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多くのビジネスパーソンがキャリアについて漠然とした不安を抱えています。「このまま今のキャリアでよいのだろうか」「次のステップに進むにはどうすればよいのか」と考えつつも、日々の忙しさに追われ、具体的な行動に移せない方も多いのではないでしょうか。そんな中、今ますます注目されているのが「キャリアオーナーシップ」という考え方です。
この記事では、キャリアオーナーシップの重要性を解説するとともに、具体的な実践方法について解説します。
キャリアオーナーシップとは?
キャリアオーナーシップとは、「自分のキャリアは自分で責任を持ち、主体的に築いていく」という考え方です。具体的には、会社任せのキャリア形成ではなく、自分自身でキャリアの方向性を考え、それを実現するための行動を積極的に起こしていくことを指します。
たとえば、自分の価値観や強みを見つめ直す、自分の市場価値を高めるために新しいスキルを学ぶ、社内外のネットワークを広げる、次のキャリアステップを見据えた資格取得に取り組む、といった行動がこれに含まれます。
従来のキャリア形成との違い
かつての日本企業では、キャリア形成は多くの場合、会社が主導するものでした。終身雇用を前提に、社員が計画的に配置転換されることで、自然とスキルや経験が蓄積されていく仕組みが機能していたのです。従来の仕組みは、個人の成長を企業がしっかりサポートするという面で大きなメリットがありました。
しかし、現代のビジネス環境では、会社主導のキャリア形成だけでは通用しなくなってきています。たとえば、デジタル化やグローバル化、新しい働き方の普及によって、企業も個人も急速な変化への対応を求められるようになりました。その結果、「指示を待つだけの姿勢」では、キャリアが停滞してしまう可能性があります。
なぜ今、キャリアオーナーシップが重要なのか
キャリアオーナーシップが注目される背景には、以下の3つの大きな変化があります。
テクノロジーの急速な進化
AIやデジタル技術の発展により、多くの職種で求められる能力や役割が大きく変わりつつあります。従来の業務の多くが自動化される一方、新たな職種や専門性が次々と生まれているのが現状です。こうした環境下では、「今持っているスキル」だけに頼るのではなく、常に新しい知識やスキルを学び続ける姿勢が欠かせません。
働き方の多様化
次に挙げられるのは、働き方そのものの多様化です。終身雇用を前提とした従来の人材マネジメントから、職務や役割に基づく「ジョブ型雇用」への移行が進んでいます。さらに、副業や複業を認める企業が増えたことで、個人が複数の場所でスキルを活かし、活躍する機会が広がっています。このような変化は、キャリアの選択肢を豊かにする一方で、自分の市場価値を客観的に見つめ、それを高めていく姿勢がより一層求められるようになりました。
働く人々の価値観シフト
さらに注目すべきは、働く人々の価値観そのものが大きくシフトしている点です。仕事一辺倒の人生ではなく、プライベートとの両立や自己実現を重視する考え方が広まりつつあります。終身雇用や年功序列といった従来の雇用システムに依存するのではなく、「自分にとって本当に大切なこと」を軸にキャリアをデザインする傾向が強まっています。
キャリアオーナーシップを高める4つのステップ
ここまで、キャリアオーナーシップがなぜ重要なのかを解説してきました。それでは、自分らしいキャリアを築くために、具体的にどのような行動を起こせばよいのでしょうか。以下の4つのステップを通じて、自分のキャリアを主体的にデザインしていきましょう。
1.自己理解を深める
キャリアオーナーシップの第一歩は、自分自身を深く理解することです。自分が大切にしている価値観や持っている強み、そして興味を持つ分野を明確にすることで、キャリアの方向性が見えてきます。以下の3つの観点から自己理解を深めましょう。
①価値観を探る
キャリアを考える上で最も重要なのは、自分の価値観を理解することです。たとえば、以下のような問いに向き合ってみてください。
- 仕事を通じて実現したいことは何か?
- どのような環境で働くときに最もやりがいを感じるのか?
- 仕事と私生活のバランスをどのように取りたいのか?
日々の業務の中で「やりがいを感じた瞬間」や「違和感を覚えた場面」を振り返ることで、自分が大切にしている価値観が浮かび上がってくるでしょう。
②強みを見つける
次に重要なのは、自分の強みを客観的に理解することです。これまでの経験や周囲の評価から、次のような点を整理してみましょう。
- 周囲からどのように評価されているか?
- 過去に成果を上げた場面はどんな状況だったか?
- どのような状況や条件下で自然と力を発揮できるのか?
上司や同僚からのフィードバック、過去のプロジェクトでの成功体験なども、強みを発見する重要な手がかりとなります。
③興味関心を探求する
さらに、自分の興味や関心がどこに向いているかを明確にしましょう。たとえば、次のような点を考えてみてください。
- 今の仕事の中で特に興味を持っている領域はどこか?
- 業務外で時間を費やしたいと感じる分野は何か?
- 将来的にチャレンジしてみたい分野はどこか?
日々のニュースや業界動向の中で、とくに目が留まるトピックスを意識的にメモしてみるのも有効な方法です。
2.市場価値を高める
自己理解を深めたら、次は自身の市場価値を評価し、向上させましょう。市場価値とは、自分が持つスキルや経験が、どれだけ社会や職場で求められているかを示すものです。
①現状を把握する
まずは、自分の持つスキルや経験を整理し、現状を正確に把握しましょう。
- 自分が持っている専門スキルはどのようなものか?
- 職務経験の中で具体的にどんな成果を上げてきたか?
- 他の業務や業界でも活用できる汎用的なスキルは何か?
過去の評価シートを見直したり、これまでの上司や同僚からのフィードバックを振り返ったりすることも効果的です。
②目指すべき市場価値を定める
次に、自分が目指すべき市場価値の方向性を考えます。たとえば、次の観点から考えを整理してみてください。
- 現在の職務や業界で、今後どのようなスキルが求められるのか?
- 市場のトレンドや技術の進化に基づき、強化すべき領域はどこか?
自社の事業戦略や業界動向なども参考にしながら、「市場で価値の高い人材」という観点から、自身の目指すべき方向性を明確にしていきましょう。
3.キャリアの方向性を定める
市場価値を把握した後は、短期と中長期という2つの時間軸で具体的な目標を設定し、実現可能な計画に落とし込むことが大切です。
①具体的な短期目標を設定する
半年から1年という短いスパンで、具体的な目標を設定しましょう。たとえば、「新しいプロジェクトでリーダーシップを発揮する」や「資格を取得して専門知識を深める」といった目標が挙げられます。
目標は、「いつまでに」「何を」「どのレベルまで」達成するのかを具体的に定義すると、実現への道筋が明確になります。
②中長期的なビジョンを描く
3~5年後の自分の姿を具体的にイメージし、そのために必要なスキルや経験を洗い出しましょう。
たとえば、「特定分野のエキスパートとしての地位を築く」や「新規事業の立ち上げに関わる」など、具体的な役割を思い描きながら、それを実現するためのステップを検討します。
4.実践と振り返り
目標を設定したら、日々の行動に落とし込むことが大切です。また、振り返りを通じて計画を軌道修正することで、目標を現実のものにしていきましょう。以下の4つのポイントを意識して取り組むことをおすすめします。
①日々の行動に落とし込む
キャリア目標の実現は、日々の小さな行動の積み重ねから始まります。大きな変化を目指す必要はありません。通常の業務の中で少しずつチャレンジを増やしていくことが、成長への確実なステップになります。たとえば、次のような行動が挙げられます。
- いつもより一歩踏み込んだ提案を行う
- 部署を超えたプロジェクトに参加する
- 新しい業務に自ら手を挙げる
重要なのは、こうした行動を「特別なこと」ではなく、日常の一部として定着させることです。「まずはやってみる」という軽い気持ちで始めてみましょう。
②学ぶ習慣をつくる
キャリアを築くためには、継続的な学びが欠かせません。最近では、学びの選択肢が多様化しており、自分のペースや目的に合わせて学べる環境が整っています。
- ビジネススクールやオンライン学習サービスを活用する
- リーダーシップ研修や専門分野のセミナーを受講する
- 勉強会やカンファレンスに参加し、同じ目標を持つ仲間とつながる
また、副業や兼業に挑戦するのも、貴重な学びの機会です。普段とは異なる環境で経験を積むことで、新しい視点や気づきが得られます。日々の生活の中で「学び」を習慣にすることで、自然とキャリアの幅も広がっていきます。
▼自分に合った学びの選択肢を診断してみよう
③客観的な視点を取り入れる
キャリアについて一人で考えると、視野が狭くなりがちです。そこで、様々な立場の人からアドバイスを得ることが有効です。社内の先輩や上司、信頼できる同僚はもちろん、業界の知見が深いメンター、キャリアコンサルタントなど、相談できる相手は意外と多くいます。
特にキャリアの転機を迎えている時や、次のステップに迷ったときには、第三者の視点が新たな気づきをもたらします。また、異なる業界や立場の人との対話を通じて、自分では気づけなかった選択肢が見つかることもあります。
④振り返りを行い軌道修正する
目標に向けた行動を続けるためには、定期的な振り返りが欠かせません。計画通りに進んでいるかどうかを確認し、必要に応じて方向修正を行いましょう。たとえば、次のような問いを定期的に自分に投げかけてみてください。
- 今月挑戦した新しい行動は何か?
- その結果、どのような学びが得られたか?
- 現在の目標に対して、進捗はどのくらいか?
毎月の短い振り返りに加え、四半期ごとの大きな振り返りを行うことで、計画をブラッシュアップできます。振り返りの際には、達成できたことだけでなく、うまくいかなかった点も記録し、次に活かしましょう。
まとめ:キャリアの不安を成長のチャンスに
「現在の部署や役割では十分な成長機会が得られない」「自分の強みや専門性を発揮できていない」など、多くのビジネスパーソンがキャリア形成において課題を感じています。また、大きな変化が非連続的に起こる時代だからこそ、キャリアの方向性が見えず、将来に対して漠然とした不安を抱える人も少なくありません。
キャリアを築く上で大切なのは、「変化を受け入れ、自分で選び取る」という姿勢です。環境がどれだけ変わろうとも、目標を持ち、自分自身の力で未来を切り拓いていくことができます。考えることは大切ですが、それ以上に重要なのは、実際に行動を起こすことです。
完璧な計画を立てる必要はありません。小さな一歩を積み重ねる中で、自分のキャリアは自然と形づくられていきます。日々の中で小さな成長を重ね、変化を楽しみながら、自分らしいキャリアを描いていきましょう。