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グロービス経営大学院・田久保研究科長によるミニコラム『研究科長の日々のつぶやき』をお届けします。
第6回目のキーワードは、「決断力」。
ビジネスでは、様々な場面において意思決定をしていかなければなりません。
全く五分五分という選択肢に行きついたとき、私たちはどのように決断をしたらよいのでしょうか?
プロ棋士から学ぶ決断力
私は将棋に関してはルールを知っている程度の人間ですが、プロ棋士の羽生善治さんの書かれた本はよく読みます。
テレビなどのメディアでもたまに意見されていますが、訥々と語るその様も含めて、とても魅力的な方ですね。
とりわけ、こちらの『決断力』というタイトルの書籍は、読んだ直後に羽生さんご自身による講演会を聞く機会があり、非常に印象に残る一冊となりました。
グロービス経営大学院で講師をしていると、受講生の方から「上司から『直感』で判断しすぎだ!!と、よく叱られます」といった話を聞くことがあります。
ここでいう、もしくは一般的な「直感」は、「当てずっぽう」ということなのでしょう。
しかし直感について、羽生さんは、こんな風に書かれています。
直感力は、それまでにいろいろ経験し、培ってきたことが脳の無意識の領域に詰まっており、それが浮かび上がってくるものだ。まったく偶然に、何もないところからパッと思い浮かぶものではない。たくさんの対局をし、「いい結果だった」「悪い結果だった」などの経験の積み重ねの中で、「こういうケースの場合はこう対応したほうがいい」という無意識の流れに沿って浮かび上がってくるものだと思っている。
羽生善治『決断力』
経験が積み重なり、そこから染み出た最後の一滴が「直感」
まさに、幾多の対局を戦ってきた羽生さんならではの直感論と思います。
ビジネスにおいても、論理を突き詰め、全く五分五分という選択肢に行きついた時には、このような、経験に裏打ちされた直観力によって決断する力を身につけていきたいと、強く思わずにはいられません。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。