目次
自分自身のことをマネジメントする「セルフマネジメント力」は、これからの時代ますます重要になってきます。
セルフマネジメントは「心技体」から成ります。
健康でいるように気を配る「体」のマネジメントも大切ですが、今回は「技」と「心」のマネジメントに着目してご紹介します。
人生100年時代に必要な「技」のマネジメント
時代背景を考えると、これからますます「技」のマネジメントが重要になります。
私たちはこれまでに比べて、長い期間のキャリアを考えなければなりません。
70歳まで現役でいることを考えれば、22歳で大学を卒業して以降50年近く働き続けることになるのです。
一方で、会社の寿命は短くなっているため、今後、1つの会社で50年も働くことは、稀なケースになっていくでしょう。
そうした場合、自分が頼ることができるものは、自身の「能力」となります。
市場で必要とされるスキルを獲得し磨き続け、いくつになっても高い意識を持ちながらチャレンジしていくことが、ますます必要になってきます。
能力開発を始めるのに遅すぎることはない
いつから能力開発を始めればよいのでしょうか。
若いうちに始めるにこしたことはありません。
できるだけ早いタイミングでキャリアや学びに対して投資をしておいた方が、人生トータルで得られるものも大きくなるからです。
一方で、時代によって必要とされるスキルや知識は変わっていきますし、人生100年時代、齢を重ねたとしてもまだまだ長い時間が残されていますので、学び続けることはとても重要です。
良い人生を送るために唯一必要な能力は「学び続ける能力」だと、言われています。
現状持っている知識は、テクノロジーの発展と共に3年も経てば陳腐化していってしまいます。
なので、新たに能力を開発し、継続する力こそが、生き残って行くために必須な術なのです。
グローバル競争で勝ち抜くスタンス
ますますグローバル化が進み、ライバルは国内ではなく海外の企業になって行くでしょう。
これからは10億人以上の人口を抱える中国やインドなど、強烈なハングリー精神を持っている国の人々と競争しなければならないのです。
日本の企業も外国人の採用をどんどん進めており、正面を切って彼らとライバルとなる状況が現実味を帯びてきています。
彼らは学問や能力開発を、貪欲に追い求めます。
こうした状況を合わせて考えれば、技のマネジメントに意識を持ち続けたいところです。
リーダーは押さえておきたい「心」のマネジメント
近年、心を痛めて会社に来られなくなる人が社会問題化しています。
政府もメンタルチェックを企業に義務付ける法律をつくりました。
ここからは、心のマネジメントについてご紹介します。
自分の「平常値」を把握する
心の問題は、一度顕在化してしまうとなかなか完治しにくいものです。
そこで大切なのは、重症化させないこととなります。
誰しもが、「明日会社に行きたくないな」「前向きになれないな」などと思った経験があるでしょう。
自分の「平常値」を知っておけば、こうした変化を感じ取りやすくなります。
自分の平常値と著しくかけ離れた時に「あれ、何かおかしいな」と思えないと、たとえば病院へ行くといったアクションに繋がりにくくなります。
適切なアクションをとるために、自分の平時の状況を知ることに注力していただければと思います。
メンバーの心のマネジメントもリーダーの仕事
同様のことが、チームのメンバーについても言えます。
「彼は何か少しおかしいな」「彼女は不安を抱えていそうだな」ということは、彼や彼女のふだんの状況を把握していなければわからないものです。
リーダーやマネージャーがそれらを知らないというのは、決定的にまずいことです。
毎日1分間でもいいので、1対1で立ち話をするように心がけてみましょう。
5人のメンバーであれば、わずか5分で済みます。 その5分すらとれないというのは、ないのではないでしょうか。
メンバーの平時を知るという営みをどれほど真摯に行うことができるか。
これが、心のケアという点においては大切かと思います。
もちろん中には、素人ではわからない、専門家に任せなければならない領域もあります。
必要に応じて病院へ行くことを促したり、一緒に病院へ行くよう誘ったりする信頼関係を、普段から築いておいていただきたいものです。
まとめ
リーダーに限らず、心技体のマネジメントは良い人生を送るために大切です。
特にリーダーとしてチームや組織を率いる方には、自分自身とメンバー両方の、能力開発と心のマネジメントに意識を向けてみてください。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。