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「時分の花」と「まことの花」

2013-07-18
グロービス大阪校 植田です。 

先日、能楽を鑑賞する機会がありました。
日本の古典芸能というと、文楽は好きで良く観に行くのですが、
能楽は人生初の体験。 

期待していたとおり、笛、小鼓、大鼓、太鼓が織りなす楽曲と、
静と動を見事に表現する優雅な舞は、まさに幽玄の世界で、
何とも言えない不思議な感覚に終始引き込まれ、脳内に刺激を
受けているのを感じました。 

初めての能楽鑑賞という素晴らしい体験もさることながら、開演前に
演者の方が「能の見方」として能の歴史などを説明され、そのなかで
紹介された世阿弥の言葉がとても印象に残りました。 

この時、紹介されたのは、以下の3つ。

【時分の花とまことの花】
その時代時代に花があることを知り、そのときどきの花を咲かせて
いけば、最後にまことの花になる。

【離見の見(りけんのけん)】
常に主観と客観を持つことが大事。

【初心忘るべからず】
初めて事にあたる新鮮な感動を忘れるなということではなく、
常に「自分は未熟である」という気持ちを持つということ。

世阿弥といえば、『花鏡』や『風姿花伝』などの著書が有名ですが、
恥ずかしながら、世阿弥の著書をかじったことのない私は、
「初心忘るべからず」の本当の意味ですら、このとき初めて知りました。

そこで、それぞれの言葉の意味をもう少し深く知りたくなり、まずは
ネットでいろいろ調べてみたところ、世阿弥の「7段階の人生論」に触れ、
とても感銘を受けました。

世阿弥の『風姿花伝』の第一章「年来稽古条々」では、人生を
「幼年期」「少年前期」「少年後期」「青年期」「壮年前期」「壮年後期」
「老年期」の7分割にして、それぞれの年齢に応じた稽古について
示されていますが、その内容は能の稽古にとどまらず、人生観や教育論
としても、示唆に富んでいることを知りました。

ネットで世阿弥について調べると多数の情報が出てきますが、
あるサイトで紹介されていた「7段階の人生論」の説明がとても
わかりやすくまとめられていましたので紹介します。

■「少年前期(12~13歳)」は、その姿も声だけで幽玄を体現し、
もっとも美しい年代ではあるが、それは「時分の花」で、「まことの花」
ではない。その時代が良いからといって生涯が決まるわけではない。

■「青年期(24~25歳)」は、声も体も一人前になり、芸も上手に見える。
人々から誉めそやされるが、それも「時分の花」で「まことの花」ではない。

■「壮年後期(44~45歳)」は、どんなに頂点を極めたものでも衰えが
見え始め、観客からも「花」があるように見えがたい。この時期は
難しいことをせず、自分の得意とすることをすべき。この時期に一番
大事なのは、後継者の育成。 

■「老年期(50歳以上)」になり、花も失せた老人は、何もしないほかに
方法はない。それが老人の心得。それでも本当に優れた役者は
そこに花が残る。

※参考サイト:the能.com
世阿弥は何事にも「花」を重んじ、こだわってきたとされていますが、
この「7段階の人生論」では、「時分の花」と「まことの花」を知ることが
大事だと説いているのだと思います。 

どの時代でも、「時分の花」を「まことの花」と思って惑わされることが、
真実の花を遠ざける、と世阿弥は説いています。だからこそ、どの時代
であっても、「初心」を忘れず稽古を怠らないことが大事であると。
これは、能の世界だけではなく、全ての人の人生に通じる教えだと
思いました。 

今年は観阿弥生誕680年、世阿弥生誕650年にあたる年。
そんな年に、初めて能楽に触れ、世阿弥の言葉に興味を持つことが
できたのも何かの縁かもしれません。
この機会に、もう少し世阿弥のことばを学んでみたくなりました。
(良い書籍をご存じの方はぜひ教えてください^^) 

今の自分の「時分の花」を知り、「まことの花」を咲かせるために
どう生きていくか、ゆっくり考えてみようと思います。

コメント2件

  • 大北 昌彦 | 2013.07.21 8:28

    私もチケットを譲っていただき
    植田さんと同じ公演に行ってました。この公演前の解説はよかったですね。
    私も”離見の見”は調べてみましたがブログを拝見し さらに学びが深まりました。
    ありがとうございます。

  • グロービス大阪校 植田千穂 | 2013.07.22 12:15

    大北さん、ブログをご覧いただきありがとうございます。コメントもありがとうございました。
    お目にかかる機会がありませんでしたが、同じ公演にいらっしゃると聞いておりました^^
    当日は公演前のこの解説があったからこそ、能の世界にも入り込め、楽しめた気がします。
    世阿弥の言葉や、能の世界(能に限らず芸の世界)の教えは深いですね。
    たまにはこういった場に出かけ、五感で感じ、学ぶことも大事だと思いました(^^)

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