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社会人にとってプレゼンテーションは、自分が立案した企画や開発した新商品・サービスを実現できる大きなチャンスです。効果的なプレゼンを行うには、話し方や資料作成、構成の組み立てなど、さまざまな要素を押さえる必要があります。
本記事では、プレゼンを成功させるための実践的なコツを、導入から話し方、資料作成、スキルの鍛え方まで総合的に紹介します。
プレゼン成功のためのポイント
よいプレゼンとは「聞き手を納得させ、行動を促すことができるプレゼン」です。特別な話術を身につける必要はありません。プレゼンに共通する基本要素を理解し、しっかり準備を整えれば、誰でも説得力のある発表ができます。
①目的を明確にし、聞き手にとっての価値を提示する
まず、「なぜこのプレゼンをするのか」を明確にしましょう。目的を言語化することで、話の軸がぶれず、聞き手にも一貫したメッセージが届きます。プレゼンの目的は、多くの場合「聞き手の行動を変えること」です。
例えば、
- 提案への賛同を得たい
- 新しいプロジェクトの必要性を理解してもらいたい
- 自分のアイデアから新たな気付きを促したい
といったものがあります。聞き手が得られるメリットを明確に示すことで、プレゼン全体の説得力が高まります。
②聞き手を分析し、ストーリー性と論理で構成する
プレゼンの本質は「話すこと」ではなく「相手に伝えること」です。そのためには、聞き手の立場や関心を徹底的に理解する必要があります。
相手がどのような立場にあり、何を重視しているのか。どんな課題を抱え、どの程度の知識を持っているのか。こうした情報を整理しておくことで、「伝えるべきメッセージ」と「伝え方」が明確になります。
さらに、プレゼンはストーリー性・共感・論理の3軸で構成しましょう。共感を生むストーリーをベースに、データや根拠で裏付けを加えることで、感情と理性の両面から納得を得ることができます。
プレゼンの基本的な構成
効果的なプレゼンには、明確な構成が欠かせません。一般的には「導入」「展開」「結論」の3つのパートで整理すると、聞き手にとって理解しやすく、最後まで集中してもらいやすくなります。
①導入:問題提起・共感を得る
最初の30秒が勝負です。「何を話すのか」「なぜ聞くべきなのか」を冒頭で簡潔に伝えましょう。問いかけやデータなど、印象的な出だしを使うのも効果的です。また、聞き手の課題や悩みに触れて共感を得ることで、「この話は自分に関係がある」と感じてもらうことができます。
②展開:根拠・データ・事例提示
導入で提示した課題や主張に対して、「なぜそう言えるのか」を示すのが展開部分です。結論を先に伝え、その理由や背景をデータ・事例で裏付けていく「結論ファースト」の構成が効果的です。
自分の体験談や業界の共通事例を交えると、説得力と共感の両方を得られます。話の流れに一貫性を持たせ、矛盾や飛躍のない説明を心がけましょう。
③結論:行動・メッセージを訴求
最後に、プレゼン全体を通して伝えたかったメッセージをもう一度短くまとめます。「何をしてほしいのか」「次にどんなアクションを取ってもらいたいのか」を具体的に伝えることで、聞き手の行動につなげることができます。
質疑応答では相手の疑問に丁寧に答え、納得感を深めましょう。最後に感謝の一言を添えることで、印象よく締めくくることができます。
プレゼンを成功させる話し方のコツ
プレゼンでは、内容だけでなく「伝え方」も成果を左右します。いくら良い内容でも、話し方が単調だと伝わりません。ここでは聞き手を引き込むためのコツを紹介します。
コツ①:ゆっくりと声に抑揚をつける
多くの人は、本番になると自覚以上に早口になりがちです。意識的にゆっくり話すことで、聞き手が内容を整理する時間を持てます。
また、抑揚をつけることも重要です。強調したい部分は大きく、補足はややトーンを落として。語尾をしっかり発音することで、自信を感じさせる印象を与えられます。
コツ②:ジェスチャーで印象を強める
言葉だけでは伝わりにくい部分は、ジェスチャーを活用しましょう。「3つのポイントがあります」と指を立てたり、広がりを示す動きを取り入れたりするだけでも、聞き手の印象に残ります。過度にならない自然な動きを心がけることがポイントです。
コツ③:間(ま)を効果的に使う
「沈黙が怖い」と感じる人も多いですが、間はプレゼンにおいて大切な要素です。質問を投げかけた後や、重要なメッセージの前に一拍置くと、言葉の重みが増します。
たとえば「ここで皆さんに考えてほしいのは――」と間を取ると、聞き手は自然と次の言葉に集中します。間を恐れず、意識的に使いましょう。
聞き手を話に引き込むには
聞き手にとって魅力的なプレゼンとは、ただ情報を聞かされるのではなく、「自分事として考えたくなるプレゼン」です。以下のポイントを押さえることで、聞き手の関心を高め、話に引き込むことができます。
- プレゼンの目的とゴールを明示する
- プレゼンの流れを先に共有する
- 前提条件を揃える
- 聞き手にとってのメリットを冒頭で提示する
- 重要なキーワードを繰り返す
- 数字を使って要点を定量化する
- 聞き手の立場に応じた視点で語る
- ゴールやアクションを具体的に伝える
プレゼンの導入部で聞き手を引き付けるコツ
プレゼンの冒頭は、聞き手の注意を引きつけ、「この話を聞く意味がある」と思ってもらうための大事な場面です。ここでは、導入部を魅力的にするための具体的なコツを3つ紹介します。
コツ①:印象的な問いかけや数字から始める
プレゼンの出だしに問いかけやインパクトのあるデータを用いると、聞き手の注意を一気に引きつけることができます。例えば、「私たちは1年で何時間を非効率な業務に費やしていると思いますか?」と問いかけたり、「この施策で年間1,000万円のコスト削減が可能です」といった数字を提示したりすることで、話に引き込むきっかけをつくれます。数字は客観的な信頼性があるため、説得力も高まります。
コツ②:短いストーリーで共感を得る
自身の経験や日常にあるリアルな出来事を取り上げると、聞き手の共感を得やすくなります。例えば、「以前、ある顧客に提案をした際、伝え方ひとつで結果が大きく変わりました」といった短いストーリーは、感情に訴えかけ、聞き手を一気に"自分事"に引き寄せます。形式ばらない語り口で語ることで、親近感が生まれ、プレゼンの入り口がぐっと滑らかになります。
コツ③:聞き手の課題に直接触れる
導入部で聞き手の関心事や業務上の課題に触れると、「これは自分に関係のある話だ」と認識してもらえます。たとえば、「最近、社内でこんな悩みの声をよく聞きます」といった切り出し方や、「こうした課題、皆さんも感じていませんか?」と投げかける方法があります。その上で、「本日は、こうした課題をどう解決できるのかをお話しします」と続けることで、自然な流れで本題へと導くことができます。
プレゼン資料作りで意識すべきポイント
プレゼンの伝わり方を左右するのは、話し方だけではありません。視覚的に理解しやすい資料を用意することも、聞き手の納得感を高めるうえで非常に重要です。ここでは、スライド作成時に押さえておきたい3つの基本ポイントをご紹介します。
ポイント①:聞き手はどのような人かを押さえる
まず考えるべきは「誰に向けて話すのか」です。 聞き手の立場や役職、知識レベル、関心事を想定しておくと、伝えるべき情報の優先順位が明確になります。以下の観点で分析することで、資料にどんなメッセージや情報を盛り込めばよいのかを絞り込むことができます。
- 聞き手はどのようなポジションや立場なのか?
- どのようなKPIや価値観をもっているのか?
- 相手の興味関心ごとは何か?
- 業務上で課題を感じていることはあるか?
- プレゼン内容について、どこまで理解しているか?
- 提案に対してどのような反応をしそうか?
例えば、経営層に向けた提案であれば、全体のインパクトや費用対効果が重視される一方、現場の担当者にとっては具体的な手順や実行性の方が関心の的になります。聞き手の目線を意識した資料設計が、伝わるプレゼンへの第一歩です。
ポイント②:1スライド1メッセージを徹底する
スライドに情報を詰め込みすぎると、「結局何が言いたいのか」がぼやけてしまいます。理想は、1枚のスライドに、1つのメッセージ。「このスライドでは何を伝えるのか?」を明確にしたうえで、必要最小限の情報に絞りましょう。
結論をタイトルとして記載し、要点は3つ以内の箇条書きで示すと、視線の流れが自然になり、理解もしやすくなります。
ポイント③:フォント・色・図の使い方に配慮する
資料の見た目も、聞き手の集中度や理解度に大きな影響を与えます。フォントサイズは最低でも18ポイント以上を確保し、読みやすさを優先しましょう。色の使いすぎは逆に混乱を招くため、使用色は基本3色程度に抑え、強調ポイントだけにアクセントカラーを使うと効果的です。
また、グラフや図を使用する際は「何を伝えたいのか」を補足的な短い文で添えることで、理解がぐっと深まります。見せ方にも丁寧さが表れますので、細部にも気を配りましょう。
見た目にも気を配ろう
プレゼンでは、話す内容や資料と同じくらい、「見た目」も伝わり方に影響を与えます。聞き手は話の内容に入る前に、まず話し手の外見や雰囲気から情報を受け取っています。いわゆる"第一印象"は数秒で決まると言われており、非言語の要素にも配慮することが、プレゼンの成功につながります。
ここでは、見た目の印象を整えるための3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:服装は「清潔感」を意識する
身だしなみの基本は清潔感です。派手すぎず、だらしなく見えない服装を心がけましょう。例えば、シャツにアイロンがかかっているか、靴が汚れていないかといった細かい点も、全体の印象に影響を与えます。
ビジネスの場では「相手に不快感を与えない」という視点が大切です。特別なスタイルを狙うより、シンプルで整った装いが好印象につながります。
ポイント②:表情は「笑顔」を意識する
緊張すると表情がこわばりがちですが、プレゼンでは笑顔を意識することで、場の空気を和らげる効果があります。
笑顔は聞き手に安心感を与え、「この人の話を聞いてみよう」と思わせる力を持っています。意識的に柔らかい表情をつくることが、聞き手との信頼関係を築く第一歩になります。
ポイント③:姿勢は「背筋を伸ばす」
姿勢も、聞き手に与える印象に大きく影響します。背筋を伸ばし、視線をしっかり前に向けて話すことで、堂々とした印象を与えることができます。
反対に、猫背でうつむきがちな姿勢では、「自信がなさそう」「準備不足なのでは?」といったマイナスイメージを与えてしまう可能性があります。また、姿勢が整っていると声も出やすくなり、話し方にも良い影響が出ます。
発表で緊張しないためのポイント
どれだけ準備を整えても、本番の発表となると緊張してしまう方は少なくありません。大切なのは、「緊張しないこと」ではなく、「緊張していても話せる状態をつくっておくこと」です。ここでは、プレゼン前後でできる緊張対策を紹介します。
プレゼン前:本番を想定した準備がカギ
緊張の多くは「本番のイメージが曖昧なこと」によって生まれます。ぶっつけ本番ではなく、できる限り実際の発表環境に近い状態で練習することが効果的です。
例えば、誰かに協力してもらい、聞き手役として座ってもらうだけでも緊張感が再現できます。声のボリュームや話すスピード、伝え方のクセなどを客観的にチェックしてもらえると、改善点にも気づけます。
また、プレゼン会場に事前に入れる場合は、ぜひその場で立ってみましょう。会場の広さやスクリーンとの距離、立ち位置からの見え方などを体感しておくだけで、不安を大きく減らすことができます。
プレゼン中:聞き手の反応に助けてもらう
いざプレゼンが始まると、最初の数分が特に緊張しやすいものです。そんなときは、会場の中でうなずいてくれている人や笑顔で聴いてくれている人を早めに見つけると、落ち着いて話せるようになります。
その人に向けて語りかけるように話し始めると、自信が出てくると同時に、聞き手との距離感も縮まります。ただし、その人ばかりを見続けず、視線を徐々に他の人にも配りながら、会場全体へと意識を広げていきましょう。
プレゼン力を磨くには?
プレゼンテーションは、準備すればすぐに上達するものではありません。スライドの作り方、話し方、構成力など、それぞれにスキルが必要であり、それらは実践の積み重ねによって少しずつ鍛えられていきます。
本や動画などから学ぶことも大切ですが、「できるようになる」ためにはアウトプットの場が欠かせません。実際にプレゼンをしてみて、フィードバックを受け、改善する――このサイクルが成長には不可欠です。
例えば、グロービス経営大学院が提供する「ビジネス・プレゼンテーション」では、実際のビジネス課題をテーマに資料を作成し、発表までを実践形式で行います。学生同士で相互にフィードバックを行うため、自分では気付かなかった癖や強みを知ることができ、短期間でスキルが磨かれていきます。
グロービス経営大学院でビジネススキルを身に付けよう
伝わるプレゼンを行うには、話し方や資料の工夫だけでなく、「話の中身」をどう組み立てるかが欠かせません。その土台となるのが、課題を多面的に捉え、筋道立てて考える論理的思考力です。
例えば、主張を一文で簡潔にまとめ、その理由や根拠を構造的に整理する力は、説得力のあるプレゼンに直結します。また、聞き手の立場から逆算して順序を組み立てたり、論点を分かりやすく提示したりするスキルは、どの職種においても求められるものです。
こうした力を実践的に養う場として、社会人向けの学びを取り入れることも一つの方法です。例えば、グロービス経営大学院では、プレゼンや論理思考、対人スキルを鍛えるための授業が複数開講されています。
- 「クリティカル・シンキング」:問題解決や意思決定のプロセスを通じて、「筋道立てて話す」「わかりやすく説明する」力を磨きます。思考を可視化し、説得力を持って伝える技術が日常の発言にも活きてきます。
- 「ビジネス・プレゼンテーション」:資料づくりから実演までを徹底的に行い、話し手としての表現力を実践的に高めていきます。話の構成や相手に応じた伝え方など、人や組織を「動かす」ための表現力を鍛えます。
まずは、体験クラスを通じて授業の雰囲気や進め方を確かめてみるのも良いでしょう。自分の伝え方や考え方に変化を起こすヒントが、学びの場から得られるかもしれません。
まとめ
今回は、プレゼン資料の作成と発表のコツを紹介しました。
聞き手を徹底的に分析・理解した上で、シンプルかつメリハリを意識し、明日からのプレゼンに活かしていただけると、大変嬉しく思います。
著者情報
高原 雄樹(グロービス経営大学院 福岡校 スタッフ)
北九州市立大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。楽天株式会社にてインターネットショッピングモール「楽天市場」の出店営業、ECコンサルティング、松山支社の立ち上げ、メンバーのマネジメント等を行う。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院福岡校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、チームの責任者として従事。キャリアコンサルタント(国家資格)で得た知識・技能をもとに日々学生のキャリアと向き合っている。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

