アート×地域×ビジネスの関係性
国内アートフェス最新動向から今後の可能性と課題を考える

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髙田 教子 株式会社たかだ旅行社 代表取締役
グロービス経営大学院 東京校 2017期
再就職支援、企業研修、人材派遣、BPO、HR広告など人事系サービス企業数社にて就業。営業を経て社内外の組織設計やオペレーションデザインを専門にBPRを担当し、近年はAI導入プロジェクトに主に携わる。旅を通じて“未知との遭遇”を提供するべく旅行会社を設立し、現在立上げ中。

15年間の現代アートを巡る旅から見えてきた風景

趣味である現代アート鑑賞のため、全国を旅する生活を15年ほど続けています。日本全国の素敵な土地や人そのものに加えて、その土地の自然や歴史を丁寧に紐解き問いを投げかけるアーティストとその作品に魅せられてきました。一方で、2000年ごろから全国で加熱するアートフェスやアートを活用した観光地づくりによって、かえって地域の課題が見えづらくなることにも気づきはじめました。


定期的に通う地域で気づいた変化や、さまざまな地域の方々やアーティストの方々と対話するなかでみえてきた課題や可能性を、地域活性化に関心の高い全国にいるグロービスの学生とディスカッションしてみたいと思ったのが、今回のテーマを設定したきっかけです。

日本におけるアートフェスの光と影

地域で開催されるアートフェスの代表格として、「越後妻有・大地の芸術祭(以下、大地の芸術祭)」や「瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)」などは、回を重ねるごとに来場者数が増え、経済効果の高さが新聞などで謳われ、現地に行くと地方自治体からの視察団に会うことも多々あります。地域活性化に興味のある方にとっても成功事例として関心が高いと感じています。一方で、ここ5年ほどはブームに便乗して日本全国のいろいろな地域でアートフェスがたちあがったものの、一度きりで終わるなど、上手くいかない事例もあります。


パワーモーニングでは、冒頭で代表的なアートフェスの事例や歴史、経済効果の規模、出資構造など、アートフェスについての基本的な概要をお伝えしたうえで、自分が見知った地域の成功事例や課題を共有しました。


<成功事例>

・作品の展示によりその地域の歴史や風土が掘り起こされ、その土地や作品を住民が誇りに思えるようになった事例

・地域住民だけでなく、その地域を出ている人が里帰りのときにお墓参りと一緒に立ち寄るきっかけとなった、コミュニティのシンボル作品の事例

・高齢者ばかりになった地域に子どもが産まれ小学校が再開した事例

・地元にも、観光客にも愛されるレストランやカフェができ、長く続いている事例

・民泊ならぬ”農泊”しかなかったところに宿やお店ができた事例

これらの変化はかつて、神社を中心として近隣に集落が形成され、周辺地域が活性化されていった門前町の組成プロセスに似ています。いわば、アートを中心に集落が活性化されていく様子は、“アート門前町”現象ともいえるでしょう。

<課題例>

・Iターン移住者が定住しない

・商業的な成功をみて、アートに縁もゆかりもない地区に作品を置いてもらいたいと言い出す

・作品をもっと設置して欲しいが、アーティストがいない

その後のディスカッションは、「アートフェスの成功の定義とは?」からはじまり、「地域住民やアーティストにとってのアートフェスの価値や参加意義は何か?」「アートファンはアートフェスをどう見ているのか?」などについて、様々な視点から語り合いました。

アートを通じて「未知との遭遇」を楽しむ旅

今回のディスカッションを通して、アートでなくとも自分の関心ごとを通じて地域の課題の解決に貢献できることに気づいてもらえ、実際どこかへ行ってみようと思ってもらえるきっかけになったのではないかと思っています。


旅先では、予想もしない出会いや、新たな気づきのきっかけになることがたくさんあります。引き続き、グロービス公認クラブ「Globis Art & Design Community」の活動でも同様のディスカッションの機会を持ち続けたいと思います。


そして、今後はそのような”未知との遭遇”を楽しむ旅を提供し、誰かの人生の楽しみを増やすビジネスをあらたに創造できたらと考えています。

髙田 教子株式会社たかだ旅行社 代表取締役
グロービス経営大学院 東京校 2017期
再就職支援、企業研修、人材派遣、BPO、HR広告など人事系サービス企業数社にて就業。営業を経て社内外の組織設計やオペレーションデザインを専門にBPRを担当し、近年はAI導入プロジェクトに主に携わる。旅を通じて“未知との遭遇”を提供するべく旅行会社を設立し、現在立上げ中。