先行き不透明&技術ドリブンなライフサイエンス業界における、
スタートアップの今後の課題について

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波多野 薫 クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社 Web of Science 事業部 カスタマーコンサルタントマネージャ
グロービス経営大学院 東京校 2015期
東北大学大学院情報科学研究科を修了後、半導体・ディスプレイ業界にて研究開発を担当。2013年、クラリベイト・アナリティクスに転職。日本の研究成果の世界への発信を支援する新規事業の開発や、大学向けの研究マネジメントソリューションの営業に携わる。プロボノでライフサイエンス系の大学発ベンチャーの創業を支援中。

ライフサイエンス業界の現状と課題とは

日本は、今後さらに少子高齢化が進み人口減少社会が到来します。そうした中、国民の長寿健康の実現、食の安全確保と食料自給率向上、さらには関連する医薬品・医療機器産業、農林水産業等の産業競争力強化と新産業創出にもつながると期待されているのが「ライフサイエンス分野」です。21世紀に入ってからの急激な科学技術の発展により、以前は治らなかった多くの病が治るようになっています。国際的にもこの分野に対する期待は大きく、各国とも積極的な投資を行い、研究開発競争が激化しています。日本にとっても非常に大切な分野なのですが、研究成果が商品やサービスになるまでに多くの課題があります。私は仕事柄、大学の研究者の方々によくお会いするのですが、「世の中が大きく変わる」と感じる成果をたくさん目にします。それらの素晴らしい成果が、未来を担う新しい産業を創出できればと思う一方で、技術ドリブンな“大学発スタートアップ”が成功するのは簡単ではないという現状も認識しています。その背景には、たとえば研究者と一緒に創業する「経営人材不足」という課題があります。こうした課題をはじめ「ライフサイエンス業界の起業」にはどのような課題があるのか。さまざまなバックグラウンドの方と議論することで得られる気付きがあると思い、今回のセッションを企画しました。

日本から世界で戦う“大学発スタートアップ”創出

当日は、「ライフサイエンス業界の起業に対するイメージや、直面しそうな課題」について、ブレストをする形で議論を進めました。すでに起業された方からは、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により表記が規制されているため、たとえば薬の情報を消費者に分かりやすく伝えることが難しい。そのため、販売・マーケティング面で大きな課題がある」というコメントをいただきました。確かに、専門用語が多い業界のため、消費者に理解してもらうことが難しいというのは大きな課題かもしれません。また、「専門知識がないと参入できない」、「事業になるまでの時間が長い」、「成功する可能性が不明瞭のため、起業のリスクが高い」など、技術ドリブンであるからこその課題も出てきました。加えて、業界のイメージとしては「頭がかたい」、「デザイナーがいない業界」というコメントもいただき、重要な示唆が得られたと感じました。


これだけ課題が可視化できたということは、これらを私たち一人ひとりが解決できれば、業界を変えられるということです。そうなれば、10年後には、日本のライフサイエンス業界は、世界でもっとも起業家が創出され世の中を驚かすようなイノベーションが生まれると言われるようになるかもしれません。日本から世界で戦う“大学発スタートアップ”が増え、そして日本の未来が明るく輝くものとなるよう、一歩ずつ積み重ねていきたいと考えています。

波多野 薫クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社 Web of Science 事業部 カスタマーコンサルタントマネージャ
グロービス経営大学院 東京校 2015期
東北大学大学院情報科学研究科を修了後、半導体・ディスプレイ業界にて研究開発を担当。2013年、クラリベイト・アナリティクスに転職。日本の研究成果の世界への発信を支援する新規事業の開発や、大学向けの研究マネジメントソリューションの営業に携わる。プロボノでライフサイエンス系の大学発ベンチャーの創業を支援中。