仕組みや商品に変⾰を起こし、組織を成⻑させる

業界に新しい風を吹かせる

会社や業界を越えたつながりで、
SIer変革という「志」の一歩を。

日鉄ソリューションズ株式会社

瀬藤 亮太さん

グロービス経営大学院2022年卒業

定まった要件を受託開発する存在から、顧客の課題解決や成長に向けてIT戦略を描いて実現する存在へ。「今、システムインテグレーター(以下、SIer)に求められるものは大きく変わってきている」と語るのは、日鉄ソリューションズの営業職として活躍する瀬藤亮太さん。日本ではIT人材の70%がSIerに集中しています。従来の受託開発スタイルから、顧客の経営課題に向き合い、解決していく存在へSIerを変えていくことが、日本のIT人材強化につながり日本を成長させる原動力になる、と瀬藤さんは考えます。そして自らもMBAでの学びを活かしながら、ビジネスIT時代の新たなコンサルティング営業を実践しているのです。また、社外コミュニティー“ENJIN”や“ONE JAPAN”、社内をつなぐ“takibito”といった3つのコミュニティーを運営・参加し、社内外と連携しながら、業界の変革という遥かなる「志」の山を一歩ずつ登り始めています。

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受託開発から、
顧客とともに答えを考える時代へ。

営業職10年目ということで、まさに中堅として幅広く活躍される年代だと思いますが、まずは現在の社内ミッションについて教えてください。

時代が変化する中で、SIerに求められるものは大きく変わってきています。これまでシステム開発といえば、販売や会計システムなど業務に直結している“コーポレートシステム開発”が主であり、顧客側に「このようにシステム化したい」という正解がありました。SIerは要件に沿って間違いのないように開発していればよかったのです。

しかしビジネス課題をITで解決していく時代になると、顧客も何をどうすればいいのか答えがわかりません。そこで経営や成長戦略へコミットするためにITをどう使えばいいか、根本から一緒に考えていくことがSIerの価値に変わってきました。したがって、SIerの最前線である営業の仕事にコンサルティング要素が求められるようになってきたのです。

例えば、顧客が事業や経営戦略で設定した重点目標を達成するために、マーケティングやオペレーション戦略を立案、具体策に落とし込む中でシステム開発など投資の話が出てきますよね。そのタイミングでキャッチアップしてIT 戦略の立案に関わっていくことができれば、これまで以上に顧客の役に立つことができる。当然、ITの知識だけでなく、顧客のビジネスモデルの特性や経営戦略を理解するスキルも必要になってきます。

そういった背景もあり、要件が決まっている受託型の営業だけでなく、現場の最前線で求められるコンサルティング営業を実践しています。また、その経験を活かして部署全体のアカウント戦略を立案したり、後輩の育成を行っています。

SIer業界を変革し、 日本のIT人材の価値を高める。

SIerの新しいスタイルとして、営業職兼コンサルタントを実践する中で、瀬藤さんご自身はどのような想いや「志」を抱いているのか教えてください。

自分自身、今のままの営業では通用しないと痛感した出来事がありました。それは新規開拓で契約いただいた顧客との仕事でした。担当のCIO(Chief Information Officer)の方にも非常に親しくしていただき、「この人のために役に立ちたい」という想いで臨みました。しかし、経営課題からシステム開発へと移行する段階で、顧客の定めた要件をただ聞いてエンジニアに伝えるだけの存在になってしまい、まったく貢献できなかったのです。
もちろん顧客開拓と要件に対する提案を行えば、営業としては十分なのかもしれません。しかし、もっと川上の経営課題を解決するところから関わらなければ、単なる御用聞きであり、SIerとして自分の価値はないのではないか。そう考える一方で、実現するには圧倒的に経営の知識やスキルが不足していました。
なんとかしなければという想いは日増しに強くなり、マーケティングやマネジメントなど経営について体系的に学ぶためにグロービス経営大学院の門を叩いたのです。
また、さまざまなCIOの方と接する中で、ビジネス課題に対して「どうやってITを使えばいいのかわからない」というケースが増えてきました。僕たちSIerが、これまでのように「オーダー通りにしかつくれません」では、顧客を幸せにすることはできない。これは自分や自社だけでなく、SIer全体の大きな課題だと気付きました。
SIer業界全体が、受託開発型から、顧客の経営課題に向き合い、解決できる存在に変わっていく。当然、一人一人に求められるスキルや仕事の仕方はより高度なものが求められますが、それはIT人材としての価値を高めていくことに他なりません。日本ではIT人材の70%がITベンダーに所属すると言われる中で、SIer業界の変革は、IT人材を、日本そのものを強くしていくことにつながっていくはず。その想いは、やがて「SIer業界の構造を変革し、日本のIT人材の価値を高める」という自身の「志」として明確になりました。

社内外を問わず同志とつながり、 変革の輪を。

SIer業界の変革と聞くと非常に壮大なテーマだと感じますが、企業の一員という立場でどのようにして、その大きな山を登ろうとしているのでしょうか。

まだ火種だった「志」を大きくしたのは、大企業の若手中堅社員を中心とした実践コミュニティー“ONE JAPAN”との出会いでした。彼ら彼女らは、所属企業の壁を超えてアイデアを出し合い、すばやくカタチにしながら、イノベーションを起こそうと躍動している。自社の顧客である企業もたくさん参加しており、「顧客がこんなに挑戦しているのだから、自分たちもやらなければ」と大いに刺激を受けました。
一方で自社を振り返ってみると、せっかく7,000名近い従業員がいる企業に入ったのに、せいぜい同じ部署である十数名の仕事しか知らないわけです。「それってもったいなくない?もっとつながろうよ」と思って、飲み会の席などで想いを語っているうちに、だんだん賛同者が増えてきました。
志を同じくするSE、営業、マネジメント層、経営層が集い、タテヨコナナメ フラットにつながり合おうと盛り上がって生まれたのが“takibito”という社内コミュニティーです。“焚き火”は自然と人が集まり、時間や空気を共有できます。「やりたい」と火種を作り、「やろうよ」と薪をくべ、炎のまわりに人が集う。そんなコミュニティーにしたいという願いから“takibito”と名づけられました。職種やキャリアの垣根を超えて700名以上のメンバーが参加。最近では社長と現場の懇親の場や、社員100名以上で新入社員200名を迎えるオンライン懇親の場、また社外とのコラボレーションの場にもなり、まさに焚き火のような存在になっています。
一方、社内で議論するだけでは、SIer業界全体の課題感がわからない。IT人材と呼ばれる人たちがどんな課題感を持ち、何を解決しなければならないかを知らなければ正しい価値提供はできません。
そこで、会社の枠を越えてIT人材が集まるコミュニティーをつくりたいと思って生まれたのが“ENJIN”です。“ENJIN”はグロービスに在学中、同じ想いを持った3名で立ち上げました。グロービス公認クラブとしてIT人材を中心に300名ほどが参加。ビジネスITの世界をどうしていくのか議論を深めたり、昨今ではメンバー同士が会社を越えて新しいビジネスを立ち上げるなどの動きも出てきています。
IT人材が集まる“ENJIN”、顧客視点の“ONE JAPAN”、そして社内の“takibito”。この3つのコミュニティーに主体的に関わることで、課題感がクリアになり、より自分の「志」も研ぎ澄まされていく。コミュニティーの存在が「志」を実現する大きな一歩であることは、間違いありません。

「やる意味あるの?」 冷めた視線に、成果で答える。

会社員としての業務をこなしながら、3つのコミュニティー運営に関わるのは相当大変だと想像しますが、実際にどんな困難があったのでしょうか。

大変さを感じる以上に、自分に価値をもたらしてくれると思っています。
話は遡りますが、コミュニティー運営の原体験は高校2年生のとき。文化祭で自分がリーダーになって、クラスメートと焼鳥屋を出店したことです。
串が焦げるなどトラブルを乗り越え、みんなで頑張りました。文化祭後に売上ランキングの発表があり、楽しみにしていたところ、結果は惨敗。みんなで悔し泣きしました。
リーダーとしてみんなの努力に報いることができなかった申し訳なさが頭から離れず、3年生のときに同じ仲間でもう一度チャレンジしたんです。商品をどうするか、オペレーションをどうするかなど考え抜いて臨んだ結果、10万円の売上を生みだして悲願の1位になりました。今度はみんなでうれし泣き。一緒に頑張ってくれた仲間を幸せにできた喜びを、ビジネスでも実現できたら。それが原動力なのかもしれません。
ただ、僕がコミュニティーを駆け回っているのを見て、中には「遊んでばかりいて」とか「それ、やる意味あるの?」と思っている人もいるはずです。だからこそ、本業の仕事で誰が見ても納得できるような数字や結果を出すことを意識しています。あとは、自分の「志」をしっかりと言葉で伝えていくこと。誰かに伝えることで、改めて「やらなければ」と自分に思い込ませる効果があります。その意味で、人と話す機会を積極的に作るのも、目的を遂行する上で大切なことだと思いますね。

心のモヤモヤは、まず発信。 きっと助けてくれる人がいる。

グロービスでの出会いによって“ENJIN”が生まれたこと以外にも、グロービスでの学びや体験が役立っていることはどんなことでしょうか。

SIerの役割が顧客のコンサルティング領域まで拡大していく中で、経営や組織論、マーケティングなど、グロービスで学んだことは日頃から大きく役立っています。
また、以前、金融機関向けのパブリッククラウドソリューションの立ち上げに関わったのですが、そこで役立ったのが「デザイン思考と体験価値」という科目での学びでした。人間中心的な発想からテクノロジーを活用し、顧客の体験価値を一新するようなイノベーション事例をもとにプロジェクトワークするのですが、そこで身に付けた考え方やプロセスを、新サービスの立ち上げに活かすことができましたね。
また、グロービスでは常に自分の「志」を問われますが、経験の少ない若い方や長い期間ひとつの組織に属している方だと、なかなか自分の道が見えづらいのかもしれません。「何か課題感があるけれど、うまくまとまらない」「どう一歩を踏み出していいのかわからない」と、モヤモヤしているケースが多いと思うんです。
大切なのは、まず周囲に向けて発信すること。例え社内であっても、話を聞いてくれる人や協力したいという人は一定数いるというのが僕の実感です。
とくにグロービスは、自分のWILLを掲げ、もっとレベルアップしたいという人が集まっています。だから、声を上げればいろんな人が真剣に答えてくれる。“ENJIN”の発足もそうでした。そうやって少しずつ自分の進むべき道が見えてくる。それもグロービスのよさじゃないでしょうか。

圧倒的な成果を出し、 越境マインドで若手を育てる。

最後に、これからの目標やビジョンをお聞かせください。

20代では周囲のサポートをもとにさまざまなチャレンジをさせてもらいましたが、まだまだ成果を出せていないので、30代は成果にこだわろうと思っています。例えば圧倒的な営業数字も成果のひとつでしょうし、コンサルティングやアカウントプラニングを型化し、組織として実績を作ることもそう。これらを最短で成し遂げた上で、組織の変革などもっと大きな課題に取り組んでいくことが、SIer変革の推進になると考えています。
わかりやすく言えば、多くの企業の経営陣から「日鉄ソリューションズさんは本質的なビジネスの難所に寄り添ってくれる、変革のパートナー的な存在だよね」と言ってもらえるようになることが、「志」実現のひとつの指標になるかと。

先に述べましたが、次世代を担うIT人材はユーザー企業ではなく、我々SIerのようなITベンダーに集中しています。これからの日本の変革に必要な人材の宝庫ともいえるITベンダーが、従来のセクショナリズムや請負型のマインドに囚われたままでは、業界全体の成長は停滞したままでしょう。彼らが多様な価値観を持ちながらも社内外で人脈を広げ、志を見つけられるように、さまざまな人たちとの越境・発散・挑戦を続けられるよう促していきたいですね。コミュニティーを活用して他業界の人たちとも交流することで、誰からでも学べるし、成長し続けられる。その上で、ユーザーと一緒になってビジネスITを築いていくことができれば、日本のITはずいぶん強くなると思っています。

日鉄ソリューションズ株式会社

瀬藤 亮太さん

福岡県出身。九州大学経済学部を卒業後、2015年に日鉄ソリューションズ株式会社入社。営業職としてITインフラ領域の新規顧客開拓や、金融機関向けの新サービス立ち上げに参加。現在は既存大手顧客を中心に、成長戦略を実現するためのIT提案が主な仕事。またDX推進など新たな時代に対応するコンサルタントとしての型づくりや、若手育成のミッションも兼務している。社内コミュニティー “takibito”や、会社を越えてIT人材をつなぐグロービス公認クラブ“ENJIN”を主催。

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