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テクノロジーの進化やコロナ禍での働き方改革など、社会環境は劇的に変化し、ビジネスパーソンを悩ます問題は枚挙にいとまがありません。
そんな中で本記事は、
- 最近自分の成長が止まっているかも?
- 今まで通り組織に属したままでいいのか?
- 自分の能力は社会から必要とされているのだろうか?
- 自分らしい働き方や生き方って何だろう?
- どうしたら働きがいを見つけられるのか?
といった悩みをもつビジネスパーソンに知って欲しい「プロティアンキャリア」という考え方について説明しています。
プロティアンキャリアとは
「プロティアン」とは
プロティアンという言葉には、「変化し続ける」や「変幻自在な」という意味があります。
この言葉の語源は、ギリシャ神話に出てくる海神プロテウスにあります。
神プロテウスは、火にもなり、水にもなり、必要に応じて変幻自在に姿を変えることができる神でした。
変化に応じて、変幻自在に対応していくキャリア
つまり、プロティアンキャリアとは、神プロテウスのように、社会の変化に応じて、自分の意思で自由に姿を変え、形成していくキャリアのことです。
1976年に、米ボストン大学経営大学院のダグラス・ホール教授が提唱した言葉で、下記のように定義されています。
プロティアンキャリアは、組織の中よりもむしろ個人によって形成されるものであり、時代とともに個人の必要なものに見合うように変更されたものである
ダグラス・ホール著『プロティアン・キャリア』
この定義のポイントは2つです。
- キャリアとは、組織の中ではなく、個人によって形成されるということ
- キャリアとは、変化に応じて個人にとって必要なものに変更できるということ
つまり、プロティアンキャリアは、組織ではなく、個人そのものが社会環境に合わせて変化する生き方のことを指します。
従来のキャリア観との違い
大きく3つの違いがあります。
キャリアの所有者の違い
従来の伝統的キャリアでは、キャリアの所有者は会社・組織でした。
一方で、プロティアンキャリアでは、キャリアの所有者は個人となります。
つまり、組織の中ではなく個人によって形成され、変化に応じて自己意思で変更できるのです。
キャリアの目的の違い
所有者が変わるので、キャリア形成の目的も変わってきます。
従来の伝統的キャリアの目的は、組織内での「昇進や権力」であったのに対して、プロティアンキャリアの目的は、個人の「自由や成長」になります。
キャリアの成果の違い
キャリアを通しての求める成果も異なります。
従来の伝統的キャリアの成果は、組織内での「地位や給料」であったのに対して、プロティアンキャリアの成果は、個人の「自己実現や幸福度」になります。
アイデンティティとアダプタビリティー
プロティアンキャリアを形成する上で、重要な要素となるのが、アイデンティティとアダプタビリティーです。
アイデンティティとは、「自分は何者であるのか」ということです。
アダプタビリティーとは「環境や社会への適応力」のことです。
これをビジネスシーンに置き換えると、アイデンティティとは「ビジネスパーソンとしての自分らしさとは何か」であり、アダプタビリティーとは「組織の変化に対応する力」です。
そして、ビジネスパーソンの悩みのほとんどは、このアイデンティティとアダプタビリティーのずれから生じます。
例えば、自分らしさ(=アイデンティティ)を押し殺して、組織の変化に対応(=アダプタビリティー)すると、組織内での昇進や昇給には繋がるかもしれませんが、「自分のやりたことは何か」と悩むことになります。
プロティアンキャリアでは、このアイデンティティとアダプタビリティーの考え方を変化させます。
従来の伝統的キャリアのアイデンティティは「組織から尊敬されているか」という他人軸の尊重や、その組織の中で「自分は何をすべきか」という組織軸の役割認識でした。
それに対して、プロティアンキャリアのアイデンティティは「自分を尊敬できるか」という自尊心であり、「自分は何がしたいのか」という自己認識・志になります。
また、従来の伝統的キャリアのアダプタビリティーは、「組織の中での柔軟性」という組織内での適応能力だったのに対して、プロティアンキャリアのアダプタビリティーは「仕事に関連する柔軟性」となり、組織ではなく仕事に対しての適応力となります。
このようにプロティアンキャリアは、従来の伝統的キャリアでは確立しにくいビジネスパーソンとしてのアイデンティティを取り戻すことで、自分のキャリアを自分でプロデュースし、主体的なキャリア形成に繋げることができます。
まとめ
プロティアンキャリアは、個人の自律的なキャリアを築く上で重要な概念です。
社会の変化が激しく、変化をしないことがリスクになりかねない時代において、会社・組織が作ったレールの上のキャリアではなく、自分自身で作ったレールの上を、自分自身の力で進んでいくことが必要です。
本記事を参考に、キャリアについて改めて考えことで、皆さんの悩みが一つでも解決できれば幸いです。