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働き方改革の一環として、「副業解禁」があちこちで聞かれるようになりました。
ネット上で仕事の受発注ができるプラットフォームなどもでき、何かしらの技術や得意技があれば、土日などの空いた時間に仕事をすることができる環境が整いつつあります。
そして、新型コロナウイルスの流行により、「会社に依存しない働き方」を意識する人が増え、副業への注目度がますます高くなっています。
本記事では、「副業でお金を稼ごう!」と飛びつく前に、ぜひ認識しておいていただきたいことをご紹介します。
副業を始める前に認識しておきたいこと
「副業解禁=稼げる」という印象がありますが、ここで、一旦「冷静に」副業について考えてみたいと思います。
企業側の視点
まず企業側からは、どのようなメリットがあるのでしょうか。
よく聞くのは、社員が副業によって新たに知識や経験を得て、本業に良い効果をもたらしたり、イノベーションが生まれることを期待して、副業を解禁するという話です。
一方で、注意しなければいけない側面もあります。
変化の目まぐるしい今、会社の平均寿命は短くなり、一社で定年まで勤めあげることは稀になってきました。
企業からすると、従業員の一生に責任を持つのは難しいので「空いている時間に、どうぞ副業でお金を稼いでください」という考えにシフトしているのではないでしょうか。
直接は関係しませんが、この人手不足の時代に、2019年の秋ごろから、大手企業でも40代後半~50代の方の早期退職制度が導入される事例がたくさん出てきています。
これまでの雇用の慣例を維持することの難しさが顕在しているのでしょう。
従業員側の視点
先述したように、副業解禁は会社の苦しい状況を表しているのかもしれない、といったシビアな見方も持っておきましょう。
また、クラウドソーシングなどでいくら手軽に仕事にアプローチできるとはいえ、雇用契約があるわけではないことにも注意です。
一度受注しても成果が良くなければ、次の仕事はないということも当然起こります。
副業の場合、個人として実力のある人や良い成果を上げる人に依頼は集中します。
つまり、「副業解禁=稼げる」といった単純な話ではないのです。
更にさかのぼれば、企業からプロジェクトベースで「買ってもらえるスキル」が個人として身についているかどうか、という根本的な問いがあるのです。
副業の目的を明確にする
もう1つ押さえておきたいポイントは、自身にとって副業の目的は何かということです。
今の能力の切り売りなのか(=既存能力の現金化)、それとも、将来に向けたチャレンジなのか(=新たな能力開発)を明確にしましょう。
今の能力の切り売り(既存能力の現金化)
例えば、「英語が得意な人が、翻訳の仕事をクラウドソーシングで見つけて、土日の空き時間で副業する」といったやり方は、現在の能力を現金化する副業と言えるでしょう。
このような場合でも、もちろん更なる英語力のアップ、もしくは維持という意味で自分自身の付加価値を高めることもできると思いますが、多くの場合はアウトプットが中心となるでしょう。
将来に向けたチャレンジ(新たな能力開発)
一方で、対価は安くても(極論ゼロでも)、将来取り組んでみたいこと、現在の会社ではできないことにチャレンジするために、能力開発の意味も含めて副業をするという発想もあり得ます。
ある意味で、インプットのための副業です。
例えば、会社ではポジションが詰まっていて、なかなかマネジメント経験を積むことができないが、〇〇というNPOであればできそうといったケース。
友人が立ち上げたばかりのベンチャーで、自分が興味を持っている〇〇という機能をサポートさせてもらうなどのケースが考えられます。
このような副業の場合、将来を切り開くための学びという意味合いが強くなります。
そして、このようなケースは、人づてに紹介されてということが多くなるので、ネットワークの重要性の回でもご紹介したように、個人としてどれほどの人脈を育ててきたかがポイントとなります。
まとめ
一口に副業といっても、様々な見方があります。
「副業=稼げる」といった単純な話ではなく、今の自分や将来の自分にとって何が重要なのかをしっかり見極め、取り組んでいくことが大切です。
著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。