地方の事業承継者が建設会社の
リブランディングに成功
「環境省の賞に5年連続入賞」までの軌跡

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芹田 章博 株式会社セリタ建設 代表取締役
グロービス経営大学院 福岡校 2016期
大学卒業後、横浜にあるゼネコンに入社。首都圏を中心に工事責任者として、大型の公共工事や民間土木工事を経験。2003年から事業承継のため、株式会社セリタ建設に入社。2019年より、代表取締役として会社のReブランディングに奔走。外部評価も高まり、環境省や中小企業庁、佐賀県からも表彰を受けるまでに成長させる。今後は、地方での働きがいのある企業を目指して、建設業の価値提供を高め、新しい建設業のスタイルを模索中。

会社存続の危機を乗り越えて

私は家業である建設会社を継ぐことを30歳で告げられ、なんの迷いもなく2003年に地元に戻りました。親が経営する建設会社に入社してみると、思い描いていた会社像との大きな隔たりがあり驚きを隠せませんでした。同時に、このギャップをすぐに埋めなければ、会社が存続できないという危機感を抱きました。そこから、さまざまな取り組みを実施しピンチを社員一丸となって乗り越え、業績改善だけでなく「環境省の賞に5年連続入賞」するなど官公庁や佐賀県からも表彰されるような「ちょっと変わった建設会社」に変貌を遂げることができました。我々の活動を通じて、「地方の小さな会社だからできること」を参加者の方に何かしらの気づきを提供できればと思い、セッションを実施することにしました。

組織改革とブランディングの相互作用

入社当初は、問題があらゆるところにあったのですが、特に人を含めた組織の問題が大きく、組織改革をすることが何よりも重要でした。早急に解決すべきと考えた課題は2つでした。ひとつは、従業員のモチベーションが低いこと。売上の中心が受注資格を問われる公共工事が中心だったことが影響し、従業員の評価は減点方式で、褒めるという文化がなかったのです。もうひとつは、目の前の仕事を処理するだけになっていること。何を目標に働けばよいのかわからず、まるで誰も行先を知らない船をみんなで漕いでいるようでした。


そこで「企業活動のすべてがブランディングである」という方針を明確に打ち出し変革に取り組んでいきました。一見、組織改革とブランディングは直接つながりがないように思うかもしれません。しかし私は、従業員のモチベーションが低いのは、自分の仕事への誇りを持っていなかったり、自社の魅力や価値を充分に認識できていなかったりするのではないかと考えたのです。目の前の仕事を処理することではなく、「何のために働き、どんなことを実現したいのか?」「自分たちの強みは何なのか?」などを問いかけ、自社のアイデンティティを育むことを優先しました。そして、社員の考え方や行動が変わった結果として企業価値や魅力度の向上し、本当の意味でブランドが変わったと社内外から認識してもらえるのではないかと思ったのです。また、組織改革を声高に叫ぶと人事異動やリストラを想起させ、抵抗感を抱く社員も多いだろうと考え、リブランディングを目的に置きました。


これらの営みを通して、自社のブランドへの理解が深まり、顧客へのコミュニケーションに一貫性が生まれ、顧客の反応が変わり、従業員の自信にも繋げることができました。そしてその後も、さまざまな取り組みを行った結果、自社を変貌させることに成功したのです。

リーダーズディスカッションの参加者には事業承継者も多く、「正しいことを着実に前に進めていく姿勢やブレない強さを学んだ」「地道に、かつ継続的に取り組まれていることが印象的だった」など感想をいただきました。


時代が大きく変化する中での事業承継には、先代から受け継ぐものと変えていくものの見極めが重要になります。ゆえに自社の魅力の見直しや再定義は、社会の変化や自社の50年、100年先を見据えたものにできれば強力な武器になると考え、従業員と共に懸命に取り組んできました。一方で、再定義した自社の魅力に基づいて現場の行動をスピーディーに変更させなければ、環境変化の速さに対応できません。


また、決めたことが実際に行動に移され成果を生み出すためには、トップダウンではなくボトムアップで行動の見直しが実行され、「自分たちで決めた」という当事者意識を持たせることと、なぜこれをやるのかの目的を理解することが重要です。企業をとりまく環境は複雑性を増し、変化のスピードが速い中で、想定外の変化にも対応できるように、これからは、社員自らが自発的に行動を起こす「学習型の組織」への変革を導いていきたいと考えています。

芹田 章博株式会社セリタ建設 代表取締役
グロービス経営大学院 福岡校 2016期
大学卒業後、横浜にあるゼネコンに入社。首都圏を中心に工事責任者として、大型の公共工事や民間土木工事を経験。2003年から事業承継のため、株式会社セリタ建設に入社。2019年より、代表取締役として会社のReブランディングに奔走。外部評価も高まり、環境省や中小企業庁、佐賀県からも表彰を受けるまでに成長させる。今後は、地方での働きがいのある企業を目指して、建設業の価値提供を高め、新しい建設業のスタイルを模索中。