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AIによって将来「なくなる仕事」と「なくならない仕事」の違い

AIによって将来「なくなる仕事」と「なくならない仕事」の違い

目次

近年、「AI(人工知能)によって仕事がなくなる」という話をよく見聞きします。
「自分の仕事は大丈夫だろうか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
本記事では、来たるAI時代への心構えとなくならない仕事について解説します。

AI・ロボットによって50%の仕事がなくなる

2014年、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによって発表された論文『雇用の未来ーコンピューター化によって仕事は失われるのか』は、20年後までに人類の仕事の約50%が人工知能ないしは機械によって代替され消滅すると予測しました。
その後、日本の労働環境にあてはめた野村総研との共同研究では、日本人の仕事の49%が消滅するという見通しが公表されました。
2020年5月に公表されたマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、2030年までに日本中の業務の27%が自動化され、約1660万人の雇用が機械に代替される可能性があると指摘しています。

「本当は何%が代替されるのですか?」という問いかけをよく耳にしますが、数字の確からしさはそこまで重要ではありません。
いずれの調査も、人間の多くの仕事がこの先テクノロジーによって代替されていく未来を描いていることをどう受け止め、どう対処していくかが問われています。

テクノロジーによる仕事の代替、高度化は必然

ただ、1つ押さえておきたいことは「今回が特別というわけではない」ということです。
歴史を振り返ると、新たなテクノロジーの導入による失業は、いつの時代にも繰り返されてきた出来事なのです。

歴史は繰り返される

例えば、第一次産業革命の期間に紡織機が導入されました。
紡織機は、人とは比べものにならない生産性の高さで糸を紡ぎます。
当然、糸を紡ぐ仕事は人から機械へと受け渡されました。
仮に、人と紡織機が真正面から争うことにするとどうなるでしょうか。
紡織機の生産性に追いつくために、人は長時間労働かつ低賃金という条件を飲まざるをえず、不幸な仕事が生まれます。
勝てない勝負を悪条件で続けることになります。

では、人はどうしてきたか。
テクノロジーを使いこなす側に回るか、テクノロジーで新たに生まれた仕事にシフトしてきたのです。

テクノロジーとどう棲み分けていくか

そもそも、テクノロジーとはなんでしょうか。
一つの見方は、人間の能力を拡張するものだといえます。
例えば、メガネは視力を、自動車は移動能力を、センサーは感覚を、PC・スマホは認知を拡張しているといえます。
テクノロジーが人間の能力拡張を担うものである以上、テクノロジーが人間の仕事を代替あるいは高度化、多角化していく未来は必然なのでしょう。
そうであるならば、ここで私たちが向き合いたいのは「テクノロジーとどのように棲み分け、協業をしながら仕事を発展させていくか」ではないでしょうか。

人間が優位になる仕事の領域は?

近い将来、どのような領域の仕事で人間が優位になるのか(AIと棲み分けれるか)を考えてみたいと思います。
未来は誰にもわかりませんが、確からしい未来を想像することはできます。

  • ①マネジメント系
  • ②クリエイティブ系
  • ③ホスピタリティ系
  • ④クラフトマン系
  • ⑤テクノロジー系

マネジメント系

広義には会社経営、狭義にはプロジェクトやチーム、工場・店舗などのマネジメントが該当します。
主には目的や方向性を定める、意思決定をする、責任を取る、人を育てるなど、人間ならではの「意思」や「判断」が問われる領域で価値発揮できるのではないでしょうか。

クリエイティブ系

新しいものや価値を生み出す「創造」の領域です。
事業開発プロデューサーや発明家、映画監督やデザイナーなどが該当します。
AIは、既存の要素を組み合わせたアイデアの量産は得意ですが、そもそも素材がない状況から何かを生み出すことはできません

ホスピタリティ系

ヒト対ヒトの「感情」の交換や、基盤となる「信用」が求められる領域です。
保育士や介護士、カウンセラーやコーチなどが該当します。
顧客となる私たちが、人間によるサービス提供に価値を感じる以上、おもてなし系のハイタッチサービスの価値は見直され続けることでしょう。

クラフトマン系

人間の「身体性」の優位を活かした機械化が難しい作業の領域です。
ピッキングやハウスキーパー、配達員やあらゆる分野の職人などが該当します。
私はかつてナノレベルの超精密研磨技術の開発に取り組みましたが、職人の指先が生み出す精度に驚きました。
人間の身体性は、私たちが想像する以上に強力な武器となります。

テクノロジー系

テクノロジーが核となるのであれば、その周辺に新たな仕事が生まれるでしょう。
大局的な視点でテクノロジービジネス描ける人やデジタル・トランスフォーメーションを推進できる人、高度な技術を有するAIエンジニアなどが該当します。
テクノロジーと共存する世界を実現していく種類の仕事です。

あらゆる領域で代替は起こる

人間が優位になる5つの仕事の領域をご紹介しました。
しかし、1つ念頭に入れておいていただきたいのは、この5つの領域含め、すべての領域において、程度の差はあれテクノロジーへの代替は起きるでしょう。
なぜなら、繰り返しになりますが、テクノロジーは人間の能力拡張に向けて日々進化していくからです。
いずれにしても、ツールであるテクノロジーを使いこなした上で人間としての優位性を発揮していくキャリアの探求が、私たちに求められています。

人余りと人不足が同時に訪れる

歴史を教材にすると、新しいテクノロジーは人間の仕事を奪うと同時に、新しい仕事を生み出します
Youtuberやエバンジェリスト、ドローンパイロット、コミュニティマネージャーなど、数年前にはなかった職種が既に市民権を得ています。
クリエイティブでチャレンジングな人間は、この先もテクノロジーを使って新しい何か創り出していくのでしょう。
労働人口の減少や企業の競争力強化、コロナの影響などが相まって、テクノロジーのビジネス活用はこの数年で加速度的に推進されるはずです。
そのとき私たちは、このような問いを投げかけられるのでしょう。

  • あなたは、テクノロジーを活用し新たな価値(仕事)を創れますか?
  • あなたには、新たに創られた仕事を担う能力がありますか?

この先は、「人余り」と「人不足」が同時に訪れる可能性があります。
変化に取り残され仕事を代替された人が余り、変化に適応し仕事を生み出す/新たな仕事に担える人の不足が起こるでしょう。
急速な業務の高度化により、単純な労働力シフトが効かない背景が、大きな格差を生み出します。
今から私たちができることは、少しでも早く備え始めることだと思います。

来たるAIとの共存社会に備え、高めておきたい「考える力」

先述したように、様々な領域でAIの代替が起こるでしょう。
一方で私たちは、「AIはけっして万能でない」ということも意識しておく必要があります
例えば、これまでにない課題を解決する仕事(=過去のデータがないもしくは不十分な仕事)や、数値化できない人間の感性や経験に基づく創造的なアイデアを生み出す仕事については不得意です。
AIが何か結論を出した時、それは「考えた」のではなく、あくまでデータによる計算結果です。
AIとの共存社会がやってくる中でビジネスパーソンとして活躍していくためには、人間にしかできない「考える力」にフォーカスし、高めていくことが重要です。

「考える力」の詳しい鍛え方については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてお読みください。

関連記事

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これからの時代に必須な「考える力」を身につける5つの方法 来たるAIとの共存社会に備え、人間ならではの「考える力」の重要性が増しています。「考える力」を身につける方法についてご紹介します。

まとめ

近い将来訪れるであろうAI時代への心構えについてご紹介しました。
人間の能力の拡張であるテクノロジーに、人間の仕事が代替されることは必然であり、そして代替は今に限らず歴史上たびたび起こってきました。
今後は、人間がAIよりも得意な仕事の領域が残り、テクノロジーを使いこなす仕事が新たに生まれていきます。

そうしたことを踏まえて、自分にはどのような能力が必要かを考えて、スキルアップや学びによる自己投資を積極的に行い、将来に備えていきましょう。

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著者情報

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

中村直太(グロービス経営大学院 教員)

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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