AIエージェントの活用事例10選|業務への活用方法や導入のポイントを紹介

AIエージェントの活用事例10選|業務への活用方法や導入のポイントを紹介

目次

AIエージェントとは何か、従来のAIとの違い、具体的な活用事例、導入時のポイントや注意点までを体系的に解説します。「AIエージェントで何ができるのか」「自社で使えるのか」を短時間で理解したい方に向けた記事です。

AIエージェントとは

AIエージェントとは、生成AIに「計画」「実行」「ツール操作」という能力が加わった存在であり、
人間が逐一指示を出さなくても、ゴール達成までを自律的に進められる点が特徴です。
従来のAIとの大きな違いは、単なる回答生成に留まらず、外部ツールを操作したり、複雑な工程を自ら組み立てたりする「実行力」にあります。
いわば、デジタル空間で自走する「有能なアシスタント」であり、人間が細かな指示を与え続けなくても業務を完結できる点が最大の特徴です。

AIエージェントの具体的な活用事例10選

企業がAIエージェントを導入し、業務効率化を実現している代表的な10個の事例を紹介します。

1. カスタマーサポートの自動完結

従来のチャットボットは定型文の回答が限界でしたが、AIエージェントは顧客の注文番号からデータベースを照会し、返品受付や配送状況の変更までを自律的に完結させます(場合によっては、人間の確認を含みます)。
顧客との自然な対話を通じて、人間のオペレーターを介さずに複雑な手続きを処理できるため、24時間365日の高度な対応が可能となり、大幅なコスト削減と顧客満足度向上を両立します。

2. 営業メールのパーソナライズと自動送付

AIエージェントは、ターゲット企業のWebサイトや最新ニュースを自らリサーチし、その企業固有の課題を推察します。 その上で、一社ごとに最適化された営業メールの文案を作成し、最適なタイミングで自動送付します。
大量送信のテンプレートメールとは異なり、高いパーソナライズ性を持つため、開封率や返信率を飛躍的に高めることが期待できます。

3. スケジュール調整と会議アジェンダの作成

社内外の関係者のカレンダーを統合的に分析し、空き時間を調整するだけでなく、会議の目的に応じて必要な資料を収集し、アジェンダ案を自動で作成します。
候補日の提案から確定後の会議URL発行、事前の資料リマインドまでをエージェントが一貫して行うため、人間は会議の意思決定そのものに集中できるようになります。

4. 高度な市場調査と競合分析レポート

「特定の業界の最新動向をまとめて」という指示に対し、Web上の膨大なニュース記事、SNS、プレスリリースを自律的に検索・要約します。
単なる検索結果の羅列ではなく、競合他社の動きを比較表にまとめたり、市場の成長要因を考察したりといった、示唆に富むレポートを生成します。
数日かかるリサーチ業務を数分で終え、迅速な意思決定を支援します。

5. 経費精算・領収書の自動照合と不備検知

アップロードされた領収書から金額や品目を抽出するだけでなく、社内の経費規定に違反していないか、二重申請はないかを自律的にチェックします。
不備があれば従業員に具体的な修正箇所を通知し、問題がなければ承認ルートへ回す工程を自動化します。 バックオフィス部門の確認作業を最小化し、月末の業務負荷を大幅に軽減する実務での導入が進んでいる代表的な活用法です。
実際には、最初は「不備検知まで」をAIが担い、最終承認は人間が行う形で導入されるケースも多く見られます。

6. ソフトウェア開発のコーディングとデバッグ

要件定義書の内容を理解し、最適なコードを自動生成するだけでなく、生成したコードに対して自らテストコードを書いて実行します。
エラーが発生した場合は、その原因を自律的にデバッグし、修正案を提示して、エンジニアの確認を前提に再テストを行います。 エンジニアの補助役として機能し、開発サイクルのスピードを劇的に向上させることが可能です。

7. SNS運用とエンゲージメントの自動管理

最新のトレンドワードを分析して投稿案を企画し、画像生成AIと連携して魅力的なクリエイティブを作成します。
ターゲットが最も活動的な時間に予約投稿を行うほか、ユーザーからのコメントに対して文脈を読み取った返信も行います。
ブランドイメージに沿った一貫性のある運用を自動で行うことで、SNSマーケターの負担を軽減します。

8. 採用候補者のソーシングと初期アプローチ

求人要件に合致する人材を公開情報や採用プラットフォームを活用して候補者を抽出し、個々の経歴に合わせたスカウトメッセージを作成・送付します。
候補者からの返信があった際、一次面接の調整までを自動で行うことも可能です。
採用担当者は、母集団形成という膨大な手作業から解放され、面談を通じた見極めに注力できます。

9. リアルタイム議事録作成とタスク抽出

オンライン会議の音声を解析し、発言録を作成するだけでなく、決定事項や「誰がいつまでに何をすべきか」というタスクを自動で抽出します。
会議終了後、即座に関係者のSlackやタスク管理ツールへ要約を配信します。
認識の齟齬を防ぐとともに、会議後のアクションを確実なものにするための強力な武器となります。

10. 在庫最適化と自動発注の実行

過去の販売データ、季節要因、市場のトレンドを分析して需要を予測し、在庫が一定水準を下回る前にサプライヤーへ自動で発注依頼を送信します。
過剰在庫によるキャッシュフローの悪化や、欠品による機会損失を最小限に抑えるよう、AIが自律的に在庫をコントロールします。
サプライチェーン全体の業務効率化を強力にサポートする事例です。

AIエージェントの3つの種類

AIエージェントは、その構成や役割に応じて、一般的には主に次の3つの種類に分けられます。
どれを選ぶかは、「業務の複雑さ」と「許容できる自律度」によって決まります。
まずは特化型から始め、成果が見えた業務を汎用・マルチエージェントへ拡張していく企業が一般的です。

特化型エージェント

特定のタスク、例えば「翻訳」「日程調整」「コード生成」などに限定して高いパフォーマンスを発揮するタイプです。 役割が明確であるため、既存のワークフローに組み込みやすく、導入のハードルが低いのが特徴です。 高い精度で一つの作業を完結させたい場合に最適です。

自律型汎用エージェント

AutoGPTに代表されるような、抽象的な目標に対して自ら計画を立て、ブラウザ操作やファイル編集を組み合わせて実行するタイプです。
対応範囲が広く、複雑なリサーチや資料作成などの多工程をまたぐ業務に適しています。
一方で、指示(プロンプト)の精度が結果を大きく左右する側面もあります。

マルチエージェント

複数のAIエージェントが、それぞれ「マネージャー」「実行役」「チェッカー」といった役割分担を持ち、協力して一つの成果物を作り上げる仕組みです。
互いにフィードバックを出し合うことで、単一のAIでは気づけないミスの発見や、より高度な意思決定が可能になります。
大規模なプロジェクトの自動化において、近年注目されている作り方です。

AIエージェントを導入する際のポイント

企業がAIエージェントをスムーズに現場へ浸透させるためのポイントを解説します。

自動化する業務の範囲(スコープ)を明確にする

AIエージェントは何でもできる万能薬ではありません。
まずは、繰り返しの多いルーチン業務や、データ処理に時間がかかる業務など、AIが得意とする領域から適用範囲を絞り込むことが成功の近道です。
小さな範囲で成果を確認しながら、徐々に拡大していく進め方を推奨します。

人間による確認(Human-in-the-Loop)を組み込む

AIが自律的に動くとはいえ、最終的な判断や対外的な発信の前には必ず人間が介在するフローを構築しましょう。
誤った情報の送信や想定外のアクションを防ぐためのガードレールを設置することで、業務の品質と信頼性を維持できます。

データの安全性とツールの連携性を確認する

AIエージェントは、社内の様々なデータや外部アプリと連携して初めて真価を発揮します。
既存のSaaSやデータベースとスムーズに接続できるか、また入力したデータがAIの学習に利用されない設定が可能かなど、技術とセキュリティの両面から事前に精査することが重要です。

AIエージェント導入時の注意点

導入にあたっては、以下のリスクや制限事項にも配慮が必要です。

ハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスク

AIは事実に基づかない情報を生成することがあります。
特に法務や財務など、正確性が極めて重要な分野では、AIの出力を鵜呑みにせず、必ず一次ソースを確認するプロセスを徹底してください。
この特性を理解しておくことが、人間とAIの適切な役割の違いを明確にします。

セキュリティとプライバシーの保護

機密情報を扱う場合、データが外部に流出しないよう適切なアクセス権限の設定や、プライバシーポリシーの確認が必要です。
企業としてのガバナンスを維持しつつ、AIの利便性を享受するための社内ルールの策定が求められます。

コストパフォーマンスの評価

AIエージェントの運用には、APIの利用料やインフラコストがかかります。
自動化によって削減できる人件費や時間の価値と、導入コストを冷静に比較し、投資対効果(ROI)の高い業務から優先的に実装していく計画性が不可欠です。

「グロービス経営大学院」でビジネススキルを学ぼう

AIエージェントをはじめとする最新技術をビジネスに実装し、成果を出すためには、ITの知識だけでなく、組織を動かすリーダーシップや戦略的思考が欠かせません。

グロービス経営大学院では、テクノロジーを理解した上で、実戦的な経営スキルを磨くためのカリキュラムを多数用意しています。変化の激しい時代において、AIを使いこなし、新たなビジネスモデルを構築できるリーダーを目指しませんか?

まずは、MBAの授業を体感できる「体験クラス」へお気軽にご参加ください。
URL:https://mba.globis.ac.jp/trial-class/

まとめ

AIエージェントは、単なる業務自動化ツールではなく、「計画・実行・改善」を自律的に担う存在として、企業の生産性や意思決定のあり方を大きく変えつつあります。
カスタマーサポートや営業、バックオフィス、開発業務など、幅広い領域で活用が進んでいる一方で、重要なのは「すべてをAIに任せる」ことではありません。

どの業務を、どこまでAIに委ね、どの判断を人間が担うのか。
Human-in-the-Loopを前提に、業務の特性やリスクに応じた設計を行うことが、AIエージェント活用の成否を分けます。

本記事で紹介した活用事例や種類、導入時のポイントを参考に、まずは自社の課題に適した小さな領域から検討を始めてみてください。
適切な設計と運用を行うことで、AIエージェントは、組織の競争力を高める「実行パートナー」となっていくはずです。

著者情報

吉峰 史佳(グロービス コンテンツオウンドメディアチーム)

吉峰 史佳(グロービス コンテンツオウンドメディアチーム)

早稲田大学第一文学部、東京大学大学院情報学環教育部を修了。HR業界紙の編集者、AI開発スタートアップでの広報を経て、現職でグロービスのオウンドメディア編集に従事。自身もグロービス経営大学院 経営研究科 経営専攻を修了している。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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