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意思決定に悩んだ時に見たい映画3本

こんにちは、グロービス・オンラインMBA荒木です。
前回は「コミュニケーション力を高めたい時に読みたい3冊」というテーマで書籍の紹介をしましたが、今回は「意思決定に悩んだ時に見たい映画」というタイトルでお話しします。

リーダーであるかどうかにかかわらず、意思決定というものはついてきますよね。

お客さんからの無理難題に対してどう応えるべきか?
3人の採用候補者のうち、どの1人を選ぶべきか?
今、自分は異動届けを出すべきかどうか?

悩みの大小の差こそあれ、私たちは日々意思決定を重ねている、といっても過言ではありません。

そして、意思決定で何が難しいかと言えば、必ずしもロジカルに割り切れるものではないところにあります。
人と人が作用し合う経営の中において、「感情」という捉えどころのない要素も大事なファクターになりますし、もっと言えば「時の運」みたいな正体不明なものもかかわってきます。
結局、何が正しい意思決定なのか、ということを事前に理解することは不可能であるとも言えるでしょう。
だからこそ、「意思決定」はどんな時であっても私たちを悩ませ続けるし、そして同時に「少しでもその能力を高めたい」というモチベーションが湧き続ける分野でもあるのかもしれません。

さて、今回はそんな「意思決定」を追求するための映画を3本ほど。
敢えて「経営」という領域から離れた映画をピックアップしてみました。
まだ見たことがなければこの機会に是非どうぞ!

1.「八甲田山」





実際に1902年に起きた「八甲田山雪中行軍遭難事件」をテーマにした映画です。914pBfRDxaL._SL1500_
この事件は、参加者210名中199名が死亡、そのうち6名は救出後に死亡という大惨事です。
Wikipediaによると、「日本の冬季軍事訓練における最も多くの死傷者が発生した事故であるとともに近代の登山史における世界最大級の山岳遭難事故」とのことで、その惨事の様子を克明に描いた映画です。

この映画では、実際に行軍に成功した部隊と、失敗して遭難した部隊の2つを対比する形で描かれているのですが、失敗した方についてはまさに「意思決定でよくありがちな落とし穴」にハマるシーンが各所で見ることができます。
例えば、雪中行軍ということの情報収集を十分にせず、その特性を理解しないままに、「組織の理屈ありき」で行軍のプランや体制が決まってしまう、というようなことはその典型です。

「あの部隊には負けられない・・・」
「どうせやるのであればこの目的もついでに・・・」
「せっかくならばこの部隊も一緒に・・・」

こうした思惑がないまぜになり、そしてその思惑が最優先され、結果的にはよく分からない組織体制やプランが組まれることになります。
そして、「そもそも雪山というのがどういうものか」、「本来どのように臨むべきなのか」という考察や分析は二の次、三の次なのです。

「戦う場を十分に理解しないまま、組織の都合だけで勝負に出る」

というこの姿は、ビジネスでもよくある負け戦のパターンに通じます。

そして、映画での1シーン。
追いつめられたこの部隊は、崖の雪山斜面を登る、という無謀な意思決定を行うわけですが、このシーンはもう言葉になりません。
体力尽きて崖から次々に落ちていく隊員達・・・。
しかし、この崖という難関をクリアした隊員たちには新たな悲劇が待ち受けています。
死力を尽くして登ったその先には、希望が見えるのではなく、ただただ無情にも次の真っ白な極寒の世界が広がるだけなのです。
何とか登った先で感じるこの絶望感は、筆舌しがたいものがあります。改めて「意思決定」の重要さを感じさせるシーンです。

この他にも、組織のあり方、現場でのリーダーシップの発揮方法、トップの下につくミドルの役割・・・などなど、ビジネスに置き換えて考えられるシーンがいくつも出てきます。
リーダーの意思決定の本質を考える上で、是非「自分がこの当事者の立場だったらどういう意思決定をするだろうか?」という視点で見ていただきたい作品です。

2. 「ハンナ・アーレント」





ドイツ系ユダヤ人の哲学者であるハンナ・アーレントを描いた作品です。71UybwRa5rL._SL1131_
ミニシアター系の映画で小規模の上映だったにもかかわらず、満員が続き、当初からかなりの話題になった映画。
テーマとしてはナチス・ドイツのアイヒマンの裁判に関する話であり、ややもすると難解なテーマなのですが、テーマに対する知見がある、なしにかかわらず、見た人すべてに深く考えさせる作品になっています。

この作品のメッセージは、アーレントがこの映画の最後に発する8分間の名演説に凝縮されています。
そのメッセージとは、

「考えを放棄した人間は、気付かぬうちに悪の根源になる」

ということです。

つまり、

「なぜこうなっているのか?」
「なぜこれをやる必要があるのか?」

といった根源的な問いを忘れた「惰性の意思決定」を続けていると、結果的に無意識に破滅に至ることになる、ということです。

私たちは往々にして「組織の要請」に基づいて、深く考えることのないままに意思決定をしてしまうことがありますよね。
「まあ仕方ない、ここで何か考えても無駄だ」
「どうせ今までもやってきたことだ」と。
しかし、悪意を持った意思決定以上に、この思考停止の姿勢こそが危険なのだということを、この映画は気付かせてくれます。

実はこの話は先に紹介した「八甲田山」の意思決定においても根底に流れているテーマでもあります。
上官の指示に対して、思考停止のまま言葉を飲み込むリーダー。
結果的にはこういった些細な「惰性の意思決定」の積み重ねが、取り返しのつかない悲劇を生むことになるのです。

考えることを放棄しない「思考の粘り強さ」こそが何よりも重要なことである、ということに気付かせてくれる一本です。

3. 「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」





突然ですが、皆さんの目の前にA案とB案があったとします。

A案は結果もある程度想定でき、それほどリスクもありません。多くの人が賛同しています。しかし、A案ではちょっとした改善策に過ぎず、こういう方向性では目標を実現するのは難しいことは直感的に分かっています。
B案はその逆です。抜本的な方向転換になります。こちらを選んだときは、どうなるか分かりません。分かっていることは、これを選べば一部のお客さんからは猛烈なお叱りをいただくとともに、社員からも猛反発が来る、ということです。ただ、事業としてのあるべき姿は、こちらであることは自分なりに理解しています。

さて、皆さんはEasyなA案か、茨の道のB案、どちらを選ぶでしょうか?

こういう経験をしたことであればあるほど、簡単に「B案」ということは言えないでしょう。
B案であることは理解しつつも、「まずは態勢を固めるまではA案を選ぶ」とか、いろいろな理屈をつけて難しい意思決定から逃れようとする気持ちは、深く理解することができると思います。

この「セント・オブ・ウーマン」という映画は、まさにその人生の岐路に立った若者のストーリーです。516Rj4NTmoL
この映画は「名画」としての評判も高いので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
盲目の軍人を演じたアル・パチーノが、アカデミー主演男優賞を受賞したことでも有名な作品です。

この映画で有名なのは、「ハンナ・アーレント」と同様に、最後の名演説です。
いわゆるB案(難しい意思決定)を選び、結果的に絶体絶命に追い込まれた若者を、アル・パチーノ演じる主人公が大演説を打って救い出すシーン。
そこでの一節を紹介しましょう。

『私も何度か岐路に立ったことがある。 どっちの道が正しい道かは判断できたと思う。 いつも判断できた。だが、行かなかった。そっちが困難な道だからだ。 そして、このチャーリーも岐路に直面した。そして彼は正しい道を選んだ。 真の人間を形成する信念の道だ。』


この最後の「真の人間を形成する信念の道」、原文では、

"It's a path made of principle that leads to character."

というセリフなのですが、このセリフが意味するところは、

「岐路に立ったときの意思決定こそが、自分という人間を作り上げる」

ということだと思います。

裏を返せば、

「今の私たちの人格は、過去どれだけ厳しい道を選んできたかに依るものだ」

ということかもしれません。

今までの自分が行ってきた意思決定を反省するつらい言葉でもあり、そしてこれから来るべき自分の意思決定に対してくさびを打ち込んでくれる言葉でもあると思います。

岐路に立った時、意思決定に迷った時、もう一度立ち戻りたくなる映画です。



さて、一見すると脈絡のない3本の映画でしたが、どれも「意思決定」の本質をついた素晴らしい映画です。

たまには読書ではなく、映画からも学ぶというのも面白いですよ。
まだ見たことがないものがあれば、是非時間を見つけて見てはどうでしょうか。

そして、もしこのリーダーとしての意思決定について、ビジネスのテーマで深めていきたい、みんなと議論したい、と考えるならば、「組織行動とリーダーシップ」という科目がお薦めです。オンラインで受講可能です。是非ご検討ください。

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