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ケースメソッドへのこだわり ファカルティ・サミット

グロービスという空間を通して私たちがめざす教育とは

グロービスは、ケースメソッドという教育手法にこだわり、それを力強くリードする教員がいます。ビジネスの第一線で生きた経営を体現しながら、グロービスという熱い空間を支える3人の教員が、様々な視点から教育への想いを語りました。

「教える」という意味がかなり違うんですよね、グロービスの場合は。
廣瀬 聡 青井 博幸 吉田 素文
廣瀬 聡 青井 博幸 吉田 素文
慶應大学経済学部卒業、カーネギーメロン大学経営管理工学科(MSIA/MBA)修了。大手銀行、コンサルティング会社、大手外資系保険会社執行役員、事業会社常務執行役員・共同COOを経て、グロービスに参画。 京都大学大学院工学部原子核工学専攻修了、国際宇宙大学及びフロリダ工科大学大学院(MOT)修了。東洋エンジニアリング(株)を経て、地ビールメーカーを創業、事業売却後、経営コンサルティング会社「アオイ&カンパニー株式会社」創業、現在、同社代表取締役。 立教大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。ロンドン・ビジネススクールSEP(Senior Executive Program)修了。大手私鉄会社を経てグロービスに入社し、研修・クラスの品質管理、社内外の教員の管理・育成(Faculty Development)を統括。

──まず、グロービスの特徴であるケースメソッドについて、教えている皆さんはどうとらえていますか。

青井/

ケースメソッドというのはもともとロースクールで生まれた手法で、事件を解決するために学生が弁護側と検事側に分かれて、意見を戦わせて最後に判決を出すというスタイルです。そこでは「判断するには何を議論しなければいけないのか」といった本質的なことを学びます。経営でも、ある判断を下すときには様々なことを考えなくてはなりません。そのための具体的なアプローチとして、ケースメソッドがあるわけです。

写真1
廣瀬/

現実のビジネスでは、会社は様々な考え方の人たちが集まって構成されていますから、ひとつの出来事を解決する際にもたくさんの切り口が出てきます。「経営者としてこの問題をどう解決するのか」と問われたとき、理論とか定理がスキルだとすると、それをいかに使うか、なぜこれを使わなければいけないのかを考えていくのがケースメソッドなんだと思います。

吉田/

答を学ぶのではなく、そもそも何を問うべきか、何を考えるべきなのかということ自体を訓練するというのがこの教育方法の一番の特徴ですね。

青井/

必ずしもOn the jobで成功、失敗が体験できるとは限らないですからね。仮にできてもやり直しを何度もするには、人生はあまりにも短かすぎる。そういったことを効率的にシミュレートできるのが、このケースメソッドの大きなメリットだと思います。

本ではなく自分で気づくことでしか学べないものがある

──でも、シミュレートして経験できるなら、成功と失敗のプロセスをわかりやすく本にまとめて伝えれば、
その方が簡単なような気がしますが・・・。

廣瀬/

ツールはただ覚えれば済むのですが、なぜ今この方法を使わなければいけないのか、ということは本を読んでもわからない。クラスで議論をして、教員やクラスメイトとやり取りを重ねながら気づいていくものなのです。「気づきながら学ぶ」のと「読みながら学ぶ」のとは、本質的に違うものだと思います。

青井/

自分で気づく前に、ここがポイントですと教員が言ってしまったら、それは答を教えることだと思うんです。でもビジネスはそんなに簡単ではない。ケースとまったく同じ状況なんてあり得ない。ビジネスの現場では、毎回異なるオリジナルのケースを読み解かなければいけないんですね。混沌とした中から、どんな方程式、定理を使うのか。それを自分で見つけるトレーニングこそが必要です。

経営者の気持ちになって熱く議論しなければ絶対に得られない

──自ら気づいた方が深い学びにつながるというのはその通りだと思うんですが、なぜ深い学びが必要なのでしょうか。

写真2 廣瀬/

私は、ケースは「追体験」する世界だと思っています。この時にCEOだったらどう考えるのか、部門長だったら、顧客だったらと、常に様々な立場から網羅的に考える。状況にあわせて、何を考えなきゃいけないのか。それを探すことに意味があるのではないかと思います。

吉田/

悩み、考えながら、自分の弱さとか無謀さとかいう精神的な面にも気づいていくというのがケースメソッドの面白いといころですね。

青井/

そうですね。本来考えなきゃいけないことは何なのかは、実際に経営者の立場になってみて、気持ちを入れこんで議論しなければ絶対得られないんですね。ですから感情まで移入してみんなで熱く議論していく。そういう場こそがケースの本領だと思います。

吉田/

ケースに書いてあることを議論するというより、もう一段深掘りして、書かれていないことをしっかり議論する、そういう授業になりますね。

青井/

学びが浅い段階では、「ケースに書かれてないから判断できない」となってしまう。ところが学習が進んでいくと「ここに書いてあることから何がいえるのか」というところに鋭く切り込んでいくことができる。同じ情報でも、そこから何倍ものことがわかるようになるんです。その感覚はビジネスの現場でも同じで、例え全部の情報がわかっていなくても、どこまで合理的な判断ができるかということが経営者に問われるわけです。そうした力を養うのにもとてもいいと思います。

学生たちが本当に腹落ちした瞬間は私たちもゾクゾクする

──授業では同じケースを教材に使うことになりますが、教える側にとって窮屈に感じることはありませんか。

青井/

このケースではどうしてもこれを学んで欲しいというポイントがあります。例えばマーケティングの「チャネルの構築は難しい」ということをわかってもらうケースで、学生が選択した戦略をある教員は「これじゃまだまだですね」というかもしれませんし、また別の教員は「これなら良くやった」と評価するかもしれません。こうした自由度というのはすごくあると思います。違う考えがあってもいい。「チャネルってやっぱり難しい!」ということをみんなが議論して実感し、理解することが重要です。

写真3
廣瀬/

私は自分の考えを押しつける気持ちは毛頭なくて、様々な立場の学生が意見をぶつけ合い、納得する結論にどう達するかというところが大切なんだと思っています。信じられないかもしれませんが、学生が本当に慧眼を開く瞬間っていうのがあるんです。それは教える側もゾクゾクする瞬間なんですね。みんなでひとつの学びのポイントに到達していくことが大切で、それができるところがケースメソッドの凄い部分なんです。

吉田/

同じケースを用いて毎回教えていても、クラスが導かれる方向が全く違っていたりする。その中で学びの深さとか、発見があったりするんですね。

青井/

ケースでは学びのポイント以外に様々なことが学べます。たまたま学生がつまずいた課題で議論がワーッと湧き、そこに予期せぬテーマが出てくる。そういったことも、実際のビジネスの現場ではとても大事なんです。そもそもビジネスの現場って、科目別には分かれていませんから、そういう学びの広がりも大切なんですね。

個々の意見を認めながら学びの軸がぶれないように議論を深める

──学生の中に気づきが起きるような、学びの大きい授業をつくることは簡単ではないと思いますが、そのためにどんなことをしていますか。

写真4 青井/

私が神経を使うのは、それぞれの学生の知識と経験のレベルを探ることです。それによってケースの進め方も変わってきます。それから、ひとり一人の個性を把握しようとしています。

吉田/

インタラクティブに議論する授業なので、学生がどういう個性を持っていて、どんなレベルなのかを掴んでいないとうまくいかない。まさに重要な視点ですね。

廣瀬/

私も学生それぞれの表情を見ながら、だれがどの言葉にどう反応したかという変化を見るようにしています。そしてなるべく懇親会に出席して、授業だけではわからない人間的な部分を理解するようにしています。

──教員の役割として、多様な個性やバックグランドの集まりの中で議論をコントロールする、ファシリテートするということがあるわけですね。

廣瀬/

大切なのは、個々の意見は認めつつ、学びの基本的な流れを守るということ。様々なビジネスの分野で仕事をしている学生たちの中で授業を進めるので、どうしても議論が拡散しやすくなります。でも「ここで学ばなきゃいけない大切なメッセージはこれ」という軸はぶらさない。そこがファシリテーションで一番重要なところです。

青井/

議論を深めるには、問いかけの順番と微妙なワーディングがポイントになります。例えば「これは売れると思う」と発言した学生に、単に「どうして?」と質問してしまうと否定的なニュアンスだと思って議論が「売れないかもしれないな」という方向に行ってしまうことがあります。逆に私が「そうだね」と言うと学生たちはそれが正解だと思ってしまうわけです。それは「教え」であって、学生たち自身が気づくことにはなりません。議論を深めるために、どういう受け答えをするべきかということに神経を使っています。

教員も、学生に「気づいて」もらうためのトレーニングを積む

──グロービスでは優れたティーチング能力を持つ教員を養成するための仕組みを持っていますよね。
吉田さんは、教員養成のための「教員の先生」でもあるわけですが、教員のみなさん自身の成長や教え方の進化という面ではどうでしょうか。

吉田/

グロービスの教員になるには指導する内容はもちろん、ファシリテーションや授業の運営など、様々なトレーニングを積む必要があります。厳しい審査をパスしてやっと授業を担当できるのですが、それでも毎回授業を振り返って教え方や進め方を分析したり、他の人からアドバイスをもらったり。そうすることで常にティーチングスキルを向上させていくのです。廣瀬さんは最初の頃に比べてものすごく進化されたと思うんですが。

写真4
廣瀬/

それには秘密があって、私は以前、経営コンサルタントとして企業の経営陣相手に仕事をしていましたが、ロジカルに説得するよりも彼ら自身に気づいてもらう方が効果があるということがわかったんです。コンサルタントとしての私は、グロービスで培われた「気づきに基づく教育」をコンサルティングの世界にも応用し、顧客に大変喜んでもらいました。さらに、今度は仕事で成功した方法論をグロービスで応用してみる。そんなちょうど良いサイクルができているんです。

青井/

私は、自分のコンサルティング会社とは別にあるメーカーのCOOをしていますが、自分でオリジナルのケースを書いて、それを社員みんなに読んでもらい、授業と同じようにディスカッションし、社員自ら気づいてもらっています。教員としてやっているのと同じように、経営でもケースメソッドを実践しているんです。

ここで教えることは人生の中の大切なパート。大きな価値を生む可能性がある

──グロービスで教員をしていることは、ビジネスパーソンとして、一個人として、どういう意義があるのでしょう。

写真5 廣瀬/

まずグロービスで教えるという機会を持つことで、会社でも、働いている自分を客観視しながら、いつも合理的な行動ができるという良さがあります。また、会社でやっていることはひとつの事業でしかないので、成し遂げられることに限界があります。一方グロービスで教えることで、学生たちが成長し、世の中で良い結果を生み出せば、私が一人で会社で生み出している以上の大きな価値を生むことになります。そういう意味では、教えるということは、私にとって人生の中のほんとうに大切なパートを持っているような気がします。

青井/

私が教員をしている時間というのは、自分が一番人の役に立っている時間だと思うんです。私は自分の会社で一度失敗し、そのあと原点に戻って勉強し、まさにケースを解くように会社を経営してきました。そのスキルは別に自分だけのものではなく、みんなが学べることだと強く感じています。それを伝えられるのが嬉しくてしょうがないんです。私は、仕事場では、自分のクライアントにしか貢献できない。
けれどグロービスにくれば、様々な人がそれぞれのビジネスの現場で新しい価値を増やしてくれる。それに貢献しているのかと思うとワクワクしてしょうがないですね。

吉田/

その人の生き方を変えるような瞬間を作っていくというのは、非常にやりがいのある仕事だと思います。この仕事をする意味は何かというと、人と人とが信頼し合い、議論を戦わせ、その中から新しいものを生み出していける素晴らしさに気づいてもらうことではないでしょうか。そういう人たちが増えれば、世の中を明るくできるんじゃないかという期待があります。また、グロービスの授業では、自分をさらけ出したフランクな関係がつくれます。
会社でもなかなかできない、深いネットワークが築ける。そのお役に立てるのも非常に嬉しいことなのです。

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