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本記事では、リーダーとしての仕事を遂行していくために必要不可欠な「会計から企業を理解する力」についてご紹介します。
企業の会計は、家庭の家計簿
会計という言葉を聞くと、難しく感じる人がいるかもしれません。
しかしシンプルに考えれば、企業の会計を理解することは、家庭における家計簿を理解するようなものです。
収入を把握し、支出を計算し、貯金を含めた家庭の資産、家の資産価値はいくらになっているか...。
こうした家庭における家計簿を、自社に置き換えた場合、皆さんはしっかりと理解できているでしょうか。
最低限押さえておきたい2項目
「細かい会計用語やルールの暗記をしましょう」と主張したいわけでは決してありません。
大切なのは、チームリーダーや組織を率いる立場になった時に、日々の行動が最終的な結果として財務諸表にどんな形で表れてくるのか、ということをざっくりと押さえることです。
ここでは、最低限押さえておいていただきたい項目を2つご紹介します。
まずは「売上高」から
自社の売上がいくらか、すぐに答えられるでしょうか?
売上とは、簡単に言うと「自社の製品やサービスがお客さんに認めてもらえた分量」のことです。
つまり、売上が分からない、ということは、お客さんにどれだけ自社を認めてもらっているのか分からないことと同じことです。
これは、リーダーとして非常に困った状態です。
最低でも過去5年間分くらいの売上は、頭の中に入れておきましょう。
本業によって得られる「営業利益」
また、売上は把握していた場合でも、利益についてはよく知らないという声もよく聞きます。
利益には、経常利益や純利益など様々な利益が存在しますが、特に本業によって得られる利益である「営業利益」は重要な指標です。
「本業によって」というのは、たとえば、自動車会社であれば自動車販売から得られる利益、電機メーカーであれば製品販売から得られる利益ということです。
日々の会議などで数字を見聞きする機会はあるはずですが、なかなか記憶に定着していない、というのが現状ではないでしょうか。
その理由は、自分には関係ない、と心のどこかで思っているからです。
他にもいろいろと大切な数字はありますが、まずは、会社のキーになる「売上」と「経常利益」を頭の中に入れておきましょう。
そして、自分の部署やチームが持っている数字についても、しっかりと把握しておきましょう。
会計の数字は比較が大事
会計の数字を理解する際に一番重要なことは、数字を頭の中に入れるだけではなく、比較できる状態にしておくことです。
例えば、100億円という数字だけを覚えていても、使いようがありません。
昨年の売上は80億円、今年の売り上げは100億円であった場合、両者を比較して売上が上がったことがわかります。
また、自社の売上は100億円、ライバル企業の売上は180億円だとすると、現状の100億円に満足せずに、さらに頑張らなければいけないと考えることができます。
よって、最低限の数字を押さえて、前年や競合との比較を行い、自分なりに意味を考える習慣をつけておきましょう。
まとめ
会計の世界は無限の広がりがありますが、最低限の知識さえ持っていれば、たいていのことは読み取ることができます。
「苦手」というレッテルを貼らず、数字の比較の概念を持ったうえで、最低限の数字を頭の中に入れておきましょう。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。