グロービス・ビジネスナレッジ

GLOBIS 知見録PICK UP

テレワークでも心理的安全の高いチームをつくるマネジメント手法の転換が必要

2020年07月23日

  • 変革
  • キャリア
  • 新型コロナ
小室 淑恵 株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長

人口オーナス期のリーダーの役割は、「リラックス」の提供

――これからのリーダーに求められる役割とは。


小室:リーダーの役割というのも大きく変わってきます。実は今回のコロナのこと以上に、社会背景として、リーダーの役割は大きく変わってきているのです。60年代から90年代の人口ボーナス期は、労働力が余っていて、いかに均一のものをたくさん作るかという時代。男性ばかりで長時間労働をして、「右向け右」という組織をつくると非常に生産性が高い時代でした。


その時は主にティーチング法。指示命令型でちょっと緊張させるのが大事で、ピリッとさせる役割が重要でした。厳しさを前面に出して、カリスマ性で引っ張っていく――こういうリーダーが、リーダーの素質としては重要だったかと思います。


でも今は、人口オーナス期です。この時期というのは、働く人が少ししかいなくて、支える側の人、子どもとか高齢者がたくさんいる社会で、常に労働力人口は足りないんです。そしてお客さまは、すごく多様な商品サービスを欲しがる。


そうなってくると、男女さまざまな労働力が短時間勤務の人も含めて多様に働いて、「2倍出してでも御社のものしか欲しくない」と言われるような、従来の概念を超えるイノベーティブな商品サービスを作って勝っていく、こういうモデルになるわけです。


こうなるとリーダーの役割は、今までにない斬新な発想が出るようなリラックスを提供することなんです。アイデアがばんばん出るようなお互いの信頼関係が高い職場、こういう状態を「心理的安全性が高い」と言います。この心理的安全性の高さを作れる、リラックスさせられる、そして多様性を認めるようなリーダー、こういう人がそのチームの生産性を最大化して評価されるリーダーということになるわけです。


この心理的安全性の高さというのを、リモートでも作れるかどうかということが大事になってくるわけです。


前編でご紹介した朝夜メールをメンバーが送ってきたら、「この仕事に2時間もかかるの?」というツッコミメールを返すのではなくて、「今日この仕事やってくれるんだ、ありがとう」「昨日その仕事、そんなに早く終えちゃったの、ありがとう」というように、それぞれが得意とする仕事を見つけて、まず多様性の中の特に良い部分に目を向ける。


「そういう数字関連の仕事、俺は苦手なんだけど、君は本当に速いよね」というようなリスペクトを示して、それぞれが疑われていない、信頼されているという気持ちで、それぞれの場所で安心して仕事ができるような声掛けをしていく。


この声掛けを朝メールへのコメント、それから夜メールへのコメントというところで返していくことによって、チームが離れていても一体感を持って仕事ができるし、自分のいいところに目を向けて声を掛けてくれているという、多様性を認められている安心感を作れると思います。


そういう安心感をしっかり作った上で、「ここはAさんの朝メールを見ると30分でできているよ。あなたの朝メールだと2時間になっているけど、ぜひAさんにコツを聞いて、あなたも30分でできるようにしてね」というような、よりステップアップしてほしい部分についても、ちゃんと育成の声掛けをしていく。こういうことができると、生産性が上がると思います。


間違っても「A君は頑張っているのに、Bさんはどうしたんだ」「B君頑張っているのに、Cさんどうしたんだ」のように一匹狼型で競わせるようなマネジメントの仕方をしないように。これは人口ボーナス期には有効だったけれども、オーナス期にはお互いが疑心暗鬼になって助け合わなくなるだけです。声掛けの仕方で新しいマネジメントをやっていただけたらと思います。


そして、「誰々さんには幼い子どもがいるから、みんなでこういう時間帯はカバーしようね」と伝えていく。お互いの仕事の仕方を、どうやって連携したらチームとしての生産性が上がるのかに目を向けさせる。あくまでも一人ひとりの時間当たり生産性を評価しているんではなくて、チームとしての時間当たり生産性を高める行動を評価しているんだよというふうに、言葉でしっかり伝えてあげていただけたらと思います。


その上でもう一つ重要なのが、情報を共有する人を褒めるということです。今まで長時間労働が可能な、時間外がいくらでもできるタイプの人というのは、仕事をブラックボックス状態でやるのが大好きで、自分の袖机に秘伝のタレみたいな資料を入れている人が多かったと思います。


そういう人は、自分がすごくチームの仕事を背負っているという感覚があり、本音の部分では誰もが自分と同じレベルの仕事をできるようになることが嫌なんです。だから情報共有をしないというスタイルで仕事をしている。


でもそうすると、短時間勤務の人とか在宅勤務の人は、いつも情報から疎外されて戦力になれないという、こういうことが今までずっと起きていました。


これからみんな在宅勤務ですし、時間内で成果をあげるためには、どんどん積極的に情報をクラウドに置いて誰でも自由に使えるようにするとか、仕事に必要な情報は誰でもちゃんと見ることができるようにするなど、情報を抱え込まないで共有する人を評価するようにすると、チームの生産性が高まります。「何を評価しているのか、評価対象も、今までとは変わってきたよ」というふうに言ってあげていただくといいかなと思います。

マネジメント手法の転換は必須

――これからの企業に求められるマネジメントとは。


小室:企業としてのマネジメントですけれども、これから会社としては、各リーダーにどういうマネジメントの転換をしてもらいたいのかを明確に示すことが大事だと思います。「人口ボーナス型のマネジメントから、オーナス型のマネジメントに、あなたは切り替えるのが仕事なんだよ」というふうに。


「人を褒めるのは、俺の性格じゃない」みたいにおっしゃるマネジメントの方がいますが、性格の問題ではなくて、これはマネジメント手法として、管理職たるものはそういうスキルを身に着けなければいけないということです。コーチング的に問いかけていって、承認をしっかりするというような、マネジメント方法に変えていってくださいというようなことを、会社全体から言っていく。


そして、育児中の人だけを配慮するのではなく、それぞれの個人の事情に合わせた働き方があります。なので、個々人の多様性ということを最大限に生かすマネジメントしてください。


ここで「育児女性に配慮してください」というアナウンスにはしないでほしいのです。配慮されると「肩身が狭いな」というふうに、事情を持ってる人のモチベーションが下がってしまいますので。育児だけではない。傍目からは分かりにくいけれども、介護している男性もたくさんいます。それぞれに必ず事情がありますから、それらの事情の中で最大のパフォーマンスを上げられるように、多様性を活かすマネジメントしてください。そして会社側からも、「マネジメントの転換が求められているよ」という発信をしてください。

起床後13時間しか集中がもたない人間の脳に合わせて就労ルールをつくる

具体的な就労ルールですが、在宅勤務だと、働く時間帯にずれが起きることが危惧されます。どんどん後ろにずれていってしまう人や、いろんなことを間に挟めながら自分のペースでやりすぎて、全体的に薄くなってしまい、「まだ平気まだ平気」といって遅い時間まで仕事をしてしまう人もあります。


でもこれはとても危険です。人間の脳は朝起きて、たった13時間しか集中力が持たないので、6時に起きた人であれば午後7時ぐらいからはすごくミスが起きやすくなります。


慢性疲労研究センターの佐々木センター長によると、睡眠は前半が身体の疲れを取る役割で、後半が精神の疲れを取る役割なので、メンタル疾患を予防するには睡眠時間の後半部分が大事、すなわち約7時間寝ないと、メンタル疾患になりやすくなります。


7時間の睡眠が取れて、起きてから13時間以内に重要な仕事を終える。これがちゃんとデザインされていないと、会社としてはリスクも高まるし、集中力の落ちている時間帯に割増を払うというような、利益が出ない形になる。万が一過労死が起きたりしたら、著しいブランド毀損まで起きてしまいます。


これをしくみで解決するには、勤務と勤務の間を11時間あけることです。これを勤務間インターバルといいます。どんなにリモートでも、こういうことをちゃんと把握できる状態というのを作っておくのが大事です。朝夜メールに書いてもいいと思います。前日に仕事を終えてから11時間たってから業務を開始していますよ、と朝メールで宣言してみてください。


勤務間インターバル制度は、EUでは全ての国で批准されています。前日帰宅した時間から11時間たたないと、翌日の業務を開始できないことになっているのです。


11時間というのは、「通勤の時間や食事の時間など、いろんなものを入れたときに、7時間の睡眠を守ろうとするなら11時間」という考え方です。今回リモートの場合には1時間ずつぐらいの通勤が要らないと思いますので、せめて9時間がきちんとあいているかどうかを意識して仕事を進めていくべきです。


できれば会社として、在宅勤務の際の注意事項みたいな形で、「間をあけて仕事して、こういう点には注意をするんだ」というスタンダードをちゃんと出していかれるといいかなと思います。


また、できる限りフレックスタイムを導入して、柔軟に仕事ができるようにしていくのもいいと思います。今回おそらくお子さんが小さいご家庭などは、フルタイムで一日子どもを静かにさせておいて7時間というのは、なかなか難しくなってくるかもしれません。そうすると、一日5~6時間ずつ働いたとして、足りなかった分を土曜日に追加で稼働するような仕事の仕方であったり。


あとは早朝に1時間先に仕事をしておいて、子どもたちが起きてきたら対応して、また昼に1時間休んでというような形。そのいろんなところで仕事した分を、他の所に休憩で入れていったり、30分おきにちょっと休みを入れていったり。子どもの対応をしたり、宿題を見たり、そういうことをしながら一日をデザインしていくケースが出ます。


どういうふうにやったら、法を犯していない、ちゃんとしたやり方なのかというガイドを作って発信してあげるというのも、やっていかれたらよいと思います。


弊社の場合も、みんなで就業規則を今一度確認しました。「在宅勤務であったとしても、こういう予定は申請が必要です」、「休憩の取り方はこんな形にしていきましょう」と。うっかり間違いをしてしまわないようにということをアナウンスすることも大事かなと思います。


こうやって、経営者も個人もマネジメントも、「もう従来の働き方ではいられないんだよ」、「もう状況が変わったんだよ」ということを認識して、「いっせーのせ」で飛び移っていくということが重要かなと思います。


前編はこちら

小室 淑恵株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長

株式会社資生堂にて社内ベンチャー起業後、2006年に株式会社ワーク・ライフバランス設立、代表取締役に就任。残業を削減して、業績を向上させるコンサルティングを900社以上に提供している。「経営戦略としてのワーク・ライフバランス」などの講演を年間約250回 企業や行政・教育機関などに依頼いただいている。

2014年9月からは、安倍内閣産業競争力会議の民間議員。2015年2月から、文部科学省中央教育審議会委員。他に内閣府子ども子育て会議、経済産業省産業構造審議会、厚生労働省年金部会、農林水産省フードアクションニッポン戦略会議などの委員を務める。

2004年、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2004・キャリアクリエイト部門受賞。2006年、日本ブロードバンドビジネス大賞受賞。2014年、ベストマザー賞(経済部門)受賞。金沢工業大学 客員教授。

著書は『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『全員成果を出して定時で帰る会社の毎日楽しく働く秘訣』(中央公論新社)、 『あなたが輝く働き方』(PHP研究所)など29冊。

プライベートでは二児の母であり、自身も社員も全員残業ゼロ、有給消化100%で創業以来増収増益を達成している。

RELATED CONTENTS

MOVIE CONTENTS

グロービス経営大学院では、MBAプログラムの「体験クラス」をオンラインにて開催しています。

グロービス経営大学院では、MBAプログラムの「体験クラス」をオンラインにて開催しています。

実践性を重視したグロービス独自の授業スタイルをご自身の目で確かめてください。

  • LINEで送る

テレワークでも心理的安全の高いチームをつくるマネジメント手法の転換が必要のページ。実践的なMBA(経営学修士)のグロービス経営大学院。リーダー育成のビジネススクールとして、東京・大阪・名古屋・仙台・福岡・横浜・水戸・オンラインでMBAプログラムを提供しています。