座談会レポート第1部

女性の皆さまへ

働く私のキャリアを考える トークセッション&交流会リポート

第1部

女性のキャリアの考え方とは?
「自分の人生の手綱を握り、何ものにも依存しなくてもいい生き方を」

女性のキャリアに詳しい教員が、働く女性の先輩として、自分自身の人生を振り返りながら、今なぜ女性のキャリアに注目が集まるのか、キャリアとは何かについて語りました。

グロービス経営大学院 教員/林 恭子

グロービス経営大学院 教員/林 恭子

筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程前期修了(MBA)。モトローラ、ボストン・コンサルティング・グループを経て、現在はグロービスにて経営大学院、グロービス・マネジメント・スクールのヒト系領域の講義を担当。新規科目の開発、教材作成、教育スキル研究等に携わった後、現在はグロービス全体の経営管理を統括する。産業・組織心理学会及び経営行動科学学会員。共著に『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)、『新版 MBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)、『「変革型人事」入門』(労務行政)、講演テーマに「映画で学ぶリーダーシップ」などがある。

まず、私がどのようなキャリアを歩んできたのかをお話ししましょう。
私には現在、グロービスの教員として教壇に立つ他、皆さんと同じビジネスパーソンという顔があり、グロービス全体の経営管理やバックオフィスを統括する役目も担っています。でも、私が最初からそういう立場を目指していたのかというと、必ずしもそうではありません。

少し時間を巻き戻しますと、私はこれまでに転職を2回しています。
最初に新卒で入った会社は米国系電子機器メーカーのモトローラです。ここでは半導体や携帯端末のOEM業務を担当していましたが、残念ながら、仕事に特別な思い入れは持てませんでした。実は当時、留学を考えていて、留学後のキャリアを考えると外資系企業勤務のほうがつながりが綺麗かな、という程度で就職先を決めてしまったからです。ですがその後ほどなく結婚したことも重なり、留学自体を考えにくくなってしまいました。そこで自分のキャリアを見つめ直し、舵を取り直すべく真剣に転職活動を始めたのです。

「いやいや私なんて、とんでもない」

そして入った2社目の会社がボストン・コンサルティング・グループでした。ここで初めて仕事の面白さに開眼するわけです。
当時、プロフェッショナルスタッフの採用をメインに手掛けていましたが、組織がまだ小さかったこともあって、どんどん仕事を任せてもらえたし、やればやっただけ結果が返ってきた。会社も私の仕事ぶりを評価してくれ、本当に楽しかったですね。

ただ充実した仕事をしつつも、私には、何故だか決まって心に浮かんでくるセリフがありました。「いやいや私なんて、とんでもない」。これがいつも言っていたフレーズです。実際、自分が会社で中心メンバーとして活躍する人間になるというイメージは、この時点でもまだありませんでした。

こんなエピソードがあります。
その頃、毎年秋冬に、米国や欧州のトップビジネススクールへ赴く重要なリクルーティング・ツアーを行っており、私はそのアレンジ一切を手掛けていました。現地の優秀な学生に会い、スカウトするため欠かせない業務でしたが、私は毎年、完璧にセットアップだけして他のマネジャーらに行かせ、自ら現地に赴くことはしていませんでした。でも、あるとき、信頼している後輩の女性から「あなたのプロジェクトなのに、なぜ自分は行かないんですか。遠慮せずに行ったほうがいいと思います」と直言されたのです。有難いことですね。そう言われて初めて、「そうか、行きたいと言っていいのか……」と気付き、上司に恐る恐る切り出したところ、あっさり了承されました。それ以降、自分で足を運ぶようになり、徐々に前に出られるようにもなっていきました。

MBAの勉強を始めたのは30代半ば

私がMBAの勉強を始めたのは30代半ばになってからです。以前から周囲の人たちに進学を勧められていたのですが、当時はまだ依然として「私はそういうレベルの人間ではないです」という意識でいたので、MBAホルダーの採用はしても、自分自身がMBAを取ろうなんていう発想はありませんでした。そんな私が、自分もMBAを取ってみようという気になったのは、当時の部下たちのおかげかも知れません。

当時、自分で面接してポテンシャルの高い人材を部下として採用できていましたので、育成にも熱が入りました。彼らは目に見えて成長していくので、すごくうれしかった。ただその姿にあるときはっとするんです。彼らは短期間にこれだけ伸びた。一方、私はどうか。去年の私と今年の私を比べたときに一体、何が変わった?

そう考えてみると、まるで成長していないのではないかと。このままではまずい。私自身が積極的に成長していかなければ、私だけでなく、私という上司のせいで部下のチャンスまで潰しかねない、と思ったんです。その思いが、MBA進学への踏ん切りをつけさせてくれました。

MBAを取りにいって何が変わったか。最もよかったのは、自分に自信がついたことです。ビジネススクールで一緒になった人たちには一流企業でばりばり仕事をしている人も多かった。とりわけ男性が多く、そんな中で私はついていけるのかと不安でいっぱいでした。いざ講義が始まってみると、もちろん歯が立たないと思うこともありましたが、一方で私のほうが付加価値のある発言ができたり、議論をリードできたり、高く評価されたりすることもあったのです。そして、同級生たちと助け合いながらいろいろなものを共創していく。そんな経験をたくさん積む中で、自分に自信がついてきました。また、仕事と学業の両立という大変なことをやり通せたということも、自信の源になりました。働きながら学ぶのは本当に大変ですが、最後は「このつらさは永遠に続くものじゃない。2年で終わる」と歯を食いしばって勉強していましたね。

MBAを取得した後も、「いやいや私なんて」といつものセリフが出そうになることもありました。でも、その回数は着実に減っていったように思います。「私なんて」と口に出しそうになっても「MBAを取ることができたじゃないか」「いろいろあったけど、やりきったじゃないか」と自分の力を信じられるようになった。私のようなタイプは、女性には多いかも知れませんね。でも、そういう方こそぜひMBAに挑戦してみるといい。やってみるといろんなことが開けてきますよ。

バリューのある人にはチャンスが訪れる時代

安倍首相が成長戦略の柱の1つとして女性の活用を掲げ、2020年までに女性管理職を30%程度まで押し上げると宣言しています。今後の日本のビジネスの成長や社会の価値観の多様化を目指すうえでも、戦力としての女性の活躍は不可欠です。まさに女性にとっては追い風です。

その一方で、これからは女性だからという甘えは許されないと考えるべきです。かつての女性の登用は“積極的差別是正措置”という意味合いで進められた側面もありました。しかし、もはや違います。日本が強くなっていくためには、性別をはじめとする様々な違いにとらわれず、能力のある人がその力を全面発揮できるような環境を整備する必要があります。それが、本当の意味でのダイバーシティ(多様性)導入でしょう。そうなると、男性も女性も関係なく、バリューを発揮できる人にはチャンスが訪れ、そうでない人には厳しい時代になる。ですから、皆さんには与えられたチャンスの場面で自分がどういうバリューを発揮できるのかを常に考えていてほしいと思います。

真の自由を手に入れるには何をすべきか

そもそも「キャリア」とは何でしょう。「キャリア」は、馬車が通った後にできる轍に似ています。皆さんが手綱を握って、馬車を右へ、左へと走らせていく。ふと振り返った時、皆さんの目に映る轍。それこそがキャリアの軌跡であり、実は皆さんの人生そのものでもあるのです。ですからキャリアを考える時は、大きな視点で考えてほしい。

人生に何を求めるかは人によって違うでしょう。満足感、達成感、お金やゆとり……。でも最も大事なのは自由です。勝手気ままなことを自由と言っているわけではありません。誰にも、何ものにも依存しなくてもいいと思えることを自由という言葉で表現しています。

もし誰かに依存して生きていかなければならないなら、この人に捨てられたらどうするんだろうという恐怖を抱えながら他人に隷属したり、どんなに嫌なことでも我慢して既存の体制に従ったりするしかない。そんな人生を送りたいでしょうか。私は、皆さんに何ものにも隷属しないで生きていける人生を歩んでほしい。自分で生きていけるという手段と自信を持って、本当に幸せに、自由に、輝きながら生きてほしいと思っています。

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