決済の未来と仮想通貨の可能性

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モデレーター

辻 庸介氏 株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEO

パネリスト

北澤 直氏 Coinbase GM of Japan
鶴岡 裕太氏 BASE株式会社 代表取締役CEO
増島 雅和氏 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士

※あすか会議とは

経営者、政治家、学者、メディアなどのトップリーダーと、グロービスのMBAプログラムの学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い開催する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第14回目となる2018年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,400名が京都に集い開催しました。

金融関連業界の旗手たちの言葉に学ぶ

「決済の未来と仮想通貨の可能性」をテーマに、金融とテクノロジーにおける現状やビジネスの可能性について、ITを武器に「お金」の動きを変えた起業人と3人のスペシャリストが語った。

決裁業界の現状と傾向について「ここ2〜3年の市場はまだまだクレジットカードによるインターネット決済が多いが、各社とも中国のQRコードなどを参考に、新たな決済インターフェイスを探している。そろそろ次世代のUIに移行される時期なんじゃないか。もう一つは、決済ネットワークのスマート化。現在のクレジットカード業界の裏側の構造は非常に複雑だが、インターネットによって加盟店の開拓作業が減るのでより簡略化されていくと思う。僕自身も、今後の金融事業者の役割の変化に興味があるし、業界内でのテーマにもなると感じている」とBASE代表の鶴岡裕太氏は語る。

テクノロジーの進歩がインターフェイスや決済ネットワークを変える鍵になる。Eコマースプラットフォームや決済サービスなど、決済の簡易化に日々取り組む鶴岡氏ならではの分析だ。また森・濱田松本法律事務所のパートナー弁護士である増島雅和氏は、弁護士としてフィンテック企業の新規ビジネスモデル開発などに関わった経験から、以下のように補足。

「こうした決済ネットワークの変化が注目されている理由は、決済が元々マネタイズに直結する重要なデータが得られる部分だからだろう。業界構造が変化することで、今まで以上に高い価値のあるデータを得られる可能性に繋がる」

一方でCoinbase GM of Japanの北澤氏は、クレジットカードを取り巻く日本独自のコスト構造に影響された決済の現状をこう語った。

「初期の金融インフラの整備や維持コストに引きずられたことが、日本がアリペイのような決済技術ではなく伝票管理の開発に進んだ理由なのではないか。その結果が今の状況、つまり1997年にデンソーが発表したQRコードという枯れた技術にスマホを組み合わせた決済方法と、2008年に発表された仮想通貨の双方に同じ決済の未来を托していると考えると非常に興味深い」

仮想通貨市場と未来の可能性

続けて北澤氏は、世界最大級の仮想通貨取引所を運営する自身の立場から、仮想通貨業界の現状にも言及。

「日本は、世界に先駆けて仮想通貨を法制度化し、仕組みを作ってライセンスを付与することで健全化しようとした先進国だ。しかしハッキング事件に2度も見舞われた希有な存在と世界では捉えられている。一方海外では、アーリーアダプターからビットコインやイーサリアム、ERC20など、仮想通貨の根底にある技術の革新が続いているほか、ジョージ・ソロス氏を始め機関投資家が参入する市場規模になっている」

2017年4月施行「改正資金決済法」以降の仮想通貨交換事業者(みなし業者含む)への行政処分の件について増島氏によると、

「金融サービスには「プリンシプル」と呼ばれる基本原理があり、これは時代を超えて有効であるし、この基本原理に照らせば、実際に販売している商品の特性に応じて何に注意しなければならないのかということは分かる。これは新しいアセットクラスと言われている仮想通貨であっても同じであり、仮想通貨の持つ特性とリスクを見れば、今後つくるべきルールの基本的な姿は自ずと見えてくる。ただ、それを導入するタイミングが重要だ。マーケットが立ちあがる前から厳しいルールを入れてしまうと、黎明期のマーケットを壊してしまうことになる。日本の仮想通貨のルールはこの点を弁えて、当初のルールは利用者保護の観点から必要最小限のものとして制定された。しかし、仮想通貨のマーケットは予想外の勢いで成長した。本来であれば、事業者はこれによって潤った資金で、より安全なサービスを提供するよう、人員を拡張し、セキュリティ対策を講じる、といったことをするべきだった。しかし実際はこうしたことを怠り、マーケティングにばかりかまけていた。その結果が今回の事故であり、事故を契機に露呈した書く交換業者の管理体制のずさんさであったということだろう。こうした反省に立って、まずは自主規制機関を立ち上げて新たなルールの下でビジネスを展開しようとすることになった。その成果が出るのはこれからだろう」

増島氏が指摘した国内での規制の問題に加え、国内で仮想通貨による決済が進まない原因を北澤氏が分析。

「問題は、通貨の価格が乱高下しやすい点や決済手段を導入した店舗の少なさにある。コインベースでも今は投資フェーズと捉え、一般ユーザーの参入と仮想通貨の利用を促進し、利用者を一定数まで拡大する計画だ。機関投資家からの資金投入があれば市場は安定していく。さらに価格変動の小さいステーブルコインも開発されている。決済に関わる問題を一つずつ解決し、次の世代へと繋げていきたい」

未来に繋がるヒントを探す

増島氏は、仮想通貨の未来はいまだ確たるものが見えているという状態にはないが、その潜在力は現在の金融システムを変えるだけのものがあると評価。従来の金融システムと仮想通貨が目指す新たな金融システムの仕組みの違い、ブロックチェーンの仕組みが株や帳簿類など有価証券全般に応用できる利点を述べた。

「ブロックチェーンの技術が成熟し、人々にとっても使い勝手が良いものになってくると、さまざまなアセットをトークン化して必要な人同士が交換する仕組みを作ろうと考える起業家が出てくるはずだ。現在は、銀行にお金を預けると、銀行が預けたお金を他の資金需要があるものに貸し付けることで市中に回るお金の量を増やしていくという仕組みのもとにいる。検索エンジンがクエリを投げるとその答えを返してくれるのと同じように、トークン化された価値あるアセットをインターネットにキャストすると、自らが欲しいアセットのトークンが市中価格で交換されて戻ってくるという世界を、分散型金融の世界の人は夢見ている。お金を媒介に、銀行という管理者がその流通を拡大させるモデルと比較すると、ずいぶん違う世界だろう。これはかなり大きなトピックだと思う」

その他にも、経済圏と仮想通貨の関係やショップ運営への仮想通貨導入、ブロックチェーン決済とインターフェイス開発など幅広いトピックが挙げられた。革新的な技術の利用が新たな時代の可能性を示唆する一方で、安全で安定した環境と構造の整備が必須だと実感させられた。

編集後記

登壇者による講演またはパネルティスカッション形式でのセッションが終了後、夕食会で参加者同士での交流を楽しんだ後、「ナイトセッション」が開催されました。

ナイトセッションとは、各界のリーダーや著名人、講師たちとインフォーマルな雰囲気の中、少人数でテーブルを囲み、議論し語り合える時間です。普段の講演会やクラス等では知ることができない、登壇者の今の関心や熱い想い、これから成し遂げようとしている事など、この場でしか聞くことができない話をしていただきました。

当日の様子を写真で紹介いたしますので、ぜひご覧ください!

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

モデレーター

辻 庸介氏株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEO

パネリスト

北澤 直氏Coinbase GM of Japan

鶴岡 裕太氏BASE株式会社 代表取締役CEO

増島 雅和氏森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士

(※肩書は登壇時のものになります。)