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私はグロービス経営大学院という社会人向けビジネススクールで教鞭をとっているのですが、先日学生から「漫画はビジネスに役立つのですか?」という質問をいただいたので、答えていこうと思います。
漫画はビジネスに役立つ
これについては、私は大きな声でイエスと言いたいです。
漫画は、日本を代表する、本当に素晴らしいコンテンツだと思います。
考えて考えて、練られて作られている漫画は数多くあります。
たとえば、リーダーシップや人間関係についてなど、ビジネスの観点でも学べる要素は多々あります。
漫画は、ぱらぱらめくっていくと、ざっと読み流してしまうこともあるのですが、一言一言にハッとするような印象的な言葉やセリフがあります。
また、絵もあるので、そのシーンとの情景も相まって、非常に記憶に残りやすいメリットもあります。
名作にちりばめられている学びのエッセンス
私の好きな漫画に、「宇宙兄弟」と言う漫画があります。
ストーリーの面白さはもちろん、自らの志をどうやって作っていくか、リーダーシップとは何か、人間関係はどうやって構築していくべきか、多様な価値観の人達とどのように向き合っていくべきなど、数多くのことを学べます。
グロービス経営大学院の研究プロジェクトでも、数年前に、ビジネスにおいて漫画からどのようなことが学べるかという研究をしました。
その研究は結果として、「名探偵コナンに学ぶ ロジカルシンキングの超基本」という書籍になりました。
この本では、コナンがどのような仮説を立て、どういう論理を立てて問題に取り組んでいくかを分析し、ビジネスに役立つエッセンスを抽出しています。
どんな素材からでも学ぶマインドを持とう
今回は漫画についてお伝えしましたが、結局は、私たちはどんな素材からでも学ぶことができるということが、大事なポイントだと思います。
よく冒頭のように「〇〇から学べますか?」というタイプの質問もいただくのですが、映画やニュース、本、誰かの話など、それを自身の学びにつなげられるかは、学ぼうという自身のマインドと姿勢なのではないでしょうか。
経験からの学びは抽象化する
また、学びの観点で、私が受け持つグロービス経営大学院の授業でも、「経験するだけでは意味がありませんよ。経験しっぱなしでは学びになりませんよ」といったお話をします。
「この経験は自分にとってどんな意味があったのだろう」「何が学べたのだろう」など、しっかりと思い巡らせてみる。
そして、そこでの学びを今後に活かせる汎用的なものにするために、具体から抽象のレベルにもっていき、昇華する。
そういったプロセスをうまく頭の中で回すことができれば、我々は日常のあらゆることから学べます。
「腹落ち」には注意
よくある「腹落ちしました」といった言葉には要注意です。
どんな素晴らしい何かに触れてみても、ただ見ました、行きました、話を聞きました、というだけではダメだ、という感覚はみなさん持ってらっしゃると思いますが、「腹落ちしました」というのは、一見良い言葉のように聞こえるからです。
「腹落ち」は、何か深く納得したと言う意味で使われると思うのですが、私の感覚からすると、「よかったなぁ感動したなあ...以上!」とそのまま流れていってしまうことが多々あるように思います。
まとめ
漫画からビジネスに役立つ要素は多くあります。
そして、漫画に限らず、学びはあらゆる素材や経験から得ることができますので、ぜひビジネスパーソンとして、人間としての成長につなげていってみてください。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。