今から約300年前に富山で発祥した「置き薬」。各家庭に薬箱を無料で預け、利用した分の代金を後から回収するという先用後利(せんようこうり)の販売手法を取り入れたシステムである。この江戸時代からの伝統に着目し、医療の行き届いていないアフリカの現状を変えるべく奮闘しているのが、NPO法人AfriMedico代表理事の町井恵理さん。製薬会社でMRとして勤務している傍ら、NPO法人設立にまで至った背景には、アフリカの実状を目の当たりにしたからこその課題意識と情熱があった。
マザーテレサ施設でボランティアに目覚める
外資系製薬会社のMRとして働きながら、NPO法人の代表も務める町井さん。現在は一児の母としての顔も持ち、多忙な毎日を送っている。彼女をここまで突き動かしているものは何か。その原点は、大学時代のある体験にあった。
町井氏:友人とインドに旅行したとき、マザーテレサの施設でボランティアを体験しました。孤児たちの身のまわりのお世話をするボランティアだったのですが、遠い国で起きていたはずのことを実際に自分の目で見て、テレビで見るのとは全然違う衝撃を受けたのです。「特別な技術や免許がなくてもできることがある」という発見もあり、そこからボランティアに夢中になりました。
私の父は医薬品の研究者で、母は薬剤師。その背中を見ていたので私も自然と薬学部に進み、薬剤師の資格を取って外資系製薬会社に入社しました。MRとして働きながら単発のボランティアに参加していましたが、単発だと自分の活動が本当に役立っているのか振り返ることができません。そのためボランティアに専念したいという思いが強くなり、6年の勤務後、青年海外協力隊に応募しました。