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日本の農業最前線〜アグリテックが変える農業の未来〜

2018年11月20日

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  • あすか会議
  • テクノベート
  • 創造
  • 変革
  • 最先端

モデレーター

松本 泰幸氏 株式会社日本アグリマネジメント 代表取締役社長、グロービス経営大学院 教員

パネリスト

岩佐 大輝氏 株式会社GRA 代表取締役CEO
小林 晋也氏 株式会社ファームノートホールディングス 代表取締役
佐々木 伸一氏 株式会社ルートレック・ネットワークス 代表取締役社長

※あすか会議とは


経営者、政治家、学者、メディアなどのトップリーダーと、グロービスのMBAプログラムの学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い開催する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第14回目となる2018年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,400名が京都に集い開催しました。

日本の農業の問題点

人手不足や高齢化など様々な課題を抱え、衰退産業とされてきた日本の農業。そんな状況を変えたいと新たに企業やベンチャーが参入し、業界に変革を起こしつつある。実際に作業の自動化やデータ分析による見える化など、テクノロジーが農業の在り方を根底から変え始めている。そのような変革に取り組んでいる一人であり、グロービスの卒業生でもある岩佐氏は、震災後に地元であるいちご産地の復興をめざしてGRAを起業。この5年間の経験を通じて感じたという農業の課題を述べた。

「農業は一人当たりの労働生産性があまりにも低い。農業者の高齢化も加速しており、地域の従事者の65%以上が60歳以上のことも普通だ。このまま行くと市場が大きく、機械化や大規模化ができる野菜は残るが、ニッチな葉物野菜などは、日本で作る人がいなくなる。つまりおいしい野菜が食べられなくなるということだ。生産性と所得をアップさせ、農業従事者を増やすことが重要だと改めて感じている」


センシングによる牛の監視サービスを提供するファームノートホールディングスの小林氏も「従来の酪農や畜産は、単純労働に時間を取られて利益に繋がる発情のサインを見逃しやすい。そのために生産効率が非常に悪かった」、デジタルファーミングによる農業の見える化を実現したルートレック・ネットワークス佐々木氏も「これまで農業は個人の経験と勘で行われてきたため、各農家に大きな収入差が出ている。知見や情報が個人に留まることで、新規就農者が事業を軌道に乗せるまで時間がかかり、ベテランとの差も大きくなる。休日もないとなれば、従事者は減る一方」と指摘。属人化が業界の進歩のボトルネックとなっている状況を語った。

テクノロジー導入による問題の打開と独自性の追求

畜産や酪農は農業の中でもテクノロジーと親和性が高い分野だ。小林氏はサービスの仕組みに併せ、勝機を得た競合他社にはない独自性、そして「経営、テクノロジー、デザイン」の重要性にも言及した。

「現在、牛を見張るセンサとスマホ用の管理アプリケーションをフリーミアム(ベースとなる商品・サービスを無料で提供し、その中で、何%かのユーザーが、有料のプレミアム商品・サービスを利用することで収益を得るモデル)で約2,400件に提供中だ。課金ユーザーは約15%だが、弊社社員90人を賄える売上が立つ。牛は資産を生み出す資産だけに、一農家あたりの支払金額も高い。この資産効率の向上がこのビジネスの重要な軸となるが、牛が生物である以上、個体差や体調、病気や老朽化などの要素が影響し、安定したコントロールが非常に難しい。そこで弊社は獣医師を採用し、獣医学をベースにしたデータ分析や経営の改善提案を始めている。センサで伝えるという段階から、さらに踏み込んでいく」


「ビジネスにデザインは必須だ。入力や処理に力を入れても、出力がわかりにくければユーザーには刺さらない。弊社はセンサをつけるだけでスマホに通知が来る単純な構造。既存のPC専用通知システムの応用だが、スマホ向けに改良したことで新たな市場が開けた。デジタルを組みこむ時は、導入先の産業に適した形で入力・処理・出力の効率よく、特に出力のデザインを意識することが大事だ」

アグリテックの未来

アグリテックの未来も語られた。例えば、佐々木氏の提案は、農業従事者が持つ本来の底力を活かす形だ。

「野菜で生産性を上げる手段として、高品質化と大量生産化がある。これらを水やりと肥料やりだけで調節できる点に着目したのが弊社だが、その作業を一人でもできるのが強みだ。高齢化もむしろチャンス。高齢者をサポートするツールや新規就農者が参入しやすい仕組みをIoTで確立させる。今のうちに日本の農業スタイルを転換させれば、10数年後に中国が高齢化を迎えた頃に農業教育を輸出するビジネスなどに活用できるはずだ。他にもクラウド上に技術や知見を蓄積させて習得を早めたり、AIを活用して年一回の収穫時期を短縮させたりと、新たに取り組める分野は多い」と語る。


また岩佐氏は、未だに残る農業領域での苦境をクリアするための提案と想いを語った。

「中長期的には、農業人口とニッチな作物の生産者の確保が大事だ。前者はテクノロジーを導入し適切な対応をしても減少の速度には勝てないだろう。外国人労働者に頼る必要が出てくるので、業界全体で受け入れる仕組みづくりが重要になる。さらに今後はビジネスのみならず、農業従事者のライフスタイルも含めて提示し、新規層に興味を持ってもらう活動も必要だと考えている」


テクノロジーとアイデアを組み合わせれば、農業ビジネスに参入することはけっして難しくない。だがその前に重要な点があると佐々木氏は力説した。


「地域社会に存在するコミュニティにまず信用してもらうこと。新参者が商品を売りつけるような形ではダメ。今従事している人にとって、農業はどういうものなのかを考え、そうした人たちと肩を並べて困りごとを聞く。その上で自分の想いや志を伝えて協力を仰ぐという真摯さが必要だ。マーケティングが通用しない世界なので大変だが、そこを乗り越えられれば、味方になってくれるだろう」


 その土地に長く暮らし、自然と戦いながら農業に従事してきた地元の人々とのコミュニケーション。ビジネスと人の関係性の本質を、改めて確認できるセッションとなった。

編集後記

登壇者による講演またはパネルティスカッション形式でのセッションが終了後、夕食会で参加者同士での交流を楽しんだ後、「ナイトセッション」が開催されました。

ナイトセッションとは、各界のリーダーや著名人、講師たちとインフォーマルな雰囲気の中、少人数でテーブルを囲み、議論し語り合える時間です。普段の講演会やクラス等では知ることができない、登壇者の今の関心や熱い想い、これから成し遂げようとしている事など、この場でしか聞くことができない話をしていただきました。

当日の様子を写真で紹介いたしますので、ぜひご覧ください!

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

モデレーター

松本 泰幸氏株式会社日本アグリマネジメント 代表取締役社長、グロービス経営大学院 教員

パネリスト

岩佐 大輝氏株式会社GRA 代表取締役CEO

小林 晋也氏株式会社ファームノートホールディングス 代表取締役

佐々木 伸一氏株式会社ルートレック・ネットワークス 代表取締役社長

(※肩書は登壇時のものになります。)

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