AIエージェントとは何か、わかりやすく解説!生成AIとはどう違う?

AIエージェントとは何か、わかりやすく解説!生成AIとはどう違う?

目次

ChatGPTの登場以降、AIは「質問に答えるツール」から、「仕事を実行する存在」へと進化しつつあります。その進化の中心にあるのが、近年注目を集める「AIエージェント」です。

「生成AIと何が違うのか?」
「本当に業務を任せられるのか?」
「自社に導入すると、何がどう変わるのか?」

こうした疑問を持つビジネスパーソンに向けて、本記事では、AIエージェントの定義、生成AIとの決定的な違い、ビジネス導入のメリットとリスクまでを体系的に解説します。

次世代のビジネス教養として、AIエージェントの本質を押さえていきましょう。

AIエージェントとは何か?

AIエージェントとは、目標(ゴール)を与えると、その達成に向けて自ら考え、計画し、実行までを担うAIシステムのことです。

従来のAIが「ユーザーの問いに対して情報を出力する」という一問一答形式(受動的)であったのに対し、AIエージェントは「目標達成のために何が必要かを自ら考え、複数のステップを自律的に踏む」(能動的)という点が最大の特徴です。

いわば、指示を待つ「ツール」ではなく、タスクを任せられる「部下」に近い存在へと進化しているのです。

AIエージェントが活用されている例

AIエージェントは、すでに一部の企業や業務領域において、段階的な社会実装が始まっています。

例えば、金融業界における不正調査業務では、従来は人間が膨大なログを照合していましたが、AIエージェントは不審な取引を自律的に検出し、必要に応じて関連データの集計や、一次報告書の作成までを自動で完結させます。

また、カスタマーセンターの対応も劇的に変化しています。顧客からの「注文をキャンセルしたい」という依頼に対し、対話型AIがただ返答するだけでなく、AIエージェントが裏側で在庫管理システムや決済システムにアクセスし、返金処理の実行と確認メールの送信までを一貫して行います。

さらに、ソフトウェア開発の分野でも、バグの報告を受けるとその原因を特定し、修正コードを書き、テストを実行し、人間のレビューを前提とした形で修正を支援する「エンジニアリング・エージェント」が登場しており、単純な自動化を超えた業務の自律遂行が進んでいます。

AIエージェントを活用する前に知っておくべき特徴とは

AIエージェントをビジネスに組み込むためには、従来のAI(チャットボット等)とは異なる特有の性質を理解する必要があります。米調査会社のガートナー社も提唱するように、エージェントは単なる応答マシンではなく、環境を認識して自ら動く「主体性」を持っています。その核となる3つの特徴について詳しく見ていきましょう。

AIの「学習」の特徴

AIエージェントの学習は、開発時の事前学習に留まりません。実行したアクションの結果をログやメモリとして蓄積し、それを次の判断に反映させることで、あたかも「学習しているかのように」振る舞う点が特徴です。これにより、特定の企業のワークフローや個人の好みに合わせたパーソナライズが加速します。

過去の試行錯誤をデータベース化し、長期的な記憶として活用することで、使えば使うほど精度と効率が高まっていくのが大きな特徴です。

AIの「適応能力」

適応能力とは、予期せぬ状況変化や未知のトラブルに直面した際、自ら計画を修正する力です。従来のプログラム(RPA等)は、手順が変わると停止してしまいますが、AIエージェントは「目標」が固定されていれば、手段が遮断されても別のルートを模索します。

例えば、参照すべきWebサイトが閉鎖されていれば、自ら許可された範囲で代替のソースを探し出し、タスクを継続する柔軟性を備えています。

AIの「自律性」

自律性(Autonomy)は、AIエージェントの最も本質的な要素です。人間が「手順」を細かく指示する必要はなく、「最終的な成果」を定義するだけで、AI自身がタスクを分解し、優先順位を決定します。人間が確認(Human-in-the-loop)を行う場面を最小限に抑え、バックグラウンドで独立して作業を進めることができるため、人的リソースの戦略的再配分を実現します。

AIエージェントと生成AIはどう違う?

「生成AIがあればAIエージェントは不要ではないか」という疑問を持つ方も多いでしょう。しかし、両者は補完関係にあります。生成AI(大規模言語モデル/LLM)は、いわば「高度な言語能力を持つ脳」です。

一方、AIエージェントは、その「脳」に加えて、「手足(外部ツール)」と「計画性(長期的な思考)」を備えた「個体」としてのシステムを指します。

生成AIは、プロンプトに対してテキストや画像を「生成」することを得意としますが、それ自体が勝手にメールを送ったり、カレンダーを予約したりすることはありません。

AIエージェントは、生成AIの推論能力をエンジンとして使いながら、ブラウザやAPI、データベースといった外部の道具を操作し、実世界やデジタル環境に対して具体的な働きかけを行います。

つまり、生成AIが「思考のパートナー」であるのに対し、AIエージェントは「行動の代行者」であるという明確な役割の違いがあるのです。

AIエージェントと生成AIの比較一覧

生成AIとAIエージェントの最大の違いは、「行動できるかどうか」にあります。

生成AIは、高度な言語理解と生成を担う「思考のエンジン」です。
一方、AIエージェントは、その思考力に「計画性」と「実行手段」を組み合わせ、実務を完遂する存在です。

  • 主な役割 
    • 生成AI:コンテンツの作成・要約。翻訳
    • AIエージェント:目標達成のための計画と実行
  • 動作のトリガー
    • 生成AI:ユーザーからの都度の指示
    • AIエージェント:最終目標の提示による自律始動
  • 外部操作
    • 生成AI:原則として不可(回答のみ)
    • AIエージェント:API連携等により外部システムを操作
  • 状態保持
    • 生成AI:一問一答(短期記憶)
    • AIエージェント:計画の修正と進捗管理(長期記憶)

生成AIが「良い答えを出すこと」に強みを持つのに対し、AIエージェントは「成果が出るまでやり切ること」に価値があります。

エージェント型AIとは違う?

用語の混乱を避けるために整理すると、「エージェント型AI」と「AIエージェント」は、現代の文脈においてはほぼ同じ意味で使われています。

あえて区別する場合、従来の「エージェント型」は特定のアルゴリズムに基づいた自動応答を指すことが多かったのですが、現在は「生成AIを搭載し、自律的に判断を行うAIエージェント」を指すのが一般的です。

この技術が注目されている背景には、AIが「知識の検索」から「実務の完遂」へとフェーズが移ったことがあります。これまでのAI活用は、AIが出した答えを人間が確認し、人間がシステムに打ち込むという「AIを補助的に使う」形でした。しかし、エージェント型AIは、人間が介在するプロセスを最小化し、業務フローそのものをAIに委ねることを可能にします。

例えば、出張手配を依頼する場合、従来のAIは「おすすめのホテル」を提示するまででしたが、エージェント型AIは、予算を確認し、宿泊先を予約し、経費精算システムへの登録までを自律的に行います。このように、一連のビジネスプロセスを「End-to-End」で完結させられるかどうかが、エージェント型AIと呼ばれるための重要な境界線となります。

ステートフルとステートレス

AIの挙動を理解する上で重要な概念が「ステート(状態)」の保持です。 従来のチャットAIの多くは「ステートレス」であり、一回ごとのやり取りが独立しています。過去の文脈を反映させるには、毎回これまでの会話履歴を読み込ませる必要があります。

一方、AIエージェントは「ステートフル」な設計が基本です。現在のタスクが全体のどの段階にあるのか、過去にどのツールを使って失敗したのかといった「状態」を記憶しながら動作します。これにより、数日間にわたる複雑なプロジェクトの遂行や、長期的な目標に向けた継続的な作業が可能になるのです。

AIエージェントの種類

AIエージェントは、その内部ロジックや動作環境によって複数のタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、どの業務にどのタイプのエージェントが適しているかを判断できるようになります。主な6つの分類を解説します。

反応型エージェントの特徴

最もシンプルな形態で、現在の状況(入力)に対してあらかじめ定義されたルールやパターンで即座に反応します。過去の履歴を保持せず、「Aが起きたらBをする」という反射的な動作に特化しています。工場のセンサー検知による異常停止など、即時性が求められる単純なタスクに適しています。

ビジネスでは、異常検知やアラート通知など、即時性が求められる業務で活用されます。

モデルベース型エージェントの特徴

センサーなどで直接観測できない「隠れた状態」を推測するために、内部に「世界のモデル」を持っています。過去の経験から現在の状況を補完して判断するため、反応型よりも複雑な環境に対応可能です。物流の最適化など、刻々と変化する状況をシミュレーションしながら動く場面で活用されます。

目標ベース型エージェントの特徴

「何を達成すべきか」という目標(ゴール)を持ち、その達成のために必要な行動を逆算して計画を立てます。現在の状況と目標のギャップを埋めるための経路を探索するのが特徴です。目的地までの最適ルートを検索し、交通状況に応じて経路を変更するナビゲーションシステムなどがこれに該当します。


営業計画の最適化や、業務タスクの自動進行管理などに応用されています。

効用ベース型エージェントの特徴

単に目標を達成するだけでなく、「どのくらい効率的か」「コストはいくらか」といった「満足度(効用)」を最大化するように行動を選びます。複数の正解がある中で、ビジネス上の利益が最大になる選択肢をAIが自ら評価・選択するため、投資戦略や予算配分の最適化に向いています。

学習型エージェントの特徴

未知の環境において、実際に試行錯誤(学習)を行うことでパフォーマンスを向上させていくエージェントです。何が正しい行動かを事前に教える必要がなく、報酬を最大化するように自律的に進化します。ユーザーの反応を見ながらレコメンドを最適化するシステムや、新機能の自動テストなどに利用されます。

階層型エージェントの特徴

複数のエージェントが役割分担をし、組織的に動く形式です。上位エージェントが全体の戦略やタスク分解を行い、下位のエージェントが具体的な調査や実行を担います。企業全体のワークフロー自動化など、単一のAIでは処理しきれない大規模で複雑なプロジェクトを完遂させるために不可欠な構造です。

ビジネスにおいてAIエージェントを導入するメリット

AIエージェントの導入は、単なるツールの置き換えではなく、ビジネスプロセスそのものの再定義をもたらします。人間にしかできなかった「判断を伴う実務」をAIが担うことで、主に以下の4つの大きなメリットを享受できます。

オペレーションコストの劇的な削減

AIエージェントは、人間が行っていた「データの収集→分析→システムへの入力」という一連の作業を24時間ノンストップで実行します。人件費の削減はもちろん、ヒューマンエラーによる手戻りコストも排除できます。特に、大量のルーチンワークを抱えるバックオフィス部門では、数人分の業務を1つのエージェントで代替可能になり、ROI(投資対効果)を明確に可視化しやすくなります。

意思決定と実行スピードの加速

ビジネスにおいてスピードは最大の競争優位性です。AIエージェントは、人間がメールを確認し、会議で判断を下す数時間を待つ必要がありません。リアルタイムでデータを処理し、数秒以内に最適なアクションを実行します。例えば、市場の価格変動に合わせた動的なプライシングや、顧客行動に基づいた即時の販促施策など、人間では不可能なスピード感での事業運営を可能にします。

人的リソースの高度な再配置

定型的な判断業務をAIに任せることで、従業員はより「クリエイティブな戦略立案」や「感情的なケアが必要な顧客対応」に集中できるようになります。AIは「効率」を担い、人間は「価値」を担うという明確な役割分担が成立します。これにより、従業員のエンゲージメント向上や、企業全体の創造性の底上げに繋がります。

スケーラビリティの確保

ビジネスが急成長した際、人員を増やすには採用や研修の時間がかかります。しかし、AIエージェントであれば、処理能力(サーバー)を拡張するだけで、増加する業務量に即座に対応可能です。繁忙期や事業拡大期においても、品質を落とすことなくサービスを提供し続けることができる柔軟性は、現代の不確実な経営環境において大きな武器となります。

ビジネスにAIエージェントを導入するリスクは?

AIエージェントの強力な自律性は、一歩間違えればコントロール不能なリスクへと変わる諸刃の剣です。導入にあたっては、以下の3つの観点から、ガバナンスと監視体制を構築することが企業の責務となります。

セキュリティに関するリスク

AIエージェントは外部ツールや社内システムにアクセスする権限を持つため、脆弱性を突かれた際の被害が大きくなる傾向があります。万が一、悪意のあるプロンプト(プロンプトインジェクション)によってAIが操作された場合、機密情報の漏洩やシステムへの不正な書き込みが自律的に行われる危険性があります。権限の最小化や、行動ログの常時監視といった厳格なセキュリティ設計が求められます。

法的リスク

AIが自律的に意思決定を行い、契約の締結や支払いを行った際、その結果に対して誰が法的責任を負うのかという「責任の所在」が課題となります。例えば、AIが他者の著作権を侵害する行動をとったり、誤ったアドバイスで顧客に損害を与えたりした場合の賠償責任など、現行法ではカバーしきれないグレーゾーンが存在します。導入時には法務部門との緊密な連携と、利用規約の整備が不可欠です。

信頼性のリスク

生成AIに特有の「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」は、AIエージェントにおいても発生します。誤った推論に基づき、AIが勝手にシステムの設定を変更したり、誤った情報を顧客に送信したりするリスクです。特に、実社会に影響を及ぼすアクションを行うエージェントの場合、重要なポイントでは人間が介在する「Human-in-the-loop」の仕組みを組み込み、信頼性を担保する必要があります。

「グロービス経営大学院」でAIを活用したビジネスを学ぼう

AIエージェントという強力なテクノロジーを使いこなし、ビジネスに変革をもたらすには、単なる技術知識だけでは不十分です。それをどのように事業戦略に組み込み、組織を動かし、新たな価値を創造するかという「経営の視点」が不可欠です。

グロービス経営大学院では、テクノロジーと経営を融合させた「テクノベート」*科目を多数展開しており、最先端のAI活用術から、AI時代のリーダーシップまでを体系的に学ぶことができます。AIを恐れるのではなく、武器として使いこなす次世代のリーダーを目指しませんか。

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*テクノベート:テクノベートとは、テクノロジーとイノベーションを組み合わせたグロービスの造語です。

まとめ

AIエージェントは、AIが「知識を提供する存在」から、「実務を完遂する存在」へと進化した象徴です。

この変化は、単なる業務効率化ではなく、仕事の設計そのものを変えつつあります。

一方で、セキュリティや法的責任といった課題も併せ持っています。ビジネスリーダーに求められるのは、これらのリスクを正しく評価した上で、AIを「有能な部下」として組織に迎え入れる構想力です。AIエージェントと共に歩む未来は、もうすぐそこまで来ています。

著者情報

吉峰 史佳(グロービス コンテンツオウンドメディアチーム)

吉峰 史佳(グロービス コンテンツオウンドメディアチーム)

早稲田大学第一文学部、東京大学大学院情報学環教育部を修了。HR業界紙の編集者、AI開発スタートアップでの広報を経て、現職でグロービスのオウンドメディア編集に従事。自身もグロービス経営大学院 経営研究科 経営専攻を修了している。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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