中村氏:私は5人家族ですが、例えば、子どものいる家庭の朝はとても忙しいですよね。家事をこなさなければならないのに、子どもが起きてこなかったり、忘れものをしたり…と細かな課題がたくさんあります。個人的には、そんな課題も解決できるようになることが理想です。HomeXの事業開発では、家庭科の授業で出てくるような「くらし」にまつわる様々な課題解決を志向しているので、プロジェクトメンバーの間では「家庭科を産業化する」「柔らかい領域を狙う」なんて形容しています。「HomeXで人々の暮らしをよくするという取り組みは、これまでに科学の進歩で明らかになってきた『幸せ』や『豊かさ』、『充実した気持ち』というサイエンスをエンジニアリングし、それをプロダクトやサービスにしてビジネスにする」という表現もしています。
CES 2020では、ユーザーの行動を自動認識するハード・ソフトの仕組みを新たに発表。「スポーツニュースを聞いていると壁に試合状況が投影される」「テーブルで食事をすると、メニュー情報やおすすめワインの情報が流れてくる」といった、生活をより豊かにしてくれるデモ展示が行われた。
中村氏:「HomeX」はユーザーのパーソナル情報を学習するので、そこに住む人たちのライフスタイルや好みに合うように提案も進化していきます。生活すればするほど毎日が豊かになっていくことが理想です。
パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏は、CES 2020で自社の課題と目標についてこう言及している。「アナログでの顧客接点はうまく作れているが、デジタルでの顧客接点を強化してエクスペリエンスに強い企業になりたい」。
実は中村さんは、このビジョンに近い新規事業をいち早く推進していた。2017年にシリコンバレーの拠点に赴任した当初に担っていたミッション、IoTサービス「ENY(エニー)」の立ち上げである。渡米前の中村さんの所属は経営企画部門。経営幹部とともに経営企画に携わるかたわら、サイドワークとして「ENY」の事業開発を進めていたのだ。