活躍する卒業生・在校生

卒業生のキャリアケース:起業

卒業生のキャリアケース:起業

磯貝 剛成さん

異業種で培った経営ノウハウで、
伝統的な豆腐業界の活性化を図る

NTT(日本電信電話株式会社)、株式会社eBOOKOFF(現ネットオフ株式会社)を経て、とうふプロジェクトジャパン株式会社代表取締役

磯貝 剛成さんTakeshige Isogai

※年齢・肩書きはインタビュー当時のもの

今までのキャリアについて

~大企業からベンチャーの経営陣、そして起業へ~

 新卒の時の就職活動は、社会に影響力のあるサービスを立ち上げたい、経営に近い環境に身を置きたいという想いから、グループ会社を多数抱える大企業に的を絞って活動しました。中でも事業の将来性を感じた通信関連を中心に活動した結果、当時、日本最大の企業であり、日本最大数のグループ会社を有するNTT(日本電信電話株式会社)から内定を頂きました。
在籍した9年間は、主に営業。最初の3年間は、地方で通信機器のコンサルティング営業を担当。全国のトップセールスマンに囲まれながら、営業力や提案力を磨く日々を送りました。また、勤務地が田舎であったため、大きな仕事であっても若手に任されることが多く、営業成績は同期の中でもトップクラスの結果を残すことができました。
続いて、法人営業部門に異動し、上場企業に対するシステム営業を2年ほど担当しました。大企業への億単位のインターネット関連のシステム導入が中心で、当時の最先端技術に触れる機会を得ることができました。
その後、グループ会社に出向。営業企画部門で、新商品やキャンペーンの企画などを約4年間経験しました。グループ会社ということもあり、社長や役員など経営陣の近くで、予算策定から企画案の実行まで一気通貫で任されていました。グループ会社での仕事は、経営者の視点が学べる貴重な経験となりました。
営業や企画の仕事を通じて、自分の能力が徐々に高まっていることは感じていたのですが、気になっていることが2つありました。大企業では、1回のプロジェクトで億単位のお金を動かします。それらが机上の数字に思えてきて、リアリティが感じられない。実際に、現金を動かしているという実感が湧いてこないのです。自分でビジネスを動かしているという感覚がない。もうひとつは、ずっと会社の看板で仕事ができているという感覚が拭えなかったことです。こうした思いが重なって、今の自分で本当に事業を起こすことができるのだろうかという疑心暗鬼に陥りました。これが、今後のキャリア構築についての問題意識が芽生えるきっかけとなりました。
 仕事に関しては、任された仕事の多くで中心的役割を担えるようになっていたので一定の自信を持っていました。しかし、その自信が他の場所でも通じるのかという思いが拭えませんでした。考え抜いた上で、その懸念を払拭するには、意思決定の場数を多く踏める環境に身を置くことが必要ではないかと考え、組織が小さく、お金の動きをリアルに体感できるベンチャーにチャレンジすることを決意しました。
2009年9月。通っていたビジネススクール(経営大学院)の勉強会で出会ったブックオフのインターネット版を運営するベンチャー企業、株式会社eBOOKOFF(現ネットオフ株式会社)の黒田社長から誘いを受け、転職を決めました。
転職の条件として、私は次の3つを挙げていました。責任感あるポジション、経営と現場を体感できる環境、そしてユニークなビジネスモデルです。eBOOKOFFはこの条件を満たしていました。当時の売上は約9億円、従業員数は15人という、前職のひとつの部署と同じくらいの規模で、私が求めていたビジネスの現場感を体感できる環境が整っていると感じました。
 入社後、社長の直下で働いていたのですが、自分のアクションがすぐに売上や利益に反映することを何度も目のあたりにしました。また、NTTとは異なり会社の看板もないに等しく、個人で勝負するしかない状況で仕事ができたことは起業に向けての自信につながる経験となりました。入社から約3年半で、売上は40億円、従業員数は40名にまで成長。3倍以上の規模へと成長し、執行役員、子会社の社長など、経営層としての実務経験を積むことができました。
eBOOKOFFで一通りに経験を積んだ頃、ライブドアショックが起こり、IT系ベンチャーに大きな環境変化が起きました。そしてそのタイミングでビジネススクール(経営大学院)の先輩学生からあるベンチャー企業へ取締役として転職をしないかと打診があったのです。社長に次ぐ取締役のポジションを経験できるということで、2度目の転職を決めたのですが、入社半年後の9月に「リーマンショック」が発生。12月末までに約4億円の借金を金融機関に返さなければいけないという、存続が危ぶまれる危機的状況に直面しました。社長や他の取締役と毎日資金繰りを計算しながら経営を進め、年末商戦で約2億円の売上を計上。なんとか危機を乗り越えることができました。この緊張感に満ちた修羅場の経験は、大企業では決して体験できなかったと思います。
大学院も修了に近づくと、学ぶべきことと経験すべきことは概ね得られたという自信が芽生え始め、起業に踏み切りました。2009年4月、豆腐業界に特化したコンサルティング会社「とうふプロジェクトジャパン」の設立です。豆腐業界を選んだ理由は、母方の実家が祖父の代から豆腐の器具を作る鉄工所を経営しており、知名度やネットワークでアドバンテージが得られるからです。加えて、幼少期から自分は豆腐業界に育ててもらったと感じる機会も多く、その恩返しがしたいという想いがありました。
豆腐市場は国内で約5000億円と一定の規模があります。飽和状態ではあるものの店主の高齢化を期に廃業していく人が多い中で、新しいビジネスモデルで成功していく人が存在することから、国内市場にもまだビジネスチャンスはあると考えました。海外に目を向けると、日本食ブームの影響もありマーケットが広がる余地がまだまだある。また、業界内で遅れていたのは、IT化や情報発信。これまでの自分のキャリアが間違いなく活かせると感じ、起業を決意したのです。

キャリア選択のベースとなる価値観について

~普段から次にしたい経験のイメージを持っておくことの重要性~

 大学時代、現パナソニックを創業した松下幸之助氏の書籍を手にしたことがきっかけで、いつか自分で事業を起こしたいと考えるようになりました。また、母方の実家が自営業、父がサラリーマンではありましたがグループ会社の社長という経営者に囲まれた環境で育ったことも、起業したいという考えに影響を与えたと思います。
これまでの仕事や起業するに至った経緯を振り返ってみると、一足飛びに上のポジションを狙うのではなく、自分の強みを築くために、常にどうありたいかを考え、一歩ずつ着実にキャリアを積み上げてきたのだと感じています。キャリア構築を考える上で大切な点は、理想と現実を知るための自己分析とそのギャップを埋めるための経験を求め続けることだと思います。まずは、自分のなりたい姿を思い描き、現状とのギャップを的確に分析することが大切です。ギャップを分析するために大事なことは、自分と真剣に向き合う時間を取ることではないでしょうか。加えて、客観的な意見をくれるメンターや仲間の存在も重要です。私は自分がやりたいことを、友人に話してみてフィードバックをもらい、その都度、軌道修正を行っていました。
自分がやりたいことと現実のギャップは、経験を積み重ねることによって埋めていくしかないと思います。そのためには、普段からこういう条件の経験を積みたいと具体的にイメージしておく必要があります。そうしなければ、経験できる環境に身を投じる機会に気づかないと思うのです。環境に出会う方法は、今の仕事の延長線上かもしれませんし、転職先かもしれません。また、ビジネススクールで学ぶことなのかもしれません。繰り返しになりますが、こうしたオプションは普段から自分が積みたい経験を具体化しておかなければ、チャンスが訪れた際に掴み取ることはできないということを知っておくことが大切だと思います。

必要なスキルと能力開発について

~自分に何が足らないかの正しい理解と、「自分だけの価値を築く」意識を!~

 私は自分がそれまで身に付けてきたスキルやイメージしているキャリアについて改めて整理したいと思い、ビジネススクールの門をたたきました。
「クリティカル・シンキング」や「経営戦略」「マーケティング」といった科目を学ぶにつれて、経営者として、また起業家として自分に何が足りないかを分析できるようになりました。そうした営みを通じて、「ベンチャーへの転職」と「社内でのキャリアチェンジ」という2つの選択肢が浮かび上がり、キャリアセミナーなどに積極的に参加するようになったのです。「自分に何ができるか?自分は何をしたいのか?なぜそれをしたいのか?」などについて深く考え始めました。そして、考えた結果を周囲ぶつけてみることを通じ、自分がやりたいことが徐々にクリアになっていったのです。
 豆腐業界の中で、大企業とベンチャーに身を置いた経験を持ち、ITとMBAのスキルを持つのは、おそらく私くらいではないでしょうか。独立する最後の決め手になったのは、オンリーワンになれる場所だと確信を持てたことです。これまでの仕事を踏まえると、IT業界で起業しても、同じようなキャリアの人は沢山いる。しかし、豆腐業界にフォーカスしてみると非常に珍しい存在だと気付いたのです。キャリアを構築するにあたって、理想と現実のギャップを把握し、それを埋めるための行動に出ることは極めて重要です。皆さんにはぜひ、それに加えて「自分だけの価値を築く」ということも意識しておいてもらいたいと思います。常日頃から自己分析をし、「オンリーワンの存在となれる場所はどこなのか」もぜひ考えてみてください。
(※)グロービス・オリジナルMBAプログラムとは、グロービス経営大学院の前身にあたるプログラム。2010年度生をもって募集を終了しました。
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社長事例 とうふプロジェクトジャパン 磯貝氏 のページ。実践的なMBA(経営学修士)のグロービス経営大学院。リーダー育成のビジネススクールとして、東京・大阪・名古屋・仙台・福岡・横浜・水戸・オンラインでMBAプログラムを提供しています。