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「働くモチベーションがわかない」
「仕事に対してやる気がでない」
そういった悩みを若手社会人の方を中心に、しばしば耳にします。
本記事では、仕事におけるモチベーションの仕組みと高めるための方法を紹介します。
モチベーションとは
一言でいうと、「行動の背景にある心的な原動力」のことです。
やる気の源泉、あるいは人が動機づけられる要因とも言えるでしょう。
仕事のモチベーションが下がる理由
仕事でモチベーションが低下する原因は人によって異なりますが、代表的な理由は7つあります。
- ①職場の人間関係が悪い
- ②成果に対し、正当な評価がされない
- ③業務自体に興味が持てない
- ④給料に不満がある
- ⑤仕事量が多く、精神的・身体的に疲弊している
- ⑥今の仕事を続けることに不安を感じる
- ⑦仕事の自由度が少ない
自身の力ではどうにもならない理由の場合、転職なども選択肢に入ってくるでしょう。
一方で、仕事への取り組み方を変えたり、興味の持てそうな部署への異動願いを出すなど、自分でコントロールしたり行動することで、改善できるものもあります。
仕事のモチベーションを高める方法
モチベーションを高めるためには、「自分自身を知ること」「モチベーションの仕組みを理解すること」が重要です。
方法①:人によってモチベーションは異なることを意識する
何がモチベーション(やる気の源泉)となるかは、人それぞれです。
周囲にモチベーション高く働いている人がいて、「なんで自分はそんな風になれないんだろう」と思い悩む必要はまったくありません。
さらに、複数の要因が複雑に組み合わさってモチベーションに影響を与えているケースも多々あります。
大事なのは、自分自身のモチベーションを知り、高めていくための工夫をしていくことです。
方法②:「動機付け要因」を増やし、「衛生要因」を減らしていく
次に、モチベーションの仕組み自体を理解することが重要です。
初めに全体像が分かっていると、戦略的に自身のモチベーションをコントロールしやすくなるからです。
モチベーションに関する研究で、「ハーズバーグの二要因理論」というものがあります。
この理論では、モチベーションに関わる要素を大きく2つに分類しています。
【動機付け要因】
仕事に対して満足感を感じる要因。
(例)仕事の充実感、達成感、責任、昇進、承認、裁量、自己成長
【衛生要因】
仕事に対する不満をもたらす要因。
(例)上司の管理方法、給与、労働環境、作業時間
この2つの要因はそれぞれ独立したものではなく、連動しています。
例えば、「給与や働く環境(=衛生要因)に不満がなくても、仕事の充足感(=動機付け要因)が不十分」であれば、仕事に対して満足感を得ることはできません。
仕事に対しての満足感を上げるためには、できるだけ動機付け要因を増やし、衛生要因を減らすことの両方に取り組む必要があります。
また、衛生要因の解消ばかりに意識が向いている人も多々見受けられます。
現状の仕事に対して「いまいちモチベーションが上がらないな...」という場合は、動機付け要因を満たすことにもきちんと意識が向けているか、一度振り返ってみましょう。
方法③:「外から内」へシフトしていく
モチベーションには、「外発的動機」「内発的動機」の2種類があります。
読んで字のごとく、自分の外側から与えられるモチベーションが「外発的動機」、自分の内側から湧きおこるモチベーションが「内発的動機」です。
【外発的動機】
報酬や罰則、評価システムや社会ステータスなど。
達成すればボーナスがもらえる、やらないと上司に怒られる、このポジションになれば憧れの的になるなどの意欲で行動している状態。
【内発的動機】
興味や好奇心、成長意欲や自己実現欲求など。
その仕事をやること自体に喜びを感じる、知識や技能を身につけることが楽しい、褒められることや成果を目的としないなどの活動が該当する。
モチベーションを長い期間維持させるためには、「内発的動機」が重要です。
もし仮に、ある特定の活動を外発的動機から始めたとしても、取り組む中で新たな楽しさや喜びを見出し、内発的動機にシフトしていくことができれば、モチベーションを維持し続けることができます。
方法④:「利己」から「利他」を意識する
利己的は「自分のために」、利他的は「誰かのために」という意味です。
科学的な研究で、利己的な動機よりも、利他的な動機の方が持続性が高いことが分かっています。
30~40代の方からよく、「20代の頃は余裕なく焦りばかりで、自分の成長や成果が全てだった。ただ今は、誰かのためになることが、そのまま自分のためとなることを喜びを感じている。」という話を聞きます。
利己から利他へ、まさに仕事のモチベーションの変化が起きています。
モチベーションは、同じ人でも経験を重ねることによって変わってきます。
「今まで一生懸命仕事をし実績を上げてきたけど、最近モチベーションが上がらない」という方は、「利他」を意識して行動してみてはいかがでしょうか。
新たなモチベーションに気づくかもしれません。
方法⑤:モチベーションは複数持とう
モチベーションは、単一ではなく、複数の要素が影響し合っていることも少なくありません。
そして、このこと自体が、モチベーションを維持し続けることに役立ちます。
例えば、勉強のモチベーションが「成長できること」だったとします。
しかし、勉強する中で常に成長が実感できるわけではありません。
成長が停滞しているように感じるタイミングもあると思います。
そのような時、「仲間と一緒に勉強するのが楽しい」「学んだことが実務で役立つと嬉しい」など、複数のモチベーションを行き来できれば、勉強し続けるモチベーションを維持しやすくなります。
すぐにできる!仕事のモチベーションが下がった時の対処法
労働環境がモチベーション低下の原因だけど「今すぐ転職!」とはいかない方や、仕事自体に興味がないわけではないけど停滞期にいるという方に、ぜひ日常で取り入れていただきたい対処法を紹介します。
対処法①:しっかりと休息をとる
慌ただしい毎日に、精神的・身体的に疲弊し、モチベーションが下がっているケースも多々あります。
仕事に一生懸命な人の中には、休息をとることになんとなく罪悪感を覚えてしまう人もいるでしょう。
しかし、オンとオフをしっかりと切り替えることが、後々の仕事のパフォーマンスに良い影響を与えると信じ、「この土日は一切仕事のことは考えないようにする!」と、仕事から離れて思いっきり休息をとるようにしてみてください。
対処法②:尊敬できる人を見つける
「この人みたいになりたいな」と思えるような人を見つけることも、モチベーションを高めるうえで役立ちます。
身近な上司や同僚でもいいですし、著名人でも構いません。
理想の生き方や人生を歩まれている方を見つけてみてください。
対処法③:半年~1年前の自分と比べてみる
「毎日同じような仕事をしていてつまらない」「最近、成長が感じられない」という方は、半年や1年前など、長いスパンで過去と現在の自分を比べてみましょう。
「まったく同じ」という人はいないのではないでしょうか。
その間にあった、初めて経験したこと、新しく得た知識やスキル、価値観の変化など、大小問わず紙に書き出してみてください。
それらの積み重ねで、今の自分があることに気が付くはずです。
一見単調に思える毎日でも、着実に変化しています。
対処法④:仕事に自分なりの工夫を取り入れてみる
「新人の時は何もかもが新鮮で面白かったけど、最近マンネリ化でモチベーションが上がらない。」
そうぼやく若手社会人も少なくありません。
そのような時は、ゲーム感覚で自分なりに目標やテーマを決めて、仕事に取り組んでみましょう。
例えば、「今日はここまでを目標にする」「〇分以内にこの作業を終わらす」「いつもの資料作成だけど、読み手が理解しやすいよう内容や構成を改善してみる」などです。
漠然と仕事に取り組むよりも、達成感が得られます。
対処法⑤:初心を思い出す
モチベーションが高かった時を思い出すというのも1つの手です。
例えば、「この会社に惹かれた理由」や「新人の時の気持ち」を思い出すことで、忘れていた気持ちや目標を再確認することができます。
まとめ
人間ですので、常にモチベーション高く働き続けるということは難しいと思います。
程度の差はあれ、誰しも波はあるのではないでしょうか。
一方で、自分のことをよく理解し、上手くコントロールしながら、長い期間モチベーションを保ち続けることができる人もいます。
まずは、自身のモチベーションが何かを知ることからスタートしましょう。
そのうえで、モチベーションを高めるための工夫を行っていってみてください。
著者情報
中村直太(グロービス経営大学院 教員)
慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。