っている時の対処法
あなたが上司や先輩にロジハラをされて困っている場合、ひたすら我慢するのはやめましょう。
精神的な病に陥ってしまう恐れがあります。
自分の身を守るためにも、何らかの対処が必要です。
ここでは、いくつかの対処法をご紹介します。
ロジハラをする人と距離をとる
早く手を打てる対処法としては、ロジハラをする人とは必要最低限の会話だけをし、距離を取ることです。
自分を尊重してくれない人と無理に近しい関係になる必要はありません。
ただし組織で仕事をしている以上、すぐに関わりを減らすのは難しいと思います。
そのような場合には以下の対処法をしてみてください。
ロジハラであると本人へハッキリ言う
正論を突きつける傾向がある人は、自覚がない場合も多いものです。
本人へはっきりと「それはロジハラだと思います」と自分の考えを伝えてみてはいかがでしょうか。
伝える際には、お互い人間なのだから論理と感情の両面があるという前提や、あなたが抱いている感情について丁寧に説明しましょう。
ロジハラをする人の上司へ相談する
現実的には最も効果的なのが、ロジハラをする人の上司へ相談する方法です。
上司の上司ともなると近い立場ではないことも多いため、あなたの状況や悩みごとを具体的に認識していないかもしれません。
詳しく丁寧に説明して相談しましょう。
相談を受けた組織のリーダーとしては、部下からロジハラの相談をされたら、何らかの対応を考えるはずです。
メンバーの労務管理には対応しなくてはいけませんし、部下が能力を発揮できない状況では組織として成果を上げられなくなるからです。
相談をするのは勇気が要るかもしれませんが、ひとりで悩みを抱え込まないことも大切です。
まとめ
ロジカルであることは仕事において必要不可欠であるものの、ロジカルなだけでは仕事は円滑に進みません。
他者とコミュニケーションをするときには、論理だけではなく感情面への配慮も欠かせないものです。
論理的思考はビジネスパーソンの強い武器ですが、論理的なだけでは凶器にもなりうることを忘れずに仕事をしていきましょう。
著者情報
御代 貴子
慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。グロービス経営大学院(MBA)卒業。システムエンジニアを経て、株式会社グロービスに入社。グロービスでは法人向け人材育成・組織開発のコンサルティング、グロービス経営大学院オンラインMBAの新規学生募集、アセスメント事業の企画等に従事。人事組織系領域のコンテンツ開発、論理思考領域の講師も担当した。株式会社ゆとりの空間で新規事業企画やコンテンツ開発を担当した後、現在はフリーランスの編集者・ライターとして活動中。
『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略――テクノロジーを武器にするために必要な変革』共訳(ダイヤモンド社)。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。