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祝・クラブ設立1周年! ゲスト6名を招いて製薬業界の未来を考えるスペシャルナイトを開催 ――グロービス経営大学院・公認クラブ「製薬ビジネスの会」 イベントレポート②

2019年08月27日

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クラブ活動 製薬ビジネスの会 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。


前回のインタビューに続き、先日行われたグロービス経営大学院 公認クラブ活動「製薬ビジネスの会」が主催するイベントの内容をお届けします。

「これからの健康・医療に求められる産官学連携」 〜パネルディスカッション〜

■異なる立場から医療に携わる3名

続いてのプログラムはパネルディスカッション。パネラーは、医療法人社団鉄祐会 理事長/ヘルスケアリーダーシップ研究会 理事長の武藤真祐氏、大阪大学産学共創本部 特任教授/医療法人DEN 理事長/株式会社Medical Compass CEOの宮田俊男氏、厚生労働省  前医政局 地域医療計画課 課長補佐の久米隼人氏の3名。モデレーターは独立系アクセラレーター・Beyond Next Ventures株式会社 マネジャーの鷺山昌多氏が務めた。

(左から、久米氏・宮田氏・武藤氏・鷺山氏)


まずはパネラー3名が自身のプロフィールについて紹介した。


武藤氏は循環器内科医としてカテーテル治療に従事し、2002〜2003年にグロービスで学んでいた。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーへ。

(武藤氏)


「医師でいるだけでなく、もっと勉強したいと思ったのです。ただ、提案してあとは現場に任せるというコンサルティングは自分には合わないと感じ、少子高齢化社会に貢献しようと在宅訪問専門のクリニックを開業しました」


現在は、総勢医師60名・患者1,800名を抱え、5つの訪問診療クリニックを運営。PEファンドと組んで薬局や病院の買収、現場のオペレーション改善なども手がけている。また、オンライン診療システムの開発導入、訪問看護ステーションとデジタルヘルス事業、10年で卒業生400名を輩出したNPO法人ヘルスケアリーダーシップ研究会の運営などにも従事している。


宮田氏は心臓外科医として、人工知能やビッグデータを用いた人工心臓の開発に早期から取り組んできた。その後、厚生労働省で薬事法改正などに従事し、現在は大阪大学の特任教授を務めている。

(宮田氏)


「僕の仕事は産官学をつなぐこと。最近では、厚労省や総務省や都庁にかけあい、救急車と病院をITでつなぐ取り組みも行っています。自分たちでクリニックも経営しているので、新しい取り組みを試行する場もある。何かアイデアがあればどんどん言ってください」とコメントした。


そして久米氏は、厚生労働省の元医政局勤務。地域医療構想、医師偏在対策、医師の働き方改革、オンライン診療などの医療政策に携わったのち、今年1月から人事課に在籍している。

(久米氏)


「現在の医療において、患者さんのためになっていないのでは?と感じる部分に革命を起こしたい」と自身の想いを語った。

■産官学それぞれの立場から見た、日本の医療の課題

モデレーター鷺山氏からの最初の問いは、「日本の医療における課題は?」。まずは「官」の立場にいる久米氏が次のように述べた。


「少子高齢社会における医療費の問題と医療スタッフの確保は、これからの医療を考える上で大きな課題です。私が数年前から医療政策に取り組んできた中で、力を入れてきたのは、地域医療構想の原点である『医療情報の可視化』です。どこの病院で何をしたかという医療データや、各地域の疾病発生率をもとに必要な医師数や病床数などの医療ニーズを導き出すことを進めていました。日本は民間の病院が多いため、地域医療体制の効率化は、地道なデータ収集と話し合いで進めるしかなく、なかなか進捗がないのが現状です。1年前には、医師が一部の地域に偏っていることへの対策として医療法・医師法を改正し、必要な病院に適切な数の医師が配置されるように議論を進めるという取り組みを進めているところです」


「学」の立場である宮田氏は、「日本の医療の課題は『お金がない』『人材がいない』『ルールがきつい』」と発言。「高齢化の日本はどうしても医療費がかかるので、限られた財源でまわす必要があります。また、僕が研修医の頃は1年の半分以上は病院に寝泊まり。長時間労働の現場に人材は集まりません。現状を変えるには規制改革が必要なわけですが、そこは日本がもっとも苦手とする分野。どこを最初に変えるかという『順番』が産学官連携では重要になってくると思います」

10年間医師として患者と向き合ってきた武藤氏は、あえて二人とは異なる視点から課題に言及した。


「日本の医療の質は世界的に見ると高い方だと思いますが、医師目線だと課題がいくつもあります。1つ目は、自身の健康データを正確に記録している患者はほぼいないので、医師は患者の本当の状態がわからないまま診察しなければならないこと。2つ目は、『酒は控えるように』といった医師の指導を患者が忘れる・実践しないなど、コミュニケーションの問題。その原因は医師・患者双方にあり、これから高齢者や認知症患者が増えるとその傾向は顕著になるでしょう。3つ目は、医療機関へのアクセスの問題。一人で病院に行けない人は誰かが仕事を休んで付き添わなければならず、在宅医療も増えていないのが現状。4つ目は、いい薬を処方してもきちんと飲む人が少ないこと。オンラインでフィードバックする仕組みが絶対に必要です」

産官学連携については、「行政は規制緩和や正しいルール規定などの仕組みづくりを行い、研究機関と民間はエネルギーそのものをつくる。3つの連携は欠かせない」と言及した。

■製薬業界に関わるグロービスの学生が取り組むべきこと

「産官学連携による新しい取り組みはありますか?」という鷺山氏の問いには、各々が現在の取り組みを紹介した。

(鷺山氏)


Medical Compassというベンチャー企業を経営する宮田氏は、症状を入力すると適した市販薬・ヘルスケア用品が紹介されるアプリ『健こんぱす』をリリース。薬剤師による症状の診断が困難で、医療費も医師の人的リソースも割かれるという日本の課題にメスを入れる取り組みだ。「厚労省や医師会と相談しながら進めました。産官学を組み合わせることで、さまざまなことができると実感しています」


一方で久米氏は、武藤氏とともにオンライン診療の推進に取り組んでおり、診療報酬のガイドラインなどを整備している段階だという。「医療はイノベーションを起こすのが難しい分野ですが、安全性を確保しつつイノベーションを起こせるように進めています」

製薬ビジネスの会は、製薬会社勤務・医師・看護師・ヘルスケア領域での起業家などのメンバーで構成されている。製薬業界に関わる今日の参加者が考えるべきことや行動すべきことは何だろうか。


「成功体験にとらわれ新しいことが生み出せない」と今の業界を評した武藤氏は、「薬をつくるだけでなく、必要な量を必要なときに飲める環境をつくるべき。製薬会社は今のビジネスモデルを考えなおす必要があるでしょう」とコメント。


宮田氏は、製薬会社と行政における連携強化の必要性について言及した。「たとえばワクチンの偏在にしても、製薬会社と行政がタッグを組んで、各供給先に適切な数が行き渡るような仕組みを考えるべき」


厚生労働省の若手メンバーとともに2040年以降の社会保障・労働政策を考える会を運営しているという久米氏は、「製薬業界を取り巻く環境は激変しており、ここ10年でさらに大きく変わるでしょう。製薬業界に関わるグロービスの学生のみなさんとも意見交換がしたいので、Facebookやメールでぜひメッセージを送ってください」とコメントした。

■これからのヘルスケアをつくっていく産業界の一員として

法改正により、外来医療のビジョンと必要な医療体制を各都道府県で策定するよう定められたが、そうした医療の改善に向けた取り組みを推進する地域のプログラムに参加しないドクターも一定数いるという。その改善策について参加者の一人から相談が寄せられた。


武藤氏は、「本来は医師一人あたりの患者数を定め、予防から治療まで責任を持つ制度に変えるべきですが、なかなか難しいのが現状。それより現実的なのは、結果にコミットするバリューベースドヘルスケア(効果やコスト削減を追求するのではなく、医療行為の費用対効果を高める)にシフトすること。厚労省はぜひそういう仕組みに変えてほしいと思います」と語った。


また宮田氏からは、「民間の立場から言うと、今のMRの勉強会には、堅苦しさがあったり臨床の現場とはかけ離れていたりと課題もあります。製薬業界は堂々と厚労省と戦うべきですが、その代わりMR自身も今一度、襟を正す必要があるのではないかと思います」と鋭い意見が飛んだ。


最後に武藤氏は、参加者へのエールでディスカッションを締めくくった。「製薬業界がこれから変わるのは間違いありません。みなさんは今日ここに勉強しにきているくらいだから、業界で何かを成し遂げようと思っているはず。これからのヘルスケアをつくっていく産業界の一員として何ができるか、会社などの立場を超えて、このような場でぜひ考えてほしいと思います」

製薬ビジネスの会のキャッチフレーズを全員で考えよう 〜伊藤羊一氏〜

ゲストと参加者による写真撮影後、ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト/Yahoo! アカデミア学長であり、教員の伊藤羊一氏による講演がスタート。「20分で自由にやってくださいと言われたので…」と前置きした伊藤氏からは、「製薬ビジネスの会のキャッチフレーズを全員で考えよう」というユニークな提案がなされた。

(伊藤氏)


「NIKEでいう『JUST DO IT.』のように、行動様式を簡潔にまとめたWayを考えましょう。まずは5〜6人ずつのチームをつくって、最初の1分は個人で考え、あとの5分は各自の案の紹介といずれかの案1本に絞る時間にあててください。その後、2チームごとに多数決や話し合いで対決し、2分半でさらに1本に絞ります。そうすると5〜6案が残るので、最後にみなさんで多数決をとって決定しましょう」。伊藤氏がその場で代表幹事の平瀬氏にOKをとり、ここで決まったWayはクラブの正式なキャッチフレーズとして使用されることとなった。

チームごとの会議を経て、最終的に残ったのは6案。各チームのリーダーから案が発表され、参加者全員による挙手制の多数決で「垣根を飛び越えろ」に最終決定した。


垣根の多い製薬業界だが、優秀なアセットを活かして垣根を飛び越え、おもしろい世の中をつくっていこうという想いが込められているという。今後、クラブ活動のさまざまなシーンで登場するであろうこのキャッチフレーズにぜひ注目してほしい。

イベントを終えて~参加者にインタビュー~

2019年に入学した新入生によるスピーチ、幹事の松田香絵氏による閉会の挨拶を経て、約3時間にわたるイベントは盛況のうちに終了した。このあとは別会場にて二次会が開かれるという。二次会に向かう参加者の方々に本日の感想や今後の意気込みについてお話を伺った。

(松田氏)


2018年の入学式で隣に座った平瀬氏に、グロービスの学生同士で製薬を軸にしたつながりをつくろうと声をかけた幹事の松田氏。今回のイベントについては、「入学1周年、クラブ発足も1周年。会員数も少しずつ増えている今、2019期生も含めてさらに交流を広げたいと思いこのイベントを企画しました。豪華なゲストのみなさんに圧倒されながらも、真剣に聴き入ってくれていたのでよかったです。このような会は交流のみに留まってしまいがちですが、パネルディスカッションや教員の方々のお話などを盛り込んだことで、新たな気づきを提供できたのではないかと思います」と語った。


また、クラブの今後については、「ヘルスケア領域に限定するとできることが限られてくるので、ほかの業界の方々もお招きして学びが広がるような勉強会を開催していきたいです。今日のような会を通じてコネクションもどんどん増やしていきたいですね」とコメントをくれた。


2017期生で今春卒業した小林 好真氏は、卒業後も幹事の一人としてクラブ運営に携わるという。

(小林氏)


「製薬ビジネスの会での出会いは私の財産。製薬業界は広いので、会社だけだとつながりたい人とつながるのがなかなか難しいですが、クラブを通じてネットワークが格段に広がりました。個人としてヘルステックに興味があるので、その分野の勉強会や、みなさんのコネクションづくりの手助けになるような会を企画していきたいです」


2019期生の清水 ひとみ氏は、製薬会社に勤務して11年目。「製薬業界は変革・進化に迫られている。その中で何をすべきか、現場だけでなく業界全体の考えや動向を知りたいと思い、このクラブに入りました」

(清水氏)


同じく2019期生の杉井 雄汰氏は、IT業界で製薬業界の物流管理やデータの利活用に従事。今日だけで30名と名刺交換をしたという。「製薬業界の方々は、私が想像していた以上に先進的なアイデアを持っていると感じた、とても刺激的なイベントでした。そのアイデアをどう実現するのか、ITのプロの立場としても垣根を飛び越えてチャレンジして、日本の製薬ビジネスを変えていきたい」と熱い想いを語ってくれた。

(杉井氏)


多方面から製薬ビジネスに関わるメンバーが集い、精力的に情報共有や意見交換を行っている製薬ビジネスの会。一人だけでは、あるいは会社にいるだけでは得られない気づきや刺激を得て、変革を迫られている業界をなんとかしようと一人ひとりが情熱を燃やしている。製薬業界にすでに関わっている方はもちろん、ヘルスケア領域でイノベーションを起こしたいと画策している方も、クラブの今後の活動にぜひ注目してほしい。

「製薬ビジネスの会」とは

本クラブには、製薬企業を中心に、医療、IT、コンサルなど幅広く製薬ビジネスに関わるメンバーが400名近く在籍しております。各分野の取組み事例を共有、議論することで、既存ビジネスの変革および新規ビジネスの創造を促進するとともに、会員相互のネットワークを構築し、会員それぞれの自己実現を目指しています。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。


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