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投稿日:2023年12月25日  更新日:2024年04月18日

投稿日:2023年12月25日
更新日:2024年04月18日

財務会計とは?管理会計との違いや目的を詳しく解説

大島 一樹
株式会社グロービス
ブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部
書籍・GLOBIS学び放題×知見録編集部 マネジャー
財務会計とは、自社の経営状況や財務状態を数値化して外部に向けて報告する営みを指します。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つを中心とした財務諸表を作成すること、そのために日々の企業活動を帳簿に記録していくこと、対象となる事象を会計処理する際の会計方針を定めることなどを含みます。

財務会計について理解することは、ビジネスパーソンの基礎中の基礎と言えます。売上高、利益、資産、負債など、ビジネスを進めていく中で当たり前のように用語が飛び交い、互いに意味合いを理解している前提で会話が進んでいきます。そんな基礎知識である財務会計ですが、しっかりと体系的に理解することは意外に骨が折れるものです。ぜひ、早期に身に付けていきましょう。

財務会計とは何か?

財務会計とは、自社の経営状況や財務状態を数値化して外部に向けて報告する営みを指します。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つを中心とした財務諸表を作成すること、そのために日々の企業活動を帳簿に記録していくこと、対象となる事象を会計処理する際の会計方針を定めることなどを含みます。

財務会計の目的

財務会計の目的は、株式や社債などの投資家、銀行や取引先といった社外の利害関係者(ステークホルダー)に向けて、自社の経営状態を適時・適切に開示することにあります。会社法では全ての株式会社を対象に計算書類の作成を義務付けていますし、上場企業であれば金融商品取引法によって、より詳細な情報開示の規定が定められています。例えば会社法の計算書類とは別に「有価証券報告書」を作成する、などです。

財務会計の役割

このように、一義的には社外のステークホルダーに対してその企業の経営状態を知らせることが財務会計の役割ですが、経営者や従業員が自社の経営状況を把握するのも重要な役割のひとつです。

予算管理や将来計画の策定、期中の資金繰りなど、財務会計の過程で見える数字を利用する場面は多岐にわたります。また、報告された数値は国や自治体、あるいは業界の統計として、景気動向など社会経済を読み解く材料にもなります。

財務会計と管理会計の違い

前の段落で、財務会計の数字が自社の経営状況の把握に役立つとしましたが、経営者の意思決定を助けるために社内で用いる会計のことを「管理会計」と呼び、財務会計とは区別されます。財務会計には共通の会計ルールが定められていますが、管理会計には義務的なルールはなく、自社の任意で設計できるところが大きな違いです。

財務会計と税務会計の違い

管理会計のほかに、財務会計と対比される言葉として「税務会計」があります。これは、税金の計算を目的としたもので、法人税法を根拠とし、計算書類を税務署に届け出る必要があります。財務会計では「利益」と呼ぶところが税務会計では「課税所得」と呼ぶなど、計算方法や報告の仕方といった具体的なルールにもさまざまな相違点があります。

財務会計のルール

財務諸表の作成にあたっては、その企業が属する国・地域にて定められている会計のルールに基づく必要があります。会計のルールに関するキーワードについて見ていきましょう。

①会計基準とは

財務会計における会計処理の方法や財務諸表の作成方法について詳しく定めたルールを「会計基準」と呼びます。日本では、企業会計基準委員会という民間の組織によってさまざまな会計基準が定められています。会計基準は、それぞれの国・地域の商慣行や政治経済などを反映して国ごとに細かな違いがあり、後述しますが、それを国際的に統一しようという動きもあります。

②会計原則とは

会計基準と似た意味の言葉で「会計原則」があります。日本では、1949年に旧大蔵省の審議会にて「企業会計原則」が定められ、現在でも会計ルールの中心となっています。ここでは、真実性の原則、継続性の原則、保守主義(安全性)の原則といった一般原則をはじめ、総論的な規範が明示されました。

③国際財務報告基準(IFRS)とは

①で述べたように、会計基準は国ごとの歴史的経緯から少しずつ違いがあるのですが、経済のグローバル化が進むにつれて、これを国際的に統一しようという動きが広まりました。

日本でも、国際会計基準審議会が定める会計基準「International Financial Reporting Standards:IFRS(国際財務報告基準)」に対して、自国の会計基準を近づけるべく改定する試みが進んでいます。一方で、グローバルに展開する企業を中心にIFRSを任意で適用する企業も増えてきています。

財務会計の中核:3つの財務諸表

財務会計を構成するのが、ある一定の日における企業の財務状態を表す貸借対照表、一定期間における企業の経営成績を表す損益計算書、キャッシュ(現金)のフロー(出入り)を表すキャッシュフロー計算書です。

貸借対照表とは

貸借対照表は、バランスシート(B/S)とも呼ばれ、ある一定の日における企業の財務状態を表します。左右に分かれ、左側に資産、右側に負債と純資産が計上されます。

資産とは、現金、土地、建物、設備など企業が有する財産を指し、負債とは借入金や買掛金(商品などを購入して代金を未払いの状態の残高)が含まれます。純資産は株主からの出資や、それまでの事業活動の利益の累積が計上されます。自社全体の中でどの項目の占める比率が大きいのか、また過去と比べて増えている(減っている)項目は何かといった点に着目して、企業の状態を読み取っていきます。

損益計算書とは

損益計算書は、一定期間における企業の経営成績を表し、英語のProfit and Loss Statementを略してP/Lとも呼ばれます。収益がいくら発生し、結果として儲け(利益)がいくら出たのか、あるいは損失が出たのかを示すものです。

これも貸借対照表同様、どの項目の占める比率が大きいのか、過去からの変化が大きい項目は…といった点に着目すると、その企業の経営の良し悪しやビジネスの特徴などが見えてきます。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書は、文字通りキャッシュ(現金)のフロー(出入り)を表します。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの3つに分けて計算されていて、それぞれどの活動にキャッシュが使われているか(どの活動でキャッシュが増えているか)が分かるようになっています。損益計算書だけではキャッシュの流れが分からないため、これを補完する役割として重要です。

財務会計をより深く学ぶポイント

上記の3つの財務諸表は、財務会計を学ぶ上での基本でありますが、あくまで入口とも言えます。ビジネスに役立てるために、さらに理解を進めるべき点を以下に挙げていきます。

財務指標の分析

経営状態をさまざまな角度から分析するために、財務諸表の中の数字を組み合わせて算出した指標があります。損益計算書の数字からは、会社の儲ける力を表す収益性の指標、貸借対照表の数字からは、倒産の危険度を表す安全性の指標が導けます。

ROE(自己資本利益率)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これも指標のひとつです。これら指標の計算方法とその意味合いを理解することで、会計データを入手できるあらゆる企業について、経営状態を分析することが可能になります。

会計方針の幅と効果

財務会計にはルールがあると述べましたが、ある事象に対して常に一通りの会計処理しかないということはなく、複数の処理方法が認められている場合があります。企業としては、その中で最も適切な会計処理方法を選んで採用できるのです。これを会計方針といいます。たとえば在庫(棚卸資産)の価値の評価には、先入先出法や平均法など複数の方法があります。

複数の選択肢がある会計処理について、どの方法を選ぶのが自社の事情に合っているのか、もし変更したらどの程度の影響があるのか。こうした点に関する理解を深めることで、経営判断の精度が確実に増していきます。

「グロービス経営大学院」でビジネスに必要なスキルを身に付けよう

上記のとおり、企業経営における財務会計の基礎知識を見てきました。全てのビジネスパーソンにとって、身に付けておくべきと言えます。

では、どのように学べば、効率よく財務会計の知識や思考が身に付くでしょうか。主に3つの習得方法があります。

①書籍で学ぶ
書店には、初学者にとって手に取りやすいさまざまな種類の書籍が並んでいますので、まずは興味に沿ったものを読んでみましょう。例えば、『改訂4版 グロービスMBAアカウンティング』など、実践に役立つよう、事例を交えた解説が豊富な書籍がおすすめです。

②動画で学ぶ
最近は、無料や安価でビジネススキルについて解説する動画も増え、映像を通じて学ぶビジネスパーソンが増えています。効率的に知識をインプットできる一方で、書籍と同様に基本的に受動的な学びのため、知識を定着させるには繰り返し反復して学ぶ努力が必要なのですが、それを行わずに「学んだつもり」になってしまうこともあります。

③ビジネススクールでケースを元にディスカッションをして学ぶ
財務会計を集中して学べる講座を受けるのも方法のひとつです。「使える」学びを手に入れたいのであれば、より現実に近い設定の演習課題や、経営判断の論点を抽出したケースを元に、実際に手を動かして計算し、その解釈や判断について、他者とディスカッションする形式の講座を選ぶのがよいでしょう。ビジネスで成果を出すためには、以下の4つのポイントを押さえなくては、効率的に仕事で活かせる学びになりません。

①知識をインプットする
②知識をつかいアウトプットする
③アウトプットに対し他者からフィードバックを受ける
④フィードバックを踏まえて、自分の思考を改善する

グロービス経営大学院でも、さまざまな人とディスカッション形式で学べる財務会計に関連する講座を用意しています。こちらの講座では、基本的な役割、準備、現場で意識すべきことなど再現性のある実践的な考え方やスキルを学ぶことができます。

<こんな方におすすめです>
・会計の基本的な知識と分析手法を身に付けたい方には「アカウンティング基礎」
・上記アカウンティング基礎の知識をベースに、財務情報に基づく経営上の問題発見・問題解決の方法を学びたい方には「アカウンティングI(財務会計)」

詳しくはこちら:アカウンティング基礎アカウンティングI(財務会計) 講座詳細

まとめ

会計は飛行機のコックピットの計器によく例えられます。風や気圧などさまざまに変化する空において、安全に適切に飛行していくには、パイロットは計器の指し示す意味を瞬時に理解し、次の行動につなげていかなければなりません。同様に、ビジネスに関わる人は財務会計が示す数字の意味を理解し、経営活動につなげていく必要があるのです。ビジネスの共通言語とも言える財務会計、ぜひ学んでいきましょう。

グロービス経営大学院の「アカウンティング基礎」「アカウンティングI(財務会計)」に興味を持たれた方は、ぜひ「体験クラス&説明会」にご参加ください。グロービス経営大学院の授業の特徴や提供科目の内容、キャンパスライフなどについて詳しくご案内しています。

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大島 一樹

株式会社グロービス
ブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部
書籍・GLOBIS学び放題×知見録編集部 マネジャー

東京大学法学部卒業後、金融機関を経てグロービスへ入社し、思考系科目の教材開発、講師などに従事。現在はブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部にて、書籍・GLOBIS学び放題×知見録・グロービス経営大学院のオウンドメディアの企画、執筆、編集を担当する。共著書に『MBA定量分析と意思決定』、『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』、『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』(以上ダイヤモンド社)など。公式X:https://twitter.com/kazu_ct