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投稿日:2020年07月02日

投稿日:2020年07月02日

「越境型人材でつくる近未来の『イノベーション組織』 ~デザインとテクノロジーを融合させた次世代マネジメントとその実践方法~」 特別セミナーレポート

スピーカー

田川 欣哉氏
株式会社Takram 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー

2020年5月、グロービス経営大学院は、参加者約1,850名にも及ぶ大規模な特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、世界的に活躍するデザインエンジニアであり、デザイン・イノベーション・ファームTakramの代表取締役でもある田川欣哉氏。

withコロナに適応したビジネスが必須

新型コロナウィルスが、社会にさまざまな変化をもたらしている現在。ビジネスシーンにおいて、ターゲットとなるユーザーが刻一刻と変化していることをまずは認識する必要があると、田川氏は話す。

(出所:Takram )


「『are we human?』という本があります。この本では、人とそれを取り囲む人工物の複合体のことを“人(ヒューマン)”と呼んでいます。シビアなコロナ環境下にある欧米では、今後デジタルを中心に、人工物にカンブリア爆発的な変化が生じるでしょう。人工物が変わるので、人(ヒューマン)も質的に変化します。たとえば、これまで時々オンラインミーティングを利用していた人が、オンラインミーティングで完全武装した人になると、質が大きく変化します。今までの僕らが知るユーザー像とはまったく違うユーザーになるということです。ただ、環境は振り子のように揺れており、そのなかでユーザーもまた揺れています。つまり、ユーザーのセグメンテーションも非常に不安定なものになっていくということです」

こうした変化にいち早く気づき、次世代のビジネスで急成長する企業がある。田川氏は、ホームジムを展開するアメリカのペロトン社(PELOTON)を例に挙げる。

「ペロトンでは、デザインが顧客接点のすべてに関わる司令塔の役割を果たしており、デザインを軸に、プロダクトやコミュニティ形成、ブランド管理などさまざまなタッチポイントを管理しています。先日、ゴールドジムが破綻しましたが、ペロトンの株価はこの3ヶ月の間に250%上昇、時価総額も1.3兆円を超えようとしています」

BTCモデルと越境人材

ペロトンのように、環境やユーザーの変化にフィットするビジネスを営むには、複数のBTC型人材(※)によるハイブリッドなチーム作りが必要」と田川氏は説く。ビジネス→テクノロジー→デザインといったバケツリレー的な分業ではなく、一人一人がBTCの観点からアイデア出しやチェックを小刻みに繰り返していくほうが、成功率も高まるという。

「BTC型のチームになると、『テクノロジーのことは分かりません』『ユーザーに興味がありません』ということが許されなくなります。これからの組織は、全社員のBTCスキルを少しずつ育てていく必要があります。BTCそれぞれの専門家と対等に会話ができる、もしくは指示ができる、“越境人材”を育てていくことが大事になるでしょう」

※BTC型人材:ビジネス(B)、テクノロジー(T)、クリエイティブ(C)のすべてを持つ人材

(出所:Takram )


終盤、田川氏は参加者に向けて、以下2つのメッセージを送った。

まずは、ユーザー理解から

ユーザーにインタビューする、ユーザーがいる場所に行く、自分がユーザーになって自社のサービスを使ってみる。これらの行動がデザインを作る第一歩になる。

プロダクトをインテグレーションする

ユーザーが自社のサービスやプロダクトを見たときに一つの人格として感じられるものを目指す。そのためにBTCスキルを磨く。

「コロナによって社会が大きく変わり世界全体が変革に向かって『よし、いくぞ』という雰囲気にあります。皆さんもこの機会をチャンスととらえ、ぜひ結果を出していただけたらうれしいです」。

そう言ってセミナーを締めた田川氏。近未来の組織にとって必要なアクションが具体的に示される、意義深いセミナーとなった。

スピーカー

田川 欣哉氏

株式会社Takram 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー

1976年東京都生まれ。東京大学工学部卒業。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。デザインエンジニア。プロダクト・サービスからブランドまで、テクノロジーとデザインの幅広い分野に精通する。主なプロジェクトに、トヨタ自動車「e-Palette Concept」のプレゼンテーション設計、日本政府の地域経済分析システム「RESAS」のプロトタイピング、Sansan「Eight」の立ち上げ、メルカリのデザインアドバイザリなどがある。経済産業省・特許庁の「デザイン経営」宣言の作成にコアメンバーとして関わった。経済産業省産業構造審議会知的財産分科会委員。グッドデザイン金賞、iF Design Award、ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクション、未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定など受賞多数。2015年から2018年までロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授を務め、2018年に同校から名誉フェローを授与された。