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投稿日:2020年08月12日

投稿日:2020年08月12日

「新時代の『強い組織・企業文化の作り方』 ~after/withコロナ時代に、ビジネスや働き方はどう変わるのか~」 特別セミナーレポート

小泉 文明
株式会社メルカリ 取締役President(会長)
株式会社鹿島アントラーズFC 代表取締役社長

2020年6月、グロービス経営大学院は、参加者約2,300名の特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、株式会社メルカリ取締役会長、株式会社鹿島アントラーズFC代表取締役社長の小泉文明氏。メルカリの実例をもとに新時代の人事戦略について講演いただいた。

多様性ある組織のマネジメントに必要なこと

2013年設立のメルカリは、社員数1,800名(連結)、国内外に拠点を構える今や大企業である。社員の国籍は40か国以上。宗教やセクシュアリティにおいても多様なバックグラウンドを持つ社員が集まり、職種もさまざまだ。

多様性ある組織だからこそ、言語や暗黙知に依存しないわかりやすいコミュニケーションを大切にしていると小泉氏。コロナ禍でリモートワークが中心となり、その変化は今後さらに加速するという。

「人事戦略の軸は、会社として達成すべき『ミッション』とそれを達成するための『バリュー』。この2つの連動性を意識し、さらにコロナ禍を経てどう変化していくかを考えることが求められます」

コロナ時代における経営戦略・人事戦略の変化

コロナによって同社の経営戦略、そして人事戦略はどう変化しているのだろうか。小泉氏は5つの変化を挙げた。

(出所:メルカリ)


【2】社会的責任とCX(Customer Experience)/ミッション・バリューとEX(Employee Experience)について小泉氏は、「社会生活を維持する上で不可欠なサービスが重要となるコロナ時代、社会的にどういう存在でありたいかをカスタマーに示す必要がある。同時に社員に対しても、どのような職場でありたいかを提示する時代になります」と言及。

また【4】DX(Digital Transformation)加速/ ITツールのフル活用、Data Drivenと【5】透明性、自律分散/ D & I(Diversity & Inclusion)、新しい働き方については、「同じ場で働くことが制限されるので、データに基づく意思決定や、社員がその場その場で意思決定できる機会を増やさなければスピード感が出ません」と語った。

新時代の働き方を実現するためのトライアングル

これらの人事戦略を実現するには、「①社内コミュニケーション」「②人事制度・プロセス」「③環境」の3要素をアップデートし、「組織文化を体現するEX」を向上させる必要があると小泉氏。同社では、リモートでも信頼性や情報のオープンさを損なわないよう「Trust & Openness」を掲げ、EX設計に取り組んでいるという。

「①は、社員の心理的安全性の担保や、社員と経営陣のコミュニケーション方法をオンラインに即して見直しました。②は、採用・評価報酬・育成の3観点から、いかに共感度・納得度・透明性を高められるかを重視。③は、仕事環境・プライベート環境・外部環境の3観点から『いつでもどこでも働ける』組織を目指しています」

また、新時代のオフィスの役割について、「従来は、効率性を高めることがオフィスの価値基準でした。しかし自宅でも効率を追求できる今、オフィスは社員同士のコラボレーションやコミュニケーションを創出する場として活用し、レイアウトもアップデートすべき」と語った。

最後に、コロナ時代を生き抜く経営者へエールを贈った。

「リーダーは言葉が商売道具。どんな言葉で社員を勇気づけ、未来に導くかが重要です。未来志向でピンチを変化のきっかけにしていきましょう」

小泉 文明

株式会社メルカリ 取締役President(会長)
株式会社鹿島アントラーズFC 代表取締役社長

2003年、早稲田大学卒業後、大和証券SMBC株式会社(現:大和証券株式会社)入社。
投資銀行本部にて主にインターネット企業の株式上場(IPO)支援を担当し、ミクシィやDeNAなど数多くのIPOを実現させる。
2007年、株式会社ミクシィ入社。社長室長、経営管理本部長を歴任し、 2008年に取締役執行役員CFOに就任。
2012年、同社取締役を退任し、アカツキ、ラクスル、フリークアウト等の取締役・監査役などスタートアップ企業の経営に関与。
2013年、株式会社メルカリ入社。2014年に取締役就任し、2017年より取締役社長兼COO、2019年より取締役President(会長)に就任。
2019年、株式会社鹿島アントラーズFCの代表取締役社長に就任。
1980年、山梨県生まれ。