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音声メディアVoicy「ちょっと差がつくビジネスサプリ」特別対談企画として、エンジニアとしてキャリアを歩んできた末永 昌也(グロービス・デジタル・プラットフォーム CTO)にインタビューを行いました。「エンジニアとして今何が求められているのか」「この先どのようなスキルアップ・キャリアアップを考えていくべきなのか」といったことを前編と後編に分けてお届けします。
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エンジニアのキャリア形成
専門性を高める「テックリード」と組織を率いる「マネジメント」
加藤:それでは、簡単に自己紹介をお願いします。
末永:グロービスで開発組織の統括をしている末永昌也と申します。7年前にグロービスで最初のエンジニアとして入社し、「GLOBIS学び放題」というプロダクトの開発を進めてきました。
現在グロービスはエンジニアだけで100名を超えるほどの大規模な組織になり、拡大に伴って今の役割を担っています。以前は、EdTech(Education×Technology)領域のスタートアップを共同で創業し、CTO(最高技術責任者)として技術面のリードをしていました。
加藤:エンジニアの方はどのようにキャリアを形成していくのでしょうか。キャリアアップのパターンについて教えてください。
末永:主に、専門性を高めていく「テックリード」と、人や組織を率いていく「マネジメント」という方向性が多いと思います。私の場合は、最初に入社したベンチャー企業ではいちエンジニアとして働きながらテックリードを担ったり、自分で起業してからはCTOとして組織を見る立場になったりしました。そして現在は専門性からマネジメント側へシフトし、組織全体を統括しています。
プロダクトマネジャー(PdM)という選択肢
末永:加えて最近では、ジョブチェンジを選択する方も多いという印象です。とくに最近注目を集めているのが「プロダクトマネジャー」なのではないでしょうか。プロダクト作りが広く世の中に認知されている中で、キャリアの選択肢のひとつとしてプロダクトマネジャーを選んでいるのではないかと思います。
加藤:ちなみに、もともとエンジニアの方がプロダクトマネジャーになるパターンが多いのでしょうか。それとも、エンジニアじゃない方が技術のことを学んでジョブチェンジをするのか、どういった傾向がありますか?
末永:これについては、本当にさまざまなパターンがあると思います。実際、グロービスのメンバーの中にも、プロダクトマネジャーとして活躍している人がいますが、その中には元デザイナーだった人もいれば、元エンジニアだった人もいて、ビジネスサイド出身の人もいます。それぞれが今、プロダクトマネジャーとして活動しているんです。昨今、本当にキャリアは多様化していますね。
採用市場で重視されるポイント
ベクトルが「自分」か「外」か
加藤:末永さんは普段、採用の面接をすることも多いと思いますが、プロダクトマネジャーやエンジニアの候補者を選ぶときに、とくにどんなところを見ていますか?
末永:スキルやチームワークなど色々な観点で見ていますが、とくにグロービスの中で私が大切にしているのは、相手が教育に対して興味を持っているかという点です。グロービスは社会的意義のある事業をやっていきたいという想いがあるので、そうした観点を持っているかどうかを重視しています。
言い換えると、自分にベクトルが向いているのか、それとも外にベクトルが向いているのかという観点です。エンジニアの中には「自分の技術力を高めたい」「自分が成長できる場所で働きたい」「面白い技術を扱ってみたい」という理由で転職をする人がいます。しかし、自分の成長だけを重視している人はなかなか定着せず、ほかの会社のほうが成長できると感じたら、すぐに会社を去ってしまう傾向があるんです。
だからこそ、私たちのプロダクトや教育そのものに興味や想いを持ってくれるメンバーと、チームワークを発揮しながら働いていきたいと思っています。
技術力だけでなく「総合力」が重要
加藤:事前に調べたところ、エンジニアのうち約75%は3年以内に転職しているというデータがありました。プロジェクトベースで働くことが多く、成長意欲も高いので、転職を選ぶ人が多いのかなと思っています。
しかし、末永さんがおっしゃるように、教育へのビジョンに共感できるかどうかを重視して採用するとなると、優秀な人材を採用するのは難しくなるのではないでしょうか。
末永: 確かに、技術力が非常に高い人を採用するのは難しいかもしれません。しかし、ここでいう「優秀な人材」をどう定義するか、が重要だと思っています。私たちはスクラム開発という手法を取り入れており、チーム全体としてのアウトプットを重視しています。そのため、技術力だけではなく、コミュニケーション力や考える力、相手を動かす力など、総合力が大事なのではないかと考えていますね。
変化に適応するための開発体制とは
企画から開発までワンチームで動く
加藤:エンジニアの方だけではなく、ビジネスサイドの方とも頻繁にコミュニケーションを取るようなチーム体制なんでしょうか。
末永:そうですね。私たちのチームは、あえてそういったチーム体制にしています。よくあるのは、各分野の専門家がそれぞれ役割を果たす、いわゆる分業制です。企画の人は企画を、デザインの人はデザインを、開発の人は開発を、テスト担当の人はテストを行う、ウォーターフォールみたいな感じです。
しかし今の時代、変化が激しいので、企画からデザイン、開発までワンチームで一緒に動くほうが、価値提供までのスピードがずっと早くなると思うんです。そんな考え方がスクラム開発にもあって、それを大切にしています。
上流段階からエンジニアも関与する
加藤:開発に取り掛かる前の段階、つまり課題を抽出して要件定義し、設計するまでの上流工程においても、エンジニアの方が担当するほうがよいのでしょうか。
末永:私は開発の前段階からエンジニアが関与すべきだと思っています。企画が完全に固まってから関わっても、その段階で提案できることには限界があります。
早い段階から「エンジニア的には、このほうがよいですよ」といった提案ができることで、よりシンプルなプロダクトになっていくと考えています。なので、私たちはスクラム開発の中でも、初期段階からエンジニアが携わり、どの機能を開発するべきかなどの議論に参加しています。
成長するエンジニアの特徴とは
①実務でチャンスを作り出せる
加藤:ありがとうございます。データによると、エンジニア不足は日本全体の問題で、各企業もエンジニアの育成に力を入れているとありました。その中で、末永さんのチームはどんな方法でエンジニアを育てていますか?
末永:色々ありますが、私たちの組織では"勉強会文化"がかなり浸透していますね。毎週のように、何かしらの勉強会や読書会を有志で集まって行っています。個人的に、「半年前の技術はもう古い」という感覚があります。それくらいの速度で世の中は変化しているので、常に新しい知識をキャッチアップすることが大事だというのが、大前提にありますね。
その上で重要なのが、実践の中で経験するということです。積極的にチャンスを作り、プロジェクトを自分の力で進めて成果を出すことで、自信につながる経験を積んでもらっています。
②好奇心や主体性がある
加藤:末永さん視点で見て、成長が顕著だと感じるエンジニアの方には、どのような特徴があるのでしょうか。
末永: やはり「好奇心」が大事だと思います。情報を取れる機会は多いのですが、100人いたら100人ができることではないんですよね。中には本当に最新のトレンドを学ぶことが大好きで、海外のカンファレンスに自費で参加するような人もいます。そのように「新しいことを知りたい」「やってみたい」「自分で実装したい」と考えて、トレンドの最先端を掴みにいけるのは、エンジニアとしての強みだと思います。
あとは、「主体性」も成長していく上で不可欠だと思います。指示待ちではなく、自発的に手を挙げ、新しい機会を作り出していく。そしてしっかり結果を出して、次の機会も任せてもらえるような人はエンジニアとして伸びると思いますね。
加藤:好奇心と主体性は、エンジニアの方に限らずビジネスパーソン共通で大事なことかもしれないですね。