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天職の見つけ方。3つのアプローチと天職に近づくためのマインドセット

天職の見つけ方。3つのアプローチと天職に近づくためのマインドセット

目次

「自分にとっての天職とは、どのような仕事なのだろう」

天職という言葉を用いずとも、そのようなことを考えたことのある人は少なくないでしょう。
仕事はもはや「我慢してお金を稼ぐ手段」ではなくなっています
自分らしい能力を発揮し、イキイキと働く未来は、到達できない理想ではありません。
今回は、天職に近づくための3つのアプローチ方法と、持っておくべきマインドセットをご紹介します。

天職とは

改めて、天職とは何でしょうか。
天職は一般的に、「天から授かった職業」や「その人の天性と一致する職業」といった定義がされていますが、やや抽象的で距離を感じます。
天職という言葉の解像度を高めるために、具体的に定義していきます。

まずは、具体例をイメージして「天職」の輪郭を押さえる

私は長年、マネジメントやキャリアに関する仕事に従事していますが、下記のような瞬間に立ち会ったときに、「天職」という言葉が頭をよぎります。

  • 「今この瞬間、Aさんは心の奥底からこの仕事が楽しんでいるなぁ」
  • 「自分が納得できる仕事ができるまで、Bさんは止めてもこだわり抜くんだろうな」
  • 「Cさんは、この仕事をするために生まれてきたのかな?」

みなさんも「これこそが自分の天職」と思えた仕事や、「この人のこの仕事のことを、まさに天職と呼ぶのではないか」と感じられる場面に遭遇したことや、メディアを通じて目にしたことはあるのではないでしょうか。
「天職」という言葉をより身近に感じるための第一歩は、このように具体的な場面や人を想像し、天職の輪郭を押さえることです。

天職である3つの条件

輪郭を押さえたら次は、より具体的に天職とは何かを考えていきましょう。
組織心理学で世界的に高名なエドガー H. シャイン博士は、キャリアの基盤となる自己イメージ(理想のキャリア像)を明らかにする3つの問いを提唱しています。

  • 1.自分は何が得意なのか
  • 2.自分は何をやりたいのか
  • 3.どのようなことをやっている自分に意味や価値を感じられるか


仮に、これらの問いが明らかにする理想のキャリア像が「天職」だとするならば、天職とは、以下のような条件を満たすものだと言えるのではないでしょうか。

  • 1.才能:自分の才能が存分に活かされること
  • 2.情熱:自分の欲求に適い、自然と情熱が注がれること
  • 3.意味:その営みに自分なりの意味や価値を感じられること

あなたはこれまで、3つの条件を満たすような仕事、あるいは、仕事の瞬間に出会ったことはありますか?
もしあるならば、それらが、あなたの天職を明らかにする重要な手がかりとなります。

天職に近づくための3つの方法

天職は「あなたの天職はこれです!」と占いや適性診断で決まるものではありません。
ここからは、天職に近づくための3つのアプローチ方法をご紹介します。

  • 方法①:天職を見つける
  • 方法②:天職に変える
  • 方法③:天職を創る

方法①:天職を見つける

環境を変えるアプローチ方法です。
私が前職で転職支援をしていた時、環境を変えるだけで、まさに"水を得た魚"のようにイキイキと活躍される方がいらっしゃいました。
それが天職だったかどうかは、究極的にはその方にしか分かりませんが、意味を感じる仕事に移られ、これまで以上に才能を発揮し情熱的に活躍されていたことは確かです。
社会には、無数の仕事があります。
パズルのピースがパチッとはまるように、自分という人間の特性や感性にぴったりはまる仕事が存在してもおかしくはないでしょう。
なので、天職に出会うために、今のキャリアの延長線上にはない「環境を変える」という選択肢を考えることも1つの手段となります。

ただし、このアプローチ方法には2つ注意しておきたいことがあります。

まず1つ目は、理想を環境に求め続け「青い鳥症候群」になることです。
特に、前述した天職の条件に関する自己理解が極端に浅いままで転職をすると、「思っていたのと違った」を繰り返しジョブホッパーになる可能性があります。

2つ目はその逆で、周囲の意見で動けなくなることです。
明らかに自分の才能や情熱がそちらに向き、意味を感じていても、親や友人など周囲の意見に絡めとられ、現状維持に留まります。

これらに対処するために有効なのは、スモールスタートです。
「今の職場で異動や役割拡大ができないか」「副業やボランティアで始められないか」などの可能性を模索し、やってみる。
リスク少なく近しい経験が積めることを探し、試しながら、確信を強めていくことをおすすめします。

方法②:天職に変える

環境は変えずに、自身の取り組み方や姿勢を変えるアプローチ方法です。
例えば、営業の仕事でも、成果の出し方は人それぞれです。
とにかく行動力で数を稼ぐ人もいれば、1件ごとのコンバージョン率を高めることに力を注ぐ人もいるでしょう。
同じ仕事でも、取り組み方や才能の活かし方は、個々人によって異なります。

また、仕事をどのように意味づけるかも、人それぞれです。
意味づけとは解釈であり、自分で決めることができます。
例えば、営業の仕事を、「顧客をに自社製品を買わせる行為」と捉えることもできるし、「顧客の問題解決を提案する行為」と捉えることもできます。
自分自身にとって役に立つ意味づけ、つまり、そう解釈すると力が湧く意味づけをすることによって、現状の仕事が天職に変わる可能性があります

方法③:天職を創る

②③の努力をしても難しい場合に検討すべき、今ある職業にとらわれないアプローチ方法です改めて考えてみると、職に就くということは、今世の中に存在している職業に、自分というユニークな存在を無理やり当てはめることでもあります。
様々な業務のパッケージに名をつけたものが職業で、マスプロダクトともいえるでしょう。
マスプロダクトは安価で手に入るのですが、カスタムメイドほどのフィット感は得られにくいのが常です。
現存する職業にどうしてもフィットしないのであれば、自分で職業をカスタムメイドするという選択肢が生まれます。
存在しない職業を生み出す「起業」や、自分にフィットする仕事を組み合わせる「複業」など、今まさに社会で起こっている動きこそが、この「天職を創る」なのではないでしょうか。

自分にとっての正解を見つけていこう

天職に近づくための3つのアプローチ方法をご紹介しましたが、これらはあくまで「手段」です。
手段に唯一の正解はありません
環境を見つけることが天職に近づく道となる人もいれば、目の前の仕事の取り組み方や意味づけを変えることで、今の仕事が天職だと気づく人もいるでしょう。
「変化の時代は転職をする"べき"」「3年は同じ仕事に取る組む"べき"」「リスクをとって起業をする"べき"」などと、十把一絡げで「べき論」を言われると、うんざりしますよね。
他者に正解を求めることは、他者からの"べき"を求めることになります。
これからの時代、自身のキャリアや人生の選択は、すべて自己責任です。
責任を自覚し、自分で決めていきましょう。

天職に近づくためのマインドセット

①天職は存在すると信じる

みなさんに天職というものが存在するのかどうか、誰も証明することはできません。
同時に、天職が存在しないということも証明することはできません。
証明することができない以上は、信じるか信じないかの問題となります。
どちらを選ぶのも自由です。
しかし私自身は、「天職といわれる理想の仕事がある」と信じて活動した方が、モチベーションも湧き、より良いキャリアに近づく可能性も高まるのではないかと思います。

②自分の心の声「~したい」を優先する

昨日を振り返ってみて、朝起きてから寝るまでの行動をリストアップしてみましょう。
そして、それらを「~すべき」と「~したい」のどちらの原動力で行っていたか、振り分けてみてください。
どれくらい自分の「~したい」を優先できていたでしょうか。

天職における3つの条件は、「才能」「情熱」「意味」であると先述しました。
「~すべき」で才能が発揮できそうでしょうか。
情熱が湧いてきそうでしょうか。
良い意味づけができそうでしょうか。

いずれも難しいのではないかと思います。
「~すべき」の義務をともなう抑制的なモチベーションは、天職とは真逆の方向に自分を向かわせます。
「見つける」「変える」「創る」のアプローチ方法で、人生の「~すべき」を「~したい」に塗り替えていくことが重要なのではないでしょうか。

③職業や仕事を"試着"してみる

やったことのないことに対して、自分にフィットするかどうかは判断できません。
適性があるかどうか、情熱を注げるかどうかは、やってみて初めて分かる部分が多いです。

例えば、文章を書く仕事に魅力を感じる方は多いかもしれませんが、やってみると意外と苦しむ人が多い印象があります。
書きたいことがない、言葉が出てこない、ありきたりの表現しかできないなど、そこには生みの苦しみがあります。
そこで、いきなりライターへのキャリアチェンジに向かうのではなく、まず文章を書いてみる。
ライターという仕事を簡単に試着してみる。
社内にある文章を書く仕事を取ってくる。
クラウドソーシングで受注してみる。
シンプルにブログを始めてみる。
キャリアチェンジの前に、やれることはたくさんあるはずです。
ただじっと待っていても、天職が天から降ってくることはありません。

④偶然の「縁」を大切にする

私が教員を務めているグロービス経営大学院のMBAプログラムの学生で、初めてファイナンスを学び、その奥深い魅力に憑りつかれ、ファイナンスの道に方向転換された方がいます。
受講前には想像すらしていなかったキャリアを、今歩まれています。
これも一つの「縁」です。

そう考えてみると、MBAのプログラムは、天職探しの「縁」に溢れているといえます。
経営を体系的に学び疑似体験することは、仕事を網羅的に理解し疑似体験することに近しいからです。
実務ではまったく繋がりを持てなかった仕事との縁が、生まれる場なのです。

実際に、2020年のグロービス経営大学院の卒業生キャリアアンケートでは、以下のような回答が得られています。

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思い通りにならない想定外の時代で、人生の選択肢を広げ、さらには理想の人生に近づいているという結果です。

今、経験している仕事は、無数にある仕事の一つです。
経営学の大家であるピーター・ドラッカーは、「最初の仕事はくじ引きだ」と言います。
くじ引きで決まった仕事が天職である可能性は、決して高くはないでしょう。
MBA
に限らず、さまざまな仕事との縁を人生に取り込むことそのものが、天職に近づく一歩となるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、天職について考えてみました。
なぜ今、天職なのか。

キャリアセッションの場で、20代の皆さんのキャリア観に触れる機会があります。
そこで感じるのは、妥協なく、理想のキャリアを追究しようという強い意志です。
ややもすると『青い鳥症候群』や『夢見がち』などと揶揄され、「最近の若い者は忍耐が足りん」と言わせてしまうこともありますが、その裏側には「生きることや働くことに対する真摯な姿勢」を感じずにはいられません。
もはや仕事は、「我慢をしながらお金を稼ぐ手段」ではなくなりました。
仕事という概念には、もっと深淵で壮大な意味を込められることに、私たちは気づいてしまったのでしょう。

天職という言葉は、これまで、実現不可能で非現実的なニュアンスを含むものだったのかもしれません。
ただ、今はどうでしょうか。
この先の時代はどうなのでしょうか。
ようやく、誰もが天職と真剣に向き合える豊かな時代が訪れた。
そう都合よく考えることが出発点となり、天職に向かう歩みが始まるのではないでしょうか。

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著者情報

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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