大企業の事業変革におけるバウンダリースパナーの役割について考える
~変革の難所でどう振る舞うのか?~
刑部 真奈 | 生活関連サービス業 グロービス経営大学院 大阪校 2017期 大阪大学外国語学部卒業後、生活関連サービス業の会社に入社。直営店舗での事業責任者、エリアマネジャー、営業企画の業務を経て、現在はWebサイトの更新や新規コンテンツの立ち上げに従事している。 |
事業変革を興すためのキーパーソンとは
今回のテーマは、グロービス経営大学院在学中に「研究プロジェクト」という科目で取り組んだ内容をベースにしています。外部環境の急激な変化に伴って、事業の不確実性が高まる中、大企業は効率化された組織や慣性の法則などの影響もあり、なかなか事業変革を起こしにくいのが現状です。またM&Aや業務提携などの外部企業との連携や企業内の組織が細分化され、部門間の関係もより複雑になっています。
そこで、事業変革を興すためのキーパーソンとして、1970年代にアメリカで研究された「バウンダリースパナー:境界連結者」という役割に注目しました。バウンダリースパナーは、公式権限がないミドル~ボトム層が、必要な人的資源に簡易にアクセスし、組織の内部ネットワークを外部情報源と結びつける役割を担うという特徴があります。「研究プロジェクト」では、バウンダリースパナーの特徴に沿って、事業変革の難所とその乗り越え方を研究しました。
卒業後、大阪校で成果報告会を実施しましたが、3日で定員が埋まるほどの反響の大きさを見て、きっと同じような課題感を抱えているメンバーが全国にいるのではないかと考えました。そんなメンバーに「研究プロジェクト」の成果をシェアして、事業変革について一緒に語りたいと思ったのがきっかけです。
バウンダリースパナーの行動・能力・意識の特徴
ディスカッションに最大限時間をさきたかったため、参加者には事前にオンラインで勉強会の実施や事前課題の準備、資料を読んできてもらうことをお願いしました。おかげで濃密な議論を実施することができました。
当日は、事前に作成いただいた自社の事業変革における難所をベースに、製造メーカー、金融、教育など多様な業種のメンバーを少人数のグループに分けて、ディスカッションを行いました。それぞれの業界特有の難所がある一方で、「横の部門が動いてくれない」「トップの承認を得ることが難しい」「過去の成功体験にとらわれて、なかなか周りを動かすことができていない」などの業界を問わずに共通する難所も出てきました。
そこで、事業変革を成功させるキーパーソンであるバウンダリースパナーの行動・能力・意識の特徴を紹介し、実際に自社の事業変革にどう活かすのかを考えてもらいました。その後、比較的取り入れやすい行動として、「通常業務では協力関係はないけれど、事業変革に関連する部署のメンバーをあらかじめ巻き込んでおく」「意思決定者に意思決定を依頼する前にプランの内容を話しておく」「変革の実行時は裏方に徹する」など、「研究プロジェクト」の成果を紹介しました。
「イノベーションによる事業構造改革」という科目でも学んだように、事業変革の進め方は企業固有の文脈に影響を受けることが多く、どの企業にも当てはまるやり方が存在するわけではありません。しかし、今回のセッションを通じて、「事業変革を成功させるためのヒント」は提供できたのではないかと思います。
参加者からは「自分と同じような悩みを抱えている人がいて、ほっとした」「大企業を変えたいと考え行動している方々と議論できたことが嬉しかった。私は大企業の持つポテンシャルを信じているので、自分を鼓舞するよい機会になった」といった声をいただきました。また、あすか会議後には、実際に会社で実践されたという報告ももらうことができました。
今回のセッションを通じて、私もお互いに応援できる仲間と出会うことができ、事業変革にチャレンジを続ける勇気をもらうことができました。今回の議論や研究プロジェクトの内容を活かして、引き続きさまざまな取り組みにトライしていきたいと思います。
刑部 真奈生活関連サービス業
グロービス経営大学院 大阪校 2017期
大阪大学外国語学部卒業後、生活関連サービス業の会社に入社。直営店舗での事業責任者、エリアマネジャー、営業企画の業務を経て、現在はWebサイトの更新や新規コンテンツの立ち上げに従事している。